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第201話 学校に行くと竜退治で騒がれた

「タカシくんタカシくん、大変だよっ」


 今日も教室に入るとみのりがデデデと走って来た。


「竜退治の事が新聞の一面に載っていたよ、すごいよ」

「あ、本当だ」


 一流新聞の一面にでかでかと『Dリンクスお手柄、世界初のドラゴン退治』と載っていた。


「すごいよタカシくん、竜退治なんてっ」

「動画見たよ~、勇気あるよねえっ」

「すっごい魔石にドロップ品、大金持ちだね、焼肉奢って」


 クラスメートがやってきて、わっしょいわっしょい状態となった。

 最近、よくわっしょいされるな。


「おいタカシ、レアスペル出たんだろ、あたいら『ラブリーエンゼル』によこせっ」

「そうだそうだ、ずりーぞおまえらだけっ」


 不良の姫川と高木が寄ってきた。

 こいつらは変わらないよなあ。


「おまえら魔術師ウイザードのメンバー居ないだろう」

「そ、そりゃ、今はいねえけど」

「か、勧誘中だ、だからくれっ」


 ガンガンと『ダーティペア』は殴られて頭を抱えてしゃがみ込んだ。


「いてー、なにすんだこらーっ」

「あ、ご、後醍醐先輩……」

「タカシに絡むなってお前何回言ったらわかんだ、おおっ?」

「さーせんした」

「ごめんなさいです」


 『ダーティペア』は自分の席に戻った。


 俺はその隙に自分の席に座った。

 いつものように吉田の席にみのりが、東海林と、マリちゃんが椅子を持って近くに座った。


「おお、タカシ、ドラゴンスレイヤー就任おめでとうだぜっ」

「ありがとうございます、後醍醐先輩」

「いやあ、同じ階層に上がってこられて困るぜ、しかも『ドラゴンスレイヤー』の金看板付きだ、まったくタカシはすげえよな」

「ありがとうございます」

「それでだけどよ……」

「あ、タカシくん、アレ、東海林君に上げようよ」

「ああ、そうだな、東海林これ」


 俺は【ドラゴンファイヤー】の呪文スペルを東海林に渡した。


「ちょっと、タカシ、お前これ」

「今すぐ覚えて、泥棒に取られるよ」

「い、いやでも、レアスペルとか、これ、何億するか」

「同盟パーティだから当然だろ」

「いや、本当に何と言っていいか、すまない」


 東海林は涙目になって呪文スペルを開いた。


「「「ああああっ」」」


 何故か『ダーティペア』と後醍醐先輩が悲鳴を上げたが、何でだ?


 羊皮紙からキラキラした粒子が現れて東海林の胸に吸い込まれた。


「「「あ~~~~」」」


 東海林は自分の胸を押さえた。


「【ドラゴンファイヤー】竜のブレスと同じ温度と広さを持つ火炎を敵軍に与える魔法だって。うわ、MP凄く使うね」

「どれくらいだ?」

「今の僕のレベルだと一発でMP無くなるね、使いどころが難しいな」

「凄い魔法なのね、これで『オーバーザレインボー』は二十階突破できるねっ」

「そうだね、『Dリンクス』を追っかけるよ」

「早く来い、東海林」

「うん」

「くそ~~」


 後醍醐先輩が不機嫌な顔をしていた。


「どうしました?」

「いや、なんでもねえっ」


 後ろのドアが開いてチヨリ先輩が踊りながら入って来た。


「『おねがいおねがい、おねがいよ~~♪ わたしの願いを叶えてよ~~♪』レアスペルを売ってくださいよ~~♪」


 ああ、申し訳無いなあ、今、東海林に上げてしまったよ。


「『ああ~~あ~~、あたまをすっきりおんどをさげろ~~♪ れいせいにれいせいになれ~~♪ クールになれ~~♪』」


 はっ!

 チヨリ先輩の【おねがいの歌】に引っかかっていた。


「というか、今、東海林が覚えたとこだぞ、チヨリ」

「ちっ」


 舌打ちしおったぞ、この先輩。


「す、すいません」


 東海林がチヨリ先輩に謝った。


「こ、これからは、勝手に誰かにあげてしまわないで、レア物が出たら私に相談してちょうだいな」

「え、嫌ですけれどもっ」

「きいいっ、みのりさん、あなた生意気よっ」


 ああ、レア物が出ると、いろいろ醜い争いが起こるなあ。

 さすがは悪魔の迷宮産の物だ。


「でも、『ドラゴンスレイヤー』おめでとうございます、タカシくん」

「私も称号もらいましたよ」

「きいいいっ、悔しいっ」


 みのり、自慢はやめるんだ。


「しかし、通路に詰まったとはいえ、よくドラゴンに掛かっていったなあ、勇気あるよな、タカシ」

「鏡子ねえさんが倒したいって言ってくれたので」

「【スロウバラード】と[謡]の切り替えも見事でしたわ、みのりさん」

「はい、お陰で一杯レベルアップできましたよ」

「きいいいいっ、妬ましいっ」

「チヨリ先輩は、今、どこらへんですか?」

「十五階……」

「「「「あ~~」」」」

「東海林くん、新魔法で十六階の手伝いに来てくれないかしらっ」

「たぶん、一撃で部屋のムカデは消し去れますよ」

「それはすごいわねっ! 是非っ!!」

「で、一発で何も出来なくなって、部屋の温度が下がる頃にはムカデが一杯になるかと」

「役にたたないわねーっ!」

「あそこはどうすれば正解なんだろうなあ」

「カオルの時はどうしたのよ」

「え、ああ、ファイヤーボールで減らしたあと、根性」


 後醍醐先輩は名前をカオルというのか、意外にみやびな名前だな。


「はー、それしか無いのかしらねえ」

「まあ、頑張れチヨリ」


 あ、先生が来た。


「おー、ホームルームを始めるぞ~~、後醍醐と北村は帰れ~」

「へーい」

「はーい」


 さて、今日も一日がんばろう。

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