チアキがムカデ鞭をヒュンヒュンと振って角兎を倒した。
マリちゃんもムカデ鞭を振ってスライムを倒した。
「うん、器用度で闘う武器っぽいから、方喰ねえちゃんに向いてた」
「君ら強いなあ」
「き、きもいけれど、良いですねこの武器」
確率で毒が付与されるので、スライムも一撃で倒せる可能性がある。
あと、マリちゃんは、なにげに当てるのが上手い。
意外な才能であった。
黒髪で眼鏡を掛けたマリちゃんのカメラピクシーが激写している。
『今日は先生たちの介護狩りか』
『オタクっぽい方喰さんが新顔だなあ、JK良いね』
『地味娘は大好物ですたいっ』
「あ、どうもよろしくおねがいします」
『あはは、挨拶された、丁寧だ』
『マリちゃんにスパチャだーー』
ビロリンとマリちゃんにスパチャが飛んだ。
「わ、わわっ、ありがとうございます、初スパチャです」
いま、俺たちは地下三階に下りて狩りをしている。
先生方はおっかなびっくりでなかなか魔物を倒せないが、チアキとマリちゃんがすぱすぱ倒しているな。
俺と泥舟と東海林は割と暇だ。
人数が増えたので一パーティという訳にはいかず、『Dリンクス』と『オーバーザレインボー』と『臨海第三ティーチャーズ』でレイドを組んだ。
これで十八人までは大丈夫だな。
マリちゃんは『臨海第三ティーチャーズ』に一時パーティ登録である。
バババとマリちゃんとチアキが角兎を三匹倒した。
ムカデ鞭侮りがたし。
『マリちゃん命中率高い、『
『『
『おお、『
『それで目が良いのかな、立体視とかできるんしょ』
リスナーの人がマリちゃんに食い付いているな。
「狩りって意外と簡単なんですね」
「先生を見てみなさいよ、弓は一発も当たらないし、望月先生の鉄砲も無理だし、宮川先生の剣も当たってないわ」
「面目ない」
角兎はすばしこいし、スライムは剣だと大変だからね。
シュワッと兎たちが粒子に変わり、魔石が出て魔力の霧が発生した。
「あ、なんだか、体が膨らむような……」
「方喰ねえちゃん、Dチューバーの世界にようこそっ」
「レベルアップだね、なんか膨らむ感じなんだ」
マリちゃんはほわっとした感じに放心していた。
「早く早く、Dステータスアプリで初回スキルを確認して」
「わ、解ったわチアキちゃん、まってまって」
マリちゃんはわたわたとポケットからDスマホを出してアプリを立ち上げた。
「わあ、レベル一になってるー、スキルはー、【絵画Lv3】だって、あと【観察眼】」
「わあ、凄いじゃん、【観察眼】良いなあ」
「絵を描くのに観察をよくしてたからかな」
「【観察眼】か、私と一緒だね」
絵師でも出るのか、やっぱり対象を良く見ると生えるのだろうね。
『【観察眼】いいなあ、汎用で使えるぞ、『
『なんでまた』
『罠を外したり、迷宮の謎を解いたりするのに結構使うんだぜ』
『深い階で有用か』
「スキルは元の技術にスキル分の技術が足される感じだよ、なんか描いてみて」
「う、うん」
マリちゃんはポケットからメモ帳を出してボールペンでサラサラ描いた。
「うわ、何これ何これ、すごい、凄く調子良い時の上を行く絵が描けるっ」
「わあっ、これ私っ!」
「そう、チアキちゃん、うわあ、良く描ける~~」
「ちょうだいちょうだい」
「うん、良いよ~」
マリちゃんはメモ帳をペリペリと破ってチアキに渡した。
「タカシ兄ちゃん、泥舟兄ちゃん、ほらこれっ」
「「「うわ~~~」」」
漫画絵なんだけど、チアキにしか見えないキャラが紙の上にあった。
すごい引き込まれる魅力がある絵だなあ。
「これは凄いなあ、方喰さん才能あるね」
「売れる絵だねえ、凄いよ」
「素晴らしいね、スキルとは凄いなあ」
『げえっ!! 在野のプロ発見!!』
『なんだかスゲえ、俺も欲しい、チアキっちの奴ピクシブに上げて』
『Dィッターに上げてーっ!』
『アクリルキーホルダーにしてくれ、もしくは缶バッチ、百個買うから』
マリちゃんの絵でグッズ展開も良さそうだなあ。
この後、一人ずつ方喰画伯の似顔絵を描いて貰った。
すごい宝物だなあ。
みのりと鏡子ねえさんも欲しがるぞ。
「さて、方喰さんもレベルアップしたので、四階に行きましょうか」
「そ、そうだね……」
「どうして浮かない顔なんですか望月先生」
「四階からは出るんですよ……、ゴブリン」
「あっ……」
「僕はゴブリンに向けて銃を撃てるかなあ」
「うう、弓矢を撃つのですか、人っぽい魔物に……」
「私なんか、前衛だから、切りつけないといけない、これまで人を殴った事も無いのになあ」
うん、先生方は草食系だなあ。
「あまり無理なら俺とか泥舟が手伝いますし、東海林も【睡眠】を覚えましたから大丈夫ですよ」
「任せてください、四階のゴブリンは多くて二匹ですから」
「わ、わかったよ」
肩を落とす先生方を連れて、俺たちは階段を下りた。
四階は森の部分が増えて草原、森という感じになる。
チアキとマリちゃんがムカデ鞭でカピバラを倒した。
「カピバラさん、ごめんね」
「あんま生き物でも無いらしいから気にする事無いよ、同じ個体がまた出るらしいから」
「死んでないの?」
「魔界に戻って、また出てくるって、アバターみたいなものらしいね」
「そうなんだっ」
マリちゃんがちょっと元気になった。
しかし、人間は死んだら終わりなのに、魔物達は死んでも再登場できるって、なんだか不公平だよなあ。
「あ、そうなのか、それを聞くとちょっと安心だな」
「死体が残らないのは良いですね」
「そうですね、あれでなにか生々しさのような物が消えます」
ゴブリンが二匹出た。
「ギャッギャッギャ」
先生方が真っ青になった。
「えいっ!!」
マリちゃんが宮川先生の後ろからムカデ鞭を振るう。
バチュンとゴブリンの皮膚を裂いて奴は怯んだ。
あ、毒も付与した。
ダキューン!!
望月先生が魔銃を撃った、運良く銃弾は頭に当たり、一匹は倒れた。
「ぎゃ、ぎゃぎゃぎゃ……」
胸をかきむしり、ゴブリンは倒れて死んだ。
毒が回ったっぽい。
「「「はあはあはあはあ」」」
「毒が掛かってよかった!」
『マリちゃん、天然で図太い感じ、イイネ!』
『望月先生も撃てたなあ』
『竹宮先生、宮川先生がんばれー』
「あ、ありがとう……」
「がんばるわ……」
東海林が宮川先生の肩をぽんぽんと叩いた。
「すぐ慣れますよ」
「そうかい? 慣れても良く無いと思うのだが……」
「ダンジョンですから」
「そうね」
竹宮先生が深くうなずいた。