ブルーゼリーが出たと思ったのだが……。
案の定、鏡子ねえさんが蓋を開けてゼリーを丸呑みしていやがった。
「ソーダ味だ」
「なんでも開けて食べるのはやめなさいよ」
「ドロップ品を食べるのは迷宮の醍醐味」
それは鏡子ねえさんだけだ。
ターンパネルの場所を通過した。
二十二階への階段に、問題なくたどり着いた。
階段を下りると二十二階の安全地帯だ。
休まずに先に進む。
角を曲がると中央通路だ。
「ハイオーク三、オーガー二」
先行していたチアキが小声でモンスターの接近を教えてくれる。
結構数が多いな。
泥舟が腹ばいになった。
チアキも拳銃を抜いてスタンバイしている。
遠い道の向こうからランタンがゆらゆら揺れながら近づいてくる。
バキューン!
ダキュンダキュンダキュン!
泥舟の射撃でハイオークが沈んだ、チアキの射撃は当たったようだが倒れてはいない。
泥舟がリロードして、チアキが残り三発を撃ち込む。
ハイオークが一匹倒れた。
泥舟が構え直してオーガーの頭部を撃ち抜いた。
「『ぐるぐるぐるぐる♪ おまわりおまわりなさい~~♪ 空も地面もぐーるぐる♪ 足下ぐらぐら気を付けて~~♪』」
よし、レベルが上がったから、わりと動けるようになった。
チアキも危なげなく立射で弾丸を撃ち込む。
生き残りのオーガーとハイオークはぐらりとよろめいて手をついて倒れた。
良い位置にあったオーガーの頭を鏡子ねえさんが正拳突きして粉砕、そのままくるりと回ってハイオークの頭に蹴りをぶち込んだあと絡みつくようにして首の骨を折った。
『すげえ、瞬殺だ』
『鏡子さんの関節技の切れも良くなっている』
【関節技】のスキルは伊達ではないな。
チアキがうんうんとうなずいている。
『竜の尻尾』による【平衡感覚】は効果が高いようだ。
「僕も【平衡感覚】が欲しいな」
「私が自前の【平衡感覚】が生えたら、泥舟兄ちゃんにあげるよ」
「尻尾かあ」
尻尾付き足軽というのはどうなのだろうか。
ドロップ品は、おにぎり、鉄棒、オークハムDX、オークセーターであった。
良く出るな。
そして、ねえさん、おにぎりを開けて食うな。
喰われる前にオークハムDXは救出した。
「オカカのでかいおにぎりだな」
「オークセーターがダブったね」
「集めてみんなで冬にオークファッションで潜ろう」
「やだっ!」
チアキに激しく拒否されてしまった。
中央通路を歩いていく。
まだ、レグルス陛下のブレスで通路が焦げているな。
陛下が詰まっていた通路に入りまっすぐ進む。
途中、アシッドスライムが出たのでさっくりとやっつける。
また赤いところてんがでた、あとはキュアポーションだ。
さすがのねえさんもところてんは開いて食べないな。
下り階段に出た。
順調だな。
下って、二十三階で小休止する。
水場をチェック、うん、良い味の水だな。
「あんまり魔物が代わりばえしないな」
「この階から、オルトロスがたまに出るよ、ヘルハウンドをお供に連れているらしい」
「ヘルハウンドホットドッグか! あと、オルトロスもホットドッグは出さないのか?」
「さあ? オルトロスはチョーカー出すけどね」
みのりが付けている奴だ。
ドッグ系は火耐性アクセサリーが出るのかな。
この迷宮のドロップ担当者はなんだか遊んでいるからなあ。
『ワンコ階だなあ、足が速いし、オルトロスは火を吐くし、面倒臭いぜよ』
『レアでケロベロスも出るぞ。ネームドじゃ』
『げっ、ケロちゃんはもっと下の魔物だろうに』
『じゃから、滅多にでぬわ』
ケロベロスかあ、犬系の中ボスだな。
「ネームドか、良い物出そうだな」
ナッツバーを出すひょうしに赤いところてんが出た。
前は食べないで換金所で売ったんだよな。
七十五円だった。
物は試しだ、開けて見よう。
「うわ、タカシ、それ食べるの」
「日本製だから」
「なんで赤いのかしら」
「おお、タカシ偉い」
タレを入れ、胡麻とノリをかけて箸で混ぜる。
お箸は何かのお弁当に付いていた割り箸だ。
口に入れる。
うわ、酸っぱい、が、悪く無い。
「うん、ところてん」
「どれどれ」
「どれどれ」
鏡子ねえさんとチアキが寄ってきて、ちょっとずつ食べた。
「あ、酸っぱいけど悪く無いね」
「赤いから何だが、ところてんだ」
一応、伊豆で作られたところてんのようだ。
ちゃんと天草使用と書いてある。
「外国でも同じ物出るのかしら?」
「ああ、国によって違うってさ、ナウルとか離島だと、近所のオーストラリアの物品が出るので、意外に喜ばれてるそうだよ」
「面白いなあ、外国の迷宮で変なドロップが欲しいな」
「アメリカの食品は大味そうね」
「すんごい甘いのとか出そうだな」
う、ところてんを食べた後にナッツバーは凄く甘く感じるな。
『アシッドスライムのところてんを食べているところを初めて見た』
『そうか、俺の所だと、邪魔だから結構食べるぜ』
『食料品は重いからなあ、ハムは持って帰るが』
『わりと私は好きよ、さっぱりして』
さて、初見の階だ、気を引き締めて行こうか。