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第206話 晩ご飯はモナリザンで

 レグルス陛下が血みどろになって帰って来た。

 コワイ。

 中堅パーティは死体になって悪魔教会へと女悪魔さんが運んで行った。

 蘇生させんのかね?

 借金負わすのかな。


「それでは、レグルスさん、僕たちはこのへんで」

「そうか、残念だな、また会おう、タカシ」


 みな、こそこそとロビーを離れようとした。

 レグルス陛下は血まみれでソファーに座ろうとして女悪魔さんに止められ、タオルで拭かれていた。


 みな妙に黙って地獄門を目指す。

 触らぬ暴虐竜帝に祟り無しだ。


『見ない振りしてる~~』

『まったく、レグルスには困ったものじゃなあ』

『陛下って事は、迷宮とは違う系統なのかな』

『竜の国の皇帝じゃ、まあ竜はみんな気ままなので国家という感じでもないがの』


 余さんは何でも知ってるなあ。


 息を止める感じで地獄門をくぐった。

 振り返って、リボンちゃん達に手を振る。


「「「「「ぶわ~~」」」」」


 全員で太い息を吐いた。


「ド、ドラゴンさんとロビーで会うとは思いませんでしたわ」

「人間大なのに凄い迫力だったねえ」

「人の良いヤクザのおっさんみたいな感じだった」

「まあ、喧嘩をふっかけなければ襲っては来ないでしょう。迷宮教会の神父さん役の悪魔さんたちみたいな物だから」

「びっくりしたねえ」


 まったくです、望月先生。


 広場のベンチで装備を外して収納袋へとしまう。

 先生方の装備も預かっておく。


「さて、晩ご飯はどこに行きましょうか、チアキちゃんはどこがいい?」

「モ、モナリザン」

「そうね、宮川先生どうですか」

「行きましょう、ドラゴン目撃記念です」

「あはは、良いですね」


 良くわからない記念だけど、あそこは美味しいから俺としても賛成だ。


 皆で川崎駅の中央通路を歩く。

 夕方だからサラリーマンの往来が激しいね。


 東口の方からみのりがでででと駆けてきた、鏡子ねえさんも一緒だな。


「タカシくん、タカシくん、ドラゴンさん出たのね」

「会いに行こうぜ、タカシ」

「やめなさい」


 会ってどうするというのだ。


「今日はマリアさんとキャシーは一緒じゃないんだ」

「あの二人は『ホワッツマイケル』の会合に行くって。私たちは『Dリンクス』の会合だよ。東海林くんっ、【ドラゴンファイヤー】凄かったね、動画で見たよ」

「いやあ、あそこまでとは思わなかったよ」

「ネットで『池の水を全部抜く東海林』って二つ名が付いてたよ」

「な、長い」

「すげえ魔法だよなあ。これで『オーバーザレインボー』も、うちに追ってこれるな」


 俺たちは歩きながら話をした。


「そうですね、今度の土曜に二十階を目指しますよ」

「よし、俺らは三十階をめざすぞっ」

「途中に墓地ゾーンがあるからなあ、どうかな?」

「とりあえず行って見て、キツいようなら引き返そう」

「オバケ、でますか?」

「出るよ、みのり。夏のDアイドル特番でおなじみのアンデット階だ」

「ひいっ!」


 迷宮の二十五階、二十六階は墓場を模した階になっていて、ゾンビやグール、マミーにバンパイヤが出る場所だ。


「僧侶の【鎮魂ターンアンデット】があると楽勝と聞きますが」

「魔法武器なら通るから、『金時の籠手』でも通るだろう」

「魔拳銃、魔長銃も魔力弾攻撃だから通ると思うよ」


 階段を下りて、さらに地下に階段を下りるとアゼリア地下街だ。

 階段途中の仕掛け時計は壊れたままである。


 アゼリアはかなり広い地下街で、飲食店、服飾店、沖縄産物店などが入っているが、川崎東口のあちこちに連絡するのにもよく使われる。



「お、ドラゴンスレイヤーの『Dリンクス』だ、学校の先生の介護狩りの帰りか」

「『イケヌケの東海林』も居るぞ」


 その略し方はいかがな物だろうか。


 まっすぐにどんどん歩いて仲見世通り方面出口から地上に戻る。

 タワラヤの前あたりに出るのだ。


 商店街を歩いて路地に入り、ちょっと行くとモナリザン本店がある。

 まだちょっと早い時間だから、お店は空いていて全員入れた。


「チアキはここ好きなんだ」

「うん、初めてお店でナポリタン食べれたから」


 くっそう、半グレどもめ。

 外食ぐらい連れて行けよ。


 でも、最初の頃に比べるとチアキも明るくなったし、ちょっとふっくらして綺麗になったな。


「そろそろ、チアキちゃんも小学校に行くのよね」

「う、うん、来週ぐらいから……」

「チアキちゃんは良い子だから、すぐ友達が出来るよ」

「う、うん……」


 不安そうなチアキの頭を撫でてやる。


「大丈夫だ、チアキは優秀だから」

「ありがとう」

「虐める奴がいたらぶっとばせ」

「そうするっ」


 鏡子ねえさんは教育に悪いなあ。


「学校までの護衛は? タカシ」

「やっぱり要るよな」

「ロシア人に捕まって人質にされると困るよ」


 そうだなあ、どうしようか。


「私がみのりを高校に送っていって、そのついでに送って行くよ」

「それが良いかもな、おねがいできるかな? 鏡子ねえさん」

「まかせとけっ」


『こちらでもガードしますので、ご安心ください』


 うおっ、耳元で縄谷ちゃんの声がして、俺はビクンと飛び上がった。

 振り返ると、離れたテーブルで『チャーミーハニー』さんたちが居て小さく手を振ってた。


 うん、チアキが小学校に居る時はチャーミーさんたちに頼むか。

 なんかちょっと不安だけど。

 あと、鮫島さんはあのフードとマスクでどうやってご飯を食べるのだろうか。



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