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第203話 『ドラゴンファイヤー』の威力

「マジックポーションを下さい」

「はい、一本三千円です」

「では二本下さい」

「ありがとうございます」


 マジックポーションは一本三千円か、結構するね。

 ヒールポーションとかキュアポーションは、外で一本一万円ぐらいするからそれに比べたらましだけどね。


 俺たちは階段で地下三階まで下りた。


 今日も三階の草原はのんびりした雰囲気で、お爺ちゃんお婆ちゃんが散歩したり、冒険少年少女達が駆け回ったりしていた。


 ふよふよとカメラピクシーさんたちが寄ってくる。


「今日も頼んだよ、リボンちゃん」


 リボンちゃんは笑ってサムズアップした。


『お、今日はタカシ達は先生の介護狩りか』

『のんびり配信だな、意外と好きよ』

『目玉は東海林の新しい魔法だな』

『うお、レア魔法、東海林にやったのかあ、タカシは気前が良いよな』

『誰かがつかわんとな』


 今日もリスナーさんの同接数が上がって行く。

 午後三時頃なのに、結構人が居るよな。


 チアキにガンベルト、泥舟に長銃を渡す。

 先生方の装備も出して身に付けてもらう。

 俺も一応『暁』と『浦波』を出して腰のベルトに引っかけた。

 マリちゃんにも防具とムカデ鞭を渡した。


 望月先生が、なんだかゴツイ銃のような物を持っていた。


「なんですかそれ」

「錬金術師用の水鉄砲だよ、タンクを切り替えて、麻痺液、毒液、溶解液を打ち出せるんだ」

「アメリカ製ですか?」

「そう、ちゃんとした奴だよ」


 錬金銃もあるのかあ。

 色々考えるね。

 爆発試験管よりは危なく無くて良いか。


 宮川先生は、片手剣に盾、竹宮先生は丸盾にメイスだ。


「ああ、緊張します、初の前衛だわ」

「頑張りましょう」


 竹宮先生は武者震いをした。


『僧侶の竹宮先生、がんばれー』

『使える奇跡は【ヒール】【解毒】【頑健プロテクト】だな、僧侶基礎セットだ』

『二十階越えないとアンデットはあんまりでないから【鎮魂】は、まだいらんね』


 我々は四階への階段へと草原を渡っていく。

 暖かくていいね。


 スライム、角兎と出て来たが、望月先生が麻痺液をぶっかけて動きを止め、そこを、宮川先生が斬るか、竹宮先生が殴るか、マリちゃんがムカデ鞭で打つかして狩った。

 わりと安定しているね。


 さくさくと四階への階段に着いた。


「今日も四階かな?」

「そうですね、安定するようなら五階に行きましょう」

「がんばるわ」


 四階に下りて、鉄砲組とはお別れである。


「そいじゃ行ってくるよ」

「なんかあったら電話をくれよ」

「おっけー」


 チアキと泥舟が仲の良い兄妹のように五階階段目指して歩き去っていった。


「ちょと、うろうろして『ドラゴンファイヤー』の試運転が出来る場所をさがそう」

「そうだね、他人を巻き込んだら大変だし」


 広範囲魔法は気を付けないと、誤射するしな。


「それでは、宝箱の場所を廻って狩りをしようじゃあないか」

「それで行きますか」

『浅い階の宝箱は出た瞬間に取られるけど、運が良ければポップしたてを取れるしな』

『占有が居なくなった替わりに宝箱狙いでぐるぐる回っているパーティが居るな、今度はどっちが先に見つけたかで喧嘩になる事も多いぞ』

『半グレに占有されているよりはマシだよな』


 宝箱のポップ場所を目指して歩き回る。

 途中にゴブリンとか、角兎、カピバラとかが現れるが、順当に倒して狩りは進む。

 竹宮先生もゴブリンをメイスでボコボコにしているね。


『麻痺水鉄砲が良いね、良く効く』

『試験管だとすぐ無くなるからねえ』

『麻痺は良い』


 敵が出ると、麻痺液で止めて、宮川先生が斬る、竹宮先生がメイスで殴る、マリちゃんがムカデ鞭で打つ、のパターンができあがった。


 一カ所目の宝箱は無し、空箱が転がっていた。

 二カ所目も無いね。

 そうそう出る物じゃないか。


 宝箱目当ての巡回パーティが結構いて、すれ違う。

 割と初心者パーティが多いね。

 子供パーティも居た。


 四階の真ん中の池に来た。


「ここが広くて良いんじゃ無いか」

「そうだな、対岸に道も無いから安心かもしれないな」

「お、東海林君の新魔法だね」

「楽しみだわ」


 東海林は池のほとりに立ち、呪文を詠唱し始めた。


『そは竜の吐息、暴虐竜帝レグルスの力を借りて我が敵を焼き尽くさん。ドラゴンファイヤー!』


 詠唱が終わった瞬間、炎で出来たドラゴンの巨大な頭が中空に現れブレスを吐いた。


 ドゴゴゴゴゴ!!


 もの凄い火炎の熱が伝わり、一瞬で池の水が蒸発爆発し、木々をなぎ倒して池の向こうの森が消滅した。


「「「「「……」」」」」

『『『『『……』』』』』

『ものすげええっ!!』

「なんだこのチート魔術は!」

「こ、こんなに威力があるとは」

『すごい範囲火炎攻撃だっ!!』

『熱量も無茶苦茶だっ!!』

『さすが、『軍隊殺し』のブレス!!』

『こりゃあ、人も一瞬で丸焦げになりますわっ』


 東海林が膝をついた。


「なんか経験値の霧が出て来た」


 池の中の魔物と、森の中の魔物をいっぺんに倒したようで、先生方とマリちゃんがレベルアップした。


「よし、これで二十階のフロアボスも楽勝だなっ、東海林」

「い、いや、ミノタウロスも一撃だろう、これ」

「かもしれない、やったなっ」


 なんだか凄い威力で、俺たちは呆然と水の無くなった池を見ていた。

 マイペースなマリちゃんが池の中の魔石をムカデ鞭で拾っていた。

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