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第202話 川崎駅前まで電車で行く

「売店にマジックポーションは売っているかな」


 川崎に向かう電車の中で東海林がそんな事を聞いてきた。

 今日の奴は大きめの杖を背中にしょっての魔術師ウイザード装備である。


「売ってるんじゃないかな、ヒールポーションとキュアポーションは高値で売れるけど、マジックポーションを使うのは『魔術師ウイザード』と『僧侶プリースト』ぐらいだから」

「それは助かる」

「うちのをやろうか?」


 みのりがMP切れになると『Dリンクス』の戦闘力が下がるから、マジックポーションは収納袋に三本ほど用意してある。


「いや、良いよ、同盟パーティとはいえ、そこまでお世話になると心苦しい」

「今日は先生達の介添えだから、そんなにMP要らないと思うけど」

「『ドラゴンファイアー』を試してみたいんだよ。一発撃ったらMP切れるから、ポーションで補充しないと、【ファイヤーボール】も撃てなくなるからさ」

「マジックポーションは常備してないのか?」

「これまでは、そんなにMPがすっからかんになる事は無かったからね。あと、あまり出る物じゃないし」


 あ、一般パーティーだとあまり出ないのか。

 『Dリンクス』が出過ぎだよな。

 普通に戦って、ほぼ全種類がドロップするからなあ。


「今日も四階だっけ、どれくらいの威力か解らないから困るね」

「それもあるね、竜のブレスと同じ威力、同じ範囲らしいけど」

「ロシアの人は一瞬で二人も焼け死んでいたからね」

「ミハエルの魔法盾が無かったら一撃で全滅していたと思うな」

「二十階のゴブリン軍団をワンパンできるかな?」

「できるかもなー」


 今日もみのりはマリアさんとレッスン、鏡子ねえさんはボディガード、俺たちは先生の付き添いで、放課後迷宮活動だ。

 一応一日おきにお休みという事になっているが、なんだかんだで毎日迷宮に潜る生活は変わらない。


「チアキと泥舟は五階か?」

「イエース、【気配消し】と【気配察知】と【平衡感覚】を磨くのだぜ」


 チアキはカウボーイハットを人差し指でずらしてクールに宣言した。


「僕も【気配消し】欲しいな、あと【狙撃】」

「私は私は【射撃】欲しいっ」


 欲しいスキルに向けて努力するのは良いね。

 良いスキルが手に入ると生存率が上がるからね。

 俺も、回避系スキルと盾系のスキルが欲しいな。


「みんな頑張っていて良いな」

「頑張るとスキルの形で報われるのは良いよな、新宮」

「パラメーターも大事だけど、スキル勝負な所もあるからな」

「みんな、夢に向かって努力していて素晴らしいです」


 マリちゃんがニコニコしながら言った。


「そういや、マリちゃんのイラストバズってたね」

「そうそう、私の、尻尾付きでムカデ鞭でスパイディしてる絵! 可愛かった」

「いえいえ、チアキちゃんが可愛いから、おかげさまでバズリましたよ」

「あれは可愛かった」

「今度アクリルスタンドにして売りだそう」

「売れるかしら」

「もー、マリ姉ちゃんの絵なら売れるよっ! 『Dリンクス』マークも売れてるでしょっ」

「あ、あれは皆さんが凄いからで」


 マリちゃんは自信が無いなあ。

 『Dリンクス』ワッペンは凄く売れているし、あのマークを使ったトートバックとかTシャツとかかなり売れているらしい。

 この前、サンプルの物がたくさん来た。

 今、俺のジャージの下に着ているのも『Dリンクス』Tシャツだ。

 生地がしっかりしていて着心地が良い。


 京急川崎に着いたのでみんなで下りる。

 いつものように街を歩いて複合施設を目指す。


「きゃあっ、タカシくんよっ!」

「泥舟くんも、チアキちゃんもいるわっ!」

「素敵ねえっ」


 Dチューバーの追っかけのお姉さん方に捕捉されてしまった。

 だが、相手にするとDチューブに動画を上げられたりするので、要注意なのだ。


 エスカレーターに乗り陸橋を渡って地獄門がある広場へと入る。

 お、テレビの中継も来てるな。

 ひょっとして『Dリンクス』狙いか、と思ったが、『ホワッツマイケル』の奴らが通っているのをカメラが撮っていた。

 あっちか。

 世界一だもんな。


 ええと、先生方は、あ、居た居た。

 宮川先生が手を振って居たので、そっちに向かう。


「やあ、今日も頼むよ」

「よろしくお願いします」

「こんにちは。ドラゴン凄かったねえ、昨日」


 先生方が口々に挨拶をしてきた。


「今日もよろしく。俺と東海林が見てますので」

「山南くんとチアキちゃんはまた射撃練習かい?」

「そうだよ、先生」

「私たちと一緒なのは方喰さんね」

「よろしくお願いしますっ」


 挨拶をしていると、マイクを持ったレポーターが割り込んで来た。


「ドラゴンスレイヤーのタカシくんだよね、ちょっとコメント良いかなあ」

「あ、そういうのはちょっと」

「今日は狩りなの? 世界の人気者になった感想は?」

「あ、いえ困りますので」


 しつこいレポーターだな。

 鏡子ねえさんがいたら【威圧】して貰うのに……。

 お、そうか。


 俺は収納袋から『鬼の面』を出してかぶった。


「え、なにそれ?」

『うっせえってんだよっ、学校の先生の狩りだ、邪魔すんなっ!!』

「ひええええっ」


 レポーターは腰を抜かして恐怖におののいた。

 【威圧】が利きすぎたか。


 みれば周りの人達が全員ドン引きしていた。

 う、【威圧】やべえ。


「それでは失礼~」


 俺は『鬼の面』外して、チアキとマリちゃんの手を引いて地獄門をくぐった。


「ああ、びっくりした、【威圧】コワイね」

「全員に掛かるんですねえ、呪歌っぽいスキルですね」

「ちょっと効果が効きすぎたよ」

「レベルアップでパラメータが上がってるからだな、というか新宮は元々精神値が高そうだし」


 そうか精神値で発動するから効いたんだな。


「びっくりしたわ、でもマスコミはうるさくて嫌ね」

「タカシ君は正しいと思うね」

「そうだな、新宮は正しいな、マスコミは無作法すぎる」


 とっさに使ってしまったが、『鬼の面』は、ねえさん専用にしておこう。

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