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第165話 チアキとマリのムカデ鞭無双

 チアキがムカデ鞭をヒュンヒュンと振って角兎を倒した。

 マリちゃんもムカデ鞭を振ってスライムを倒した。


「うん、器用度で闘う武器っぽいから、方喰ねえちゃんに向いてた」

「君ら強いなあ」

「き、きもいけれど、良いですねこの武器」


 確率で毒が付与されるので、スライムも一撃で倒せる可能性がある。

 あと、マリちゃんは、なにげに当てるのが上手い。

 意外な才能であった。


 黒髪で眼鏡を掛けたマリちゃんのカメラピクシーが激写している。


『今日は先生たちの介護狩りか』

『オタクっぽい方喰さんが新顔だなあ、JK良いね』

『地味娘は大好物ですたいっ』

「あ、どうもよろしくおねがいします」

『あはは、挨拶された、丁寧だ』

『マリちゃんにスパチャだーー』


 ビロリンとマリちゃんにスパチャが飛んだ。


「わ、わわっ、ありがとうございます、初スパチャです」


 いま、俺たちは地下三階に下りて狩りをしている。

 先生方はおっかなびっくりでなかなか魔物を倒せないが、チアキとマリちゃんがすぱすぱ倒しているな。

 俺と泥舟と東海林は割と暇だ。

 人数が増えたので一パーティという訳にはいかず、『Dリンクス』と『オーバーザレインボー』と『臨海第三ティーチャーズ』でレイドを組んだ。

 これで十八人までは大丈夫だな。

 マリちゃんは『臨海第三ティーチャーズ』に一時パーティ登録である。


 バババとマリちゃんとチアキが角兎を三匹倒した。

 ムカデ鞭侮りがたし。


『マリちゃん命中率高い、『射手アーチャー』向きか?』

『『創作者クリエイター』狙いだってさ、絵師コース』

『おお、『創作者クリエイター』志望初めて見た、武器防具じゃないんだ』

『それで目が良いのかな、立体視とかできるんしょ』


 リスナーの人がマリちゃんに食い付いているな。


「狩りって意外と簡単なんですね」

「先生を見てみなさいよ、弓は一発も当たらないし、望月先生の鉄砲も無理だし、宮川先生の剣も当たってないわ」

「面目ない」


 角兎はすばしこいし、スライムは剣だと大変だからね。

 シュワッと兎たちが粒子に変わり、魔石が出て魔力の霧が発生した。


「あ、なんだか、体が膨らむような……」

「方喰ねえちゃん、Dチューバーの世界にようこそっ」

「レベルアップだね、なんか膨らむ感じなんだ」


 マリちゃんはほわっとした感じに放心していた。


「早く早く、Dステータスアプリで初回スキルを確認して」

「わ、解ったわチアキちゃん、まってまって」


 マリちゃんはわたわたとポケットからDスマホを出してアプリを立ち上げた。


「わあ、レベル一になってるー、スキルはー、【絵画Lv3】だって、あと【観察眼】」

「わあ、凄いじゃん、【観察眼】良いなあ」

「絵を描くのに観察をよくしてたからかな」

「【観察眼】か、私と一緒だね」


 絵師でも出るのか、やっぱり対象を良く見ると生えるのだろうね。


『【観察眼】いいなあ、汎用で使えるぞ、『盗賊シーフ』だと重要』

『なんでまた』

『罠を外したり、迷宮の謎を解いたりするのに結構使うんだぜ』

『深い階で有用か』


「スキルは元の技術にスキル分の技術が足される感じだよ、なんか描いてみて」

「う、うん」


 マリちゃんはポケットからメモ帳を出してボールペンでサラサラ描いた。


「うわ、何これ何これ、すごい、凄く調子良い時の上を行く絵が描けるっ」

「わあっ、これ私っ!」

「そう、チアキちゃん、うわあ、良く描ける~~」

「ちょうだいちょうだい」

「うん、良いよ~」


 マリちゃんはメモ帳をペリペリと破ってチアキに渡した。


「タカシ兄ちゃん、泥舟兄ちゃん、ほらこれっ」

「「「うわ~~~」」」


 漫画絵なんだけど、チアキにしか見えないキャラが紙の上にあった。

 すごい引き込まれる魅力がある絵だなあ。


「これは凄いなあ、方喰さん才能あるね」

「売れる絵だねえ、凄いよ」

「素晴らしいね、スキルとは凄いなあ」


『げえっ!! 在野のプロ発見!!』

『なんだかスゲえ、俺も欲しい、チアキっちの奴ピクシブに上げて』

『Dィッターに上げてーっ!』

『アクリルキーホルダーにしてくれ、もしくは缶バッチ、百個買うから』


 マリちゃんの絵でグッズ展開も良さそうだなあ。


 この後、一人ずつ方喰画伯の似顔絵を描いて貰った。

 すごい宝物だなあ。

 みのりと鏡子ねえさんも欲しがるぞ。


「さて、方喰さんもレベルアップしたので、四階に行きましょうか」

「そ、そうだね……」

「どうして浮かない顔なんですか望月先生」

「四階からは出るんですよ……、ゴブリン」

「あっ……」

「僕はゴブリンに向けて銃を撃てるかなあ」

「うう、弓矢を撃つのですか、人っぽい魔物に……」

「私なんか、前衛だから、切りつけないといけない、これまで人を殴った事も無いのになあ」


 うん、先生方は草食系だなあ。


「あまり無理なら俺とか泥舟が手伝いますし、東海林も【睡眠】を覚えましたから大丈夫ですよ」

「任せてください、四階のゴブリンは多くて二匹ですから」

「わ、わかったよ」


 肩を落とす先生方を連れて、俺たちは階段を下りた。


 四階は森の部分が増えて草原、森という感じになる。

 チアキとマリちゃんがムカデ鞭でカピバラを倒した。


「カピバラさん、ごめんね」

「あんま生き物でも無いらしいから気にする事無いよ、同じ個体がまた出るらしいから」

「死んでないの?」

「魔界に戻って、また出てくるって、アバターみたいなものらしいね」

「そうなんだっ」


 マリちゃんがちょっと元気になった。

 しかし、人間は死んだら終わりなのに、魔物達は死んでも再登場できるって、なんだか不公平だよなあ。


「あ、そうなのか、それを聞くとちょっと安心だな」

「死体が残らないのは良いですね」

「そうですね、あれでなにか生々しさのような物が消えます」


 ゴブリンが二匹出た。


「ギャッギャッギャ」


 先生方が真っ青になった。


「えいっ!!」


 マリちゃんが宮川先生の後ろからムカデ鞭を振るう。

 バチュンとゴブリンの皮膚を裂いて奴は怯んだ。

 あ、毒も付与した。


 ダキューン!!


 望月先生が魔銃を撃った、運良く銃弾は頭に当たり、一匹は倒れた。


「ぎゃ、ぎゃぎゃぎゃ……」


 胸をかきむしり、ゴブリンは倒れて死んだ。

 毒が回ったっぽい。


「「「はあはあはあはあ」」」

「毒が掛かってよかった!」


『マリちゃん、天然で図太い感じ、イイネ!』

『望月先生も撃てたなあ』

『竹宮先生、宮川先生がんばれー』

「あ、ありがとう……」

「がんばるわ……」


 東海林が宮川先生の肩をぽんぽんと叩いた。


「すぐ慣れますよ」

「そうかい? 慣れても良く無いと思うのだが……」

「ダンジョンですから」

「そうね」


 竹宮先生が深くうなずいた。



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