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第191話 実験しながらのんびり狩り

 しばらくすると煙幕は薄くなり、視界がクリアになった。


「あれ、消えて行くね」


 白い煙は消滅する感じで消えていった。

 しかし濃い煙幕だったなあ。


『すばらしい性能の煙幕、だが、配信には向いて無い』

『動画が見えなくなるのはなあ』

『逃げる時に使うもんだ』


 普通は強敵から逃走する時に使われる物だな。

 まあ、でも五分ぐらい相手の遠距離攻撃が使えなくなるのは良いな。

 深い階層になると怪光線を放ってくる敵もいるし。


「意外に良いかも」

「長銃で発射できるのは良いな」


 チアキがロープを結んでループを作っていた。


「煙幕の時はこれで、みのり姉ちゃんと泥舟兄ちゃんと繋がっていよう」

「電車ごっこね」

「電車ごっこだね」

「ばらけると煙の中で動ける鏡子とタカシ兄ちゃんの邪魔」


 それはそうだな。

 チアキはロープを肩に掛けて結んだ。


 オーガーの死骸が粒子に変わり経験値の霧が流れて来た。

 ポンポンと空中からドロップ品も現れる。

 魔石と、鬼ころしのパックと鉄棒だな。

 ねえさんがさっそく、鬼ころしを呑もうとしたので取り上げて収納袋に入れる。


「飲酒探検禁止」

「ああ~~」


 酒クズ御用達の安酒を呑んではいけない。

 鉄棒は良い物だが、鈍器を使うメンバーがいない。

 持って帰って売るかな。


 通路を先に進む。

 二十階を越えると宝箱狙いの冒険者は少なくなるので開いて無い確率が高い。

 ちょっと宝箱出現ポイントを廻って行くかな。

 ポップ型の宝箱は低確率だが金箱も出る。

 大体は木箱だけどね。

 こればっかりは、みのりの【豪運】もあまり関係がないだろう。


 暗い通路をLEDライトを頼りに進む。


 小部屋のドアの前で中を【気配察知】で探る。

 チアキもドアに耳を付けて音を拾う。

 この部屋には魔物は居ない。

 ドアを開けて中を照らす。

 ひっくり返った木の宝箱があった。

 再ポップしてないようだ。

 つまり何も無い。

 次に行こう。


 通路の向こうに気配がする。

 チアキが止まれと手で合図してくる。

 ランタンらしい赤い光がゆらゆら揺れる。


「ハイオーク三」


 向こうもこちらの光を見たようだ。

 赤いランタンが揺れながら近づいてくる。

 泥舟が膝を付いて狙いを定める。

 チアキが下がってくる。

 鏡子ねえさんが左に寄った。


「一番左」

「了解、右に撃つよ」


 鉄砲組が一斉に発射する。


 ダキューン!!

 ダキュンダキュン!!


 銃声が響き、左のランタンが床に落ちて止まった。

 右のランタンは依然揺れて近づく。


「リロード、真ん中」

「右、つづけていく」


 泥舟が長銃を振るようにしてリロードして発射。

 チアキはまっすぐ構えて撃つ。


 ダキューン!!

 ダキュダキュダキュン!!


 真ん中のランタンが転がった。

 右のランタンもゆっくりと地に落ちた。


「鉄砲はラクチンだな」

「今はまだ魔力弾で打ち抜けるからね」

「私はなかなか倒せないな、リロード」

「通路で出会う魔物は先に倒せそう」


 ハイオークの近くに行く。

 三匹とも廊下に倒れて死んでいるな。

 泥舟の長銃は上手く頭部をえぐったようだ。

 チアキの拳銃は、着弾が散らばっていて、二発ほど当たってない。


 死骸が経験値に変わり、魔石と剣、あとポークウインナーの袋が出て来た。


「お、初めて見る」


 ねえさんが袋を開けてウインナーをくわえた。

 なんか繋がっているタイプだな。


「粗挽き、うまいうまい」

「鏡子、わたしもわたしも」


 チアキがねだってウインナーを貰いモシャモシャ食べていた。

 肉食姉妹め。


「鉄砲は楽だな」

「飛び道具は接敵する前に決めちゃうからね」

「射手さんが居るとこんな感じなのかしら」

「良い弓があれば同じ感じじゃないかな」


 とりあえず、遠距離で取りこぼしてもねえさんがボコってくれるからな。

 MPの制限がある魔法よりも楽かもしれない。


 小部屋のドアで気配を探る。

 チアキがドアに耳を当てて、指を三本上げる。

 三匹いるな。

 ドアを開けて、こちらに気が付いたリザードマンにチアキが乱射した。


 ドキュンドキュン!


 弾着に耐えてリザードマンが槍を振りかざす。


「『ねーむれ~~よいこよ~~♪ おかあさんのむねのなかで~~♪ ゆめをみよ~~よ~~♪』」


 槍の一撃をバックラーで弾く。

 ポケットからハイパーミント飴を出して口に含み『暁』で一閃。

 一匹の首がポロリと落ちて血が噴き出した。

 鏡子ねえさんが連撃をして、二匹の体が爆発したようになって倒れた。

 『金時の籠手』の表権能[楔]だ。


 リザードマンは【お休みの歌】が効くので良いな。

 ドロップは、魔石と、トカゲ皮のハンドバッグ、トルコ石のリングだった。


「なんだろうこれ?」

『魔法の指輪じゃな、トカゲリング、水攻撃への抵抗が上がるぞ』

『微妙リング』

「売ろう」


 火炎攻撃抵抗は欲しいが、水攻撃抵抗はあまり要らないなあ。


 お、小部屋に木宝箱があった。

 もうけ。


 さっそくチアキが調べて毒矢の罠を解除して開けた。

 中身は……。


『トカゲ腕輪じゃ、水攻撃への抵抗が上がるぞ』

『微妙腕輪』

「売ろう」


 出た物は微妙だが、宝箱が残っているのが解って良かった。

 占有してる奴をサチオが追っ払ってくれたお陰かな。


 チアキがトカゲリングとトカゲ腕輪を装備して遊んでいた。


「おお、水攻撃の抵抗値が十五も上がるよ」

「水攻撃してくる奴があまり居ないからなあ」

「次の階に出てくるグレートトードぐらいだね」

「あんまり難敵じゃないからなあ」


 まあ、それでもアイテムが出ると嬉しいな。

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