「タカシくんっ! 東海林くんが騒がれているよ、大変だよっ」
あいかわらず、みのりは俺が登校するとデデデと走り寄ってくるな。
今日はクラス内が騒がしかった。
「「「『イケヌケ東海林』!! 『イケヌケ東海林』!!」」」
東海林を囲んでクラスメートがわっしょいわっしょい状態だ。
「やっぱすげえよなあ、【ドラゴンファイヤー】」
「池が一瞬で蒸発だし、水蒸気爆発だしなあ」
「これで『オーバーザレインボー』もSクラス確定だねっ」
東海林はみんなに囲まれてちょっと困っているな。
「あれは、新宮がくれたスペルだからさ。あっ、新宮おはようっ」
「おはよう、騒がれてるなあ」
「凄いスペルだからしかたが無いね」
『ダーティペア』がずずずいと進んできた。
「おい、クソメガネ、特別に『ラブリーエンゼル』に参加することをゆるしてやる」
「よろこべ、おらっ!」
「ええ、嫌だけど」
「あんだと、おらっ!」
「メガネに拒否権有るとでも思ってんのかー、あー?」
相変わらず『ダーティペア』は知能指数が低いよな。
「おまえら、他のメンバーはいないの?」
「お、おう、二人だけだ、話は持ちかけてんだけどよお、みんな逃げやがる」
「こんなキュートなJKパーティなのに、普通断るか? なあっ」
いや、普通に断るだろう。
頭悪そうだしなあ。
「不良のつながりで入れれば良いじゃんよ」
「不良はみんな戦士か盗賊で駄目だっ」
「そうだ、魔法使いか僧侶が良い、戦略に幅がでねえっ」
ああ、それで、断られ三昧か。
切ないなあ。
「泥舟くれよ、
「みのりでもいいぞっ、あー?」
いや、いちいち凄むなって。
「あ、いかん先輩きた」
「にげろっ」
後醍醐先輩がやってきた。
この間に席に付こう。
俺が席に付くと、みのりが吉田の席に、東海林とマリちゃんが椅子をもってきて座った。
「おー、東海林、やっぱレグルス陛下の魔法すげえなあ」
「ええ、使って見てびっくりですよ」
「池の水全部抜いちまう威力だからなあ、うちも欲しいぜ」
先輩の所の『迷宮ぶっ潰し隊』も魔法使い居ないんだよな。
「魔法職は地頭の良さが要るから、なかなか居ないのよねえ」
「オタク連中なら結構魔法使いいるんだけどよ、話が合わないからなあ、居着かねえ」
「命が掛かってますからね、パーティのまとまり的に難しいですよね」
それでもまだ後醍醐先輩の所は先輩が僧侶だから良いよな。
他の不良パーティは『ダーティペア』とどっこいどっこいだ。
「タカシんところは、今日は狩りか」
「ええ、オバケ地帯まで行ってみようかと」
「オバケコワイ~~」
「アンデット特効の歌あるだろ」
「昨日覚えた~~『おばけなんかこわくないさ~~、おばけなんかいない~~、なんかの見間違いだし死んだひとは帰ってこない~~♪』」
これが【オバケ嫌いの歌】かあ。
わりと陰気な旋律だなあ。
「効果はどんなもんだ?」
「わかんない、ネットでは【
「まだ取れてねえ、というか、マミーから出るらしいんだが、おまえら出た?」
「マミーからは乳飲料のマミーしか出なかったよ」
「あと、包帯」
「もしも出たら、藍田さんにあげてくれないか」
「ずりーぞ、おまえらばっか、俺んちにもくれよう」
「出たらあげるよう」
「オバケ地帯で出るんじゃないかな」
がらりと戸が開きチヨリ先輩が入って来た。
「あ~あ~~♪ オバケ嫌いの歌が手に入ると~~♪ コモン
「死に職業だったのはコモンが揃えやすくて良いよなあ。僧侶の奇跡は慢性的に品薄だぜ」
「私もラッキーだったわ、レア
「出たら上げますよ」
「ほんとう、嬉しいわタカシくんっ」
学校のパーティには融通しないとね。
でも、知り合いの僧侶さんは、後醍醐先輩と藍田さんと竹宮先生か。
オバケ地帯で沢山出れば良いんだけどな。
「まあ、臨海第三で融通しあってパーティのレベルを上げて行こうぜ」
マリちゃんが、後醍醐先輩とチヨリ先輩に紙を渡した。
「これ、マーク案、二三作ってきましたよ。気に入ったのが有ればいいんですけど」
「おおおおお」
「わああああ」
「いいな、これっ! メンバーに聞いて決めてくるぜっ」
「あー、私のも良いわ~~、鳥なのねえ~~、うふふっ」
「そういや、チヨリの所、パーティの名前付いたか」
「ええ『
「じゃあ、ロゴも被せますね」
「おねがいね、社長も喜ぶわ」
『ダーティペア』がお預けを食らった犬みたいな顔でこっちを見ているな。
「『ラブリーエンゼル』さんのはこれです」
「「ぎゃ~~!!!」」
やかましいわっ!!
「すげえ、すげえぜ、マリッペ!! これだー、これしかねえっ」
「あっはっは、凄い凄い、私らのマーク!! うれしーっ!! 金、金をはらうぜっ」
「ああ、良いですよう、クラスメートだし」
「おまえ良い奴だなっ、マリッペ」
「気にくわない奴がいたら言え、ぼこってやっからようっ」
「はははは」
本当になあ、『ダーティペア』は『ダーティペア』だよなあ。
「おーう、ホームルーム始めるぞ~~、後醍醐と北村は自分のクラスに帰れ~」
「へーい」
「はーい」
先生が来て、今日の授業が始まった。