目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

第208話 オバケ階へ出発進行

 さて、今日は迷宮の二十階から二十五階ぐらいを覗いて帰ってこよう。

 という訳で『Dリンクス』は川崎駅前の地獄門前に集合だ。


「『ウラジの嵐』は来るか?」

「レグルス陛下の経験値で大分レベルが上がったからどうかな?」

「レベル的には似た感じになったかな?」

「ねえさんが居て、銃士ガンナーの泥舟が居るからね。向こうは近代兵器が使えないから何とかなる、と思いたい」


 こればっかりはやり合ってみないと解らない。

 ミハエルの持つ魔術武器の盾と魔剣がどれくらい強いかによるね。

 来ないでくれるとありがたいのだが。

 迷宮攻略を進めたい所だ。


「じゃあ、行こうか」


 俺たちは地獄門をくぐり迷宮に入った。

 まっすぐポータルゾーンに向かう。

 買い物は特にないね。

 煙幕玉も炸裂玉も十分にある。


 順番にポータル石碑にタッチして転移する。

 チアキが鏡子ねえさんにひっついている。

 彼女も二十階のフロアボスを倒しているから、その必要は無いのだが、癖になってるのかな。


 ブワッと視界が歪んで、気が付くと地下二十階だ。


 安全地帯で装備を付ける。

 準備が出来ると気が引き締まるね。


 どこからかふよふよとリボンちゃん達がやってきた。

 今日もよろしくな。


『お、『Dリンクス』はじまた』

『今日は二十階台の習熟かな』

『この前はロシア人のせいで散々だったけどな』

『大物食えたからホクホクとも言えよう』


 手首の上のミニディスプレーにリスナーのコメントが流れ出す。

 同接数もどんどん上がっているな。


「この前は二十二階までだったからなあ、先に行きたいな」

「そうだね、ねえさん」


 チアキが壁を駆け上がり、天井にムカデ鞭で張り付いた。

 器用だなあ。


 皆で階段を下りる。

 二十一階はこれまで通りの石造りの迷宮だ。

 ヘッドライトを調整して、ランタンも付ける。

 黒っぽい石造りの通路がテラテラ光る。


 チアキを先頭にして隊列を組み、通路を歩き始める。


「宝箱を覗いていくか、タカシ」

「んー、進行方向の近場の奴だけ覗こう、全部見ていくと三倍ぐらい歩かなきゃならないからね」

「解った、今日はオバケだな」

「オバケコワイ~~」


 先の方から灯りが近づいてくる。


「トロール、ハイオーク」


 チアキが下がる、泥舟が長銃を構える。


 バキューン!

 ダキュンダキュン!!


 ハイオークに目がけて銃弾が飛ぶ。

 灯りが地面に落ちて転がった。

 よし、ハイオークが倒れた。


「ごおおおお!!」


 巨体のトロールが手を振り上げて走って来た。


「『ねーむれ~~よいこよ~~♪ おかあさんのむねのなかで~~♪ ゆめをみよ~~よ~~♪』」


 トロールの目がトロンとして動きが鈍った。

 ねえさんが飛びこんで行ってワンツーパンチ、さらに回し蹴り。


 ドカドカバキ!!


 衝撃力がトロールの体内で破裂して、奴は背中を丸めた。

 俺は背を低くして踏み込み、首に『暁』を叩きつける。


 バッシュ。


 トロールの首はごろりと床に転がった。

 どーんと音を立てて巨体が転がった。


『なんか、地味に強いな『Dリンクス』』

『レグルス陛下の経験値のお陰だな』

『危なげない感じだな』

『鏡子さんとタカシの前衛のパンチ力が上がってるし、雑魚は鉄砲組が処理してくれて、さらにみのりの呪歌支援だな、強い!』


 ねえさんがハイオークの死骸を引っ張って来て、トロールの死骸の近くに置いた。

 死骸は粒子になり、魔力の霧が発生して俺たちの心臓に吸い込まれていった。

 ごろりと魔石とドロップ品が現れる。


 ドロップ品は、聖典【上治癒ハイヒール】、オーク斧であった。

 お、ヒールの上級聖典が出たな。

 藍田さん行きかな。


「トロールからハイヒールは出るのか」

「回復力の魔物だからな」


 さて、先に進もう。


 途中の小部屋を開いて宝箱をチェックしたが、開いていた。

 まあ、そうそう上手くは行かないよな。


「リザードマン四」


 チアキが下がってきた。

 さすが、【気配察知】が生えたから、敵の特定が早いな。


 まずは鉄砲組が乱射して、遠距離からリザードマンを二匹落とした。


「『ねーむれ~~よいこよ~~♪ おかあさんのむねのなかで~~♪ ゆめをみよ~~よ~~♪』」


 ハイパーミントを口に含んでリザードマンを待つ。

 リザードマンたちは走って来て、だんだんと速度を落とし、ねえさんの前でぱたりと倒れて寝てしまった。

 【睡眠】の状態異常に弱いなあ。


 鏡子ねえさんが上から見えないラッシュを頭にぶち込んで粉砕した。

 俺は『暁』で首を切り落とす。


「リザードマンはお客さんになったね」

「みのりの呪歌の成功率が上がっている感じだな」

「ちょっとねむくなる」


「『おはようおはよう~~、あかるい笑顔にさんさん太陽さんが~~♪ にっこり顔出しおはようさん~~♪』」


 みのりが【おはようの歌】を歌うと鏡子ねえさんの目がぱっちりした。


「おお、目が覚めた」


 そう言ってねえさんはバリバリと飴をかみ砕いた。

 みのりの呪歌にさらされていたら、そのうち【呪歌抵抗】とか生えないだろうか、そうしたらかなり楽なんだけどな。


 リザードマンは粒子に変わり、魔力の霧が発生した。

 ゴロゴロと魔石とドロップ品が落ちる。


 ドロップ品は、リザードマンガントレットとリザードマングリーブ、青水晶、ブルーゼリーが出た。


「トカゲ装備が揃い始めたなあ」

「チアキがリングと腕輪を付けているから、ガントレットとグリーブを付けよう」

「水抵抗があがるかな」

『装甲値もそこそこ上がるぞい』


 チアキの腕にガントレット、足にグリーブを付けてやる。

 『竜の尻尾』も付けているから、なんか爬虫類幼女みたいで格好いいな。


「全部で抵抗値が四十超えたよ!」

「四割引かな、うん、だが、水攻撃してくるやつが居ない」

『『トカゲ胴丸』を付ければあと二十上がるぞ、ドロップするのはブルーワイバーンじゃ』


 ワイバーンか、出会うのはしばらく後の敵っぽいね。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?