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第204話 四階でうろうろ狩り

 轟音と煙に惹かれて配信冒険者パーティが駈け寄って来た。

 呆然と空になった池を見ていた。


「池の中にも、魔物はいたのね」

「下はドロなので、中に入ると危ないですね」


 そう言いながらマリちゃんは魔石をムカデ鞭で拾っていた。

 迷宮の森は難燃性なのか、火は移っていなかったが、効果範囲の木々は灰になっているな。

 凄い威力だ。


 東海林が震える手でマジックポーションを飲んでいた。


「ま、魔法って凄いですねえ」

「範囲が広すぎて逆に使いにくいかもしれません」

「小部屋で使うと自滅するタイプの魔法ですわね」


 池の周りが野次馬で一杯になった。


「さ、次の宝箱に行きましょう」

「そ、そうね」

「そうだね」

「いやあ、とんでもないねえ」


 気を取り直して場所を移動する。

 四階は平原半分、森が半分だ。


 次の宝箱を目指して移動しながら狩りをする。

 四階だと出てもゴブリン二匹なので対応は楽だな。


 次の宝箱も空である。

 四階は駄目かもなあ。


 ゴブリンが二匹出て来て、麻痺水鉄砲で動けなくなった所で、宮川先生と竹宮先生に倒される。

 もう、竹宮先生もゴブリンをメイスでどつくのに慣れたようだ。


「【パラライズボール】の魔法とか良いかもなあ」

「東海林はフロアボスまで何もしないでMPを温存しろ」

「それは、嫌だなあ。でも効率を考えるとそうなんだよなあ」

「規格外の魔法でどんどん追ってこい」

「次の土曜日は二十階フロアボスチャレンジかな」

「うちは三十階にチャレンジだ」

「『Dリンクス』なら行けそうだね」

「『オーバーザレインボー』も行けると思うぞ」

「もうちょっとレベルを上げ無いとね」


 レア頼りで急いで深い階の攻略をすると事故の元だからね。

 東海林は地道でやっぱり良いな。

 体を暑さ寒さに合わせるように、配信冒険者もレベルとスキルを階層に合わせないとな。


 ちょっと時間が経ったので、五階への階段上の安全地帯で小休止だ。

 なんだか、今日は四階が混んでるな。

 配信冒険者たちがひっきりなしに上がってくる。


「四階中央池の水をぜんぶ抜いた奴がいるらしいぜ」

「ど、どうやって?」

「魔法でドンだってよ、見に行こうぜ」


 その魔法を使った男は隅っこでスニッカーズを囓っていますが。

 池を見に行く奴らが集まっているのか。


 マリちゃんが【ドラゴンファイヤー】を使っている東海林の絵をスケッチブックに描いていた。


「いいねえ」

「あの魔法は衝撃的でした」

「多分、最高クラスの呪文じゃないかな」

『ティルトウエイトだ』

『ベギラゴンだ』

『ファイガだ』


 さて、狩りを続けますか。

 みんなで歩いて、次の宝箱の場所へ。

 やっぱり無いねえ。

 と、思ったら、いきなり目の前に宝箱がポップした。


「「「「「おおおおお」」」」」


 時間がランダムだから、こういう事もあるねえ。

 俺はチアキに電話をかけた。


『なになに、タカシにいちゃん』

「宝箱が出たので開けにきて」

『おーー、了解!』


 出た奴をキープしているのは占有に入らないのかな。

 どうなんだろう。


「宝箱って出るんですね、初めてです」

「木箱だから、あまり良い物は入って無いかもしれませんね」

「でも、ワクワクしますな」

「宝箱宝箱」


 そう言いながら、マリちゃんは宝箱をスケッチした。


 チアキと泥舟が走ってやってきた。


「やったねー」

「運が良かったよ」

「みのりねえちゃんだけじゃなくて、タカシ兄ちゃんも運の何か入ってるんじゃない?」

「いや、そんな事はないだろう」


 俺の運のステータスは普通だ。


 みんなが見守る中、チアキがカチャカチャやって宝箱を開けた。


『何が出るかな何が出るかな』

『宝箱は開ける前が一番楽しいよな』

『同感同感』


 ギイと音を立てて開いた中に入っている物は……。


「ヒールポーション三本、まあまあだね」

「なにげに実用品だね」

「外に売ると高いですよ」

「持っていましょう、腐る物ではないですし」

「そうですね、私のMPが切れる事もあるでしょうし」


 ポーションは念の為持っていた方が良いね。


「池が干上がったって噂を聞いたんだけど」

「東海林の【ドラゴンファイヤー】の魔法の仕業だ」

「そんなに凄いのっ」

「わあ、見たかったな」

「後で動画で見ればいい」


 チアキと泥舟を交えてうろうろと四階狩りをした。

 泥舟が望月先生の錬金薬銃の射撃姿勢を指導したりする。


「四階はのんびりしているね」

「そろそろ五階に行くかな」

「次回ぐらいからだな、問題は六階からだが」

「今でも半グレは居るのか?」

『割と居る』

『たまり場が必要な人種だからなあ』

『占有無くなったから大分減ったが、その替わりに回遊半グレになってるな』


 無用なトラブルは避けたいのだが、どうした物かなあ。


 半グレの話をしてたら、チアキが体を寄せてきた。

 頭を撫でてやる。

 まだ、何か嫌な思い出があるのだろうな。

 大丈夫だ、俺が付いてるから。


 空がどんどん赤くなってきた。

 うん、これがあるから三階四階五階はいいね。

 なんとなく、子供の頃の夕暮れを思い出すな。

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