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第205話 一階ロビーに暴虐竜帝レグルス出現!!

 さて、今日の狩りも終わりだ。

 みんなで階段を上がって行く。


「次回は五階にしましょうか」

「そうだね、四階は安定した感じだ。望月先生の麻痺水鉄砲は良いね」

「動きが止まれば雑魚ですものね」

「いやあ、好評でうれしいです」


 望月先生はにこやかに笑った。


「マリねえちゃんはレベル上がった?」

「上がりましたよ、二つ」

「やったねえっ」

「東海林くんのお陰です」


 マリちゃんが東海林を拝むと、奴はちょっと照れた。


「自分でもあんなだとは思わなくてね、びっくりだ」

「チアキはどうだ?」

「体軽いし、鏡子みたいに樹から樹へ飛び移るのが出来たよ」


 チアキの『竜の尻尾』が自慢げに揺れた。


『機動力のある『盗賊シーフ』は良い』

『レベルが上がったから射撃も当たるようになったな』

『スキルが生えてから本番だな』


 コメントが手首上のウインドウを流れて行く。


「タカシはどう? 『軽戦士』は?」

「動きやすくなったけど、まあ、あんまり変わらないかな」

「それは良かった」


 みんなじわじわと強くなってきているな。

 次の土曜日で三十階フロアボスまで行けるかな。

 因縁のミノタウロスだけど、俺はあの頃の俺じゃないからな。

 がんばろう。


 一階のロビーに着いた。

 先生方は換金カウンターに並ぶ。

 マリちゃんが池から魔石を沢山サルベージしていたから結構になるかな?


「はい、六千四百円になります、どうなさいますか?」

「四人分けで、三人分は『臨海第三ティーチャーズ』の口座へ、一人分は方喰さんへ、どうする、現金で貰う?」

「口座に入れてください」

「かしこまりました」


 換金カウンターの女悪魔さんがちゃっちゃと手続きを取った。

 振り込みだと楽だね。

 今日は誰も悪魔教会へ行く用は無いね。

 みんなジョブチェンジしたからさ。


「さあ、今日も奢るよ、タカシくん」

「いつもすいません」

「何を言っているの」

「何を言っているんだい」

「何を言うのか、『Dリンクス』と『オーバーザレインボー』が付いて来てくれているだけで配信料が沢山入るのだ、奢らせてくれたまえよ」

「はあ」


 なんだか、最近お金の感覚がおかしくなるよなあ。

 一日の配信で何十万も入るからね。

 そろそろ、税金の心配とかした方が良いだろうか。


 ……。

 なんか、ロビーの雰囲気がおかしいな。

 なんだろ。

 全体的に怯えているというか。


「よお、タカシ」


 ……。

 なんで、レグルスさんがロビーに居るのっ!!?

 しかも人間大でちっさっ!!


 昨日激闘の末に倒したレッドドラゴンが小さくなって居る。

 しかも、ロビーのソファーにちんと座って、ムカデ飴とか、カエル饅頭とか、売店で買えるお菓子を山のように積んで、もっしゃもっしゃと食べておられるっ。


「レグルスさん、なんでロビーに居るんですか」

「【サイズ変更】のスキルを魔王からわびで貰ったから登って来た、120階は誰も来ないから暇でなあ」


 それでロビーに出て来たのか、迷惑だなあ。

 女悪魔さんも眉をひそめてレグルスさんを見ているぞ。


「人間のお菓子は美味しいな、わはは」


 ガチャピン大になったドラゴンさんはご機嫌であるな。


 他のみんなは、と思って振り返ると、遠くに居る~~!

 こっちをこわごわと見ているな。


「お、ちんまいのがいるな、今日は空手女とみのりんとおばちゃんは居ないのか」

「みのりは歌のレッスンに行ってるよ、鏡子ねえさんはボディガード、かーちゃんは俺のサーバントだから呼び出さないと出ない」

「そうかそうか、みのりんも華があって良い『吟遊詩人バード』だな、歌が上手い! 昨日、六本腕にディスプレイとAV機器をセッティングしてもらってお前達の動画も沢山みたぞ」

「それはそれは」


 自分のフロアにAV機器を持ち込んだのか。

 ニートドラゴン一直線だな。


 チアキと泥舟がおそるおそる寄ってきた。


「こここ、こんにちは、レッドドラゴンさま」

「ど、ど、どうも」


 レグルスさんは目を細めニッカリ笑った。

 歯が尖っててコワイ。


「おお、鉄砲男とちびっ子だな、ワシは『暴虐竜帝レグルス』だ、よろしくなーっ」

「泥舟と申します」

「チアキれす」

「おう、座れ座れ、わははは」


 傍若無人だな、レグルスさんは。


「サイズが小さくなれると色々な所に入れて便利だな」

「それは良かったですね」


 チアキと泥舟がソファーに座った。


「人語喋れたんですね」

「古竜だからな」

「オーラが凄い……」

「うむ、ちびっ子、良くわかってるな、わはは……」


 遠くから矢が飛んで来てレグルスさんの頭にカンと当たった。


「「「……」」」

「ぐ、『軍隊殺し』しょ、勝負だっ!! お、俺たちも池の水を全部抜くレアスペルを出すんだ~~~っ!!」


 どこかの中堅配信冒険者パーティがそう宣言した。


『ば、馬鹿じゃねえのかっ!!』

『小さいレグルス陛下は軍隊を一蹴するんだぞっ!!』

『ぐわー、中堅パーティ死んだ~~!!』


 レグルスさんが立ちあがった。


「せっかく楽しくタカシたちと話していたのに、邪魔が入った、すぐ焼き殺してくるからな」

「お、お手柔らかに」

「「……」」


 ずんずん歩くレグルスさんの前にサッチャンが立ち塞がった。


「レグルス陛下、ロビーではブレス禁止です、電子機器が多いので」

「むっ、パンチやキックは?」

「それはご自由に、思う存分やってくださいませ♡」

「おう、行ってくる」


 ぐおおおと、吠えてレグルスさんは空を飛び、中堅パーティに襲いかかった。

 ナムサン。


 まあ、悪魔教会がすぐそこだから死んでも大丈夫大丈夫。

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