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第219話 学校に行くとくつしたを見せろと騒がれる

「タカシくんタカシくん、みんながくつした見せろってうるさいよ」


 今日も今日とて学校へ行くとみのりがデデデと走り寄ってきてそう言った。

 俺は自分の靴下をみた。

 デモゾンで買った七足千百円のやつだ、セールで安かった。


「そっちの靴下じゃないよう、わんこのくつしただよう」

「しってた、くつしたはチアキのポシェットだな」

「キャシーちゃんに見せてそのまんまなのね」


 クラスメイトが俺達二人を囲んだ。


「こんど見せてくれようケロベロス」

「すっごく可愛いよねえ、くつしたくん」

「モフモフしたい~~」

「意外に凶暴だぞ、女子は噛まないけど、男子は噛むし」

「え、噛まれたら指とかちぎれない?」

「頭が良いからそこまで強くは噛まないけど、噛まれると痛いらしい、マイケルがギャーと言ってたからね」

「せ、世界一位のDチューバーが悲鳴を」

「くつしたくん、すごいわ」


 そういやマイケルって世界一位なんだよな。

 もはや近所のとっぽい兄ちゃんな感じになっているが。


「タカシくん、慣れるの早すぎだよ」


 人混みをかき分けて移動する。


「おうおう、犬くれよ」

「タカシばっかりずりいぞっ」


 また『ダーティペア』が難癖を付けてきた。


「自分で戦って出せよ」

「メンバーが集まらないから五階以下にいけねえ、イケメン魔法使いを紹介しろ、こらっ」

「イケメン射手でも良いぞっ、贅沢はいわねえっ」


 イケメンは条件なんだな。

 超贅沢だな。


「Dチューバーのマッチングサイトとか見たら?」

「ろくな奴がいねえっ」

「この前、マッチングアプリで大学生で金持ちの息子って魔法使いと会ったら、デブでキモかったから蹴飛ばして逃げて来た」


 いろんな冒険してるなあ。


 ゴンゴンと鈍い音がして『ダーティペア』がしゃがみ込んだ。


「だから、マッチングすんなって言ってるだろ、あぶねえし」


 後醍醐先輩の鉄拳制裁であった。


「だって、魔法使いっていうからー」

「あたしらインテリと付き合いねえのでっ、あ、そうだ、お寺で見た、デブの僧侶貸してくださいよう」

「ありゃ、まだ僧侶の修行中だし、『越谷組』の人だから貸せねえよ」


 越谷さんのパーティの僧侶?


「それって、鼻血を良く出しているデブの半グレじゃないですか?」

「ああ、越谷さんにオヤジが頼まれて預かってんだ。本堂の掃除とかさせてるぜ」

「頑張ってるんだ」

「ああ、越谷さん漢気あるからな、認められたくて修行に頑張ってるぜ」


 人の縁はいろいろと複雑に繋がっているんだなあ。


「しかし、もうオバケ階か、抜かされちまったなあ。タカシお前が率いる『Dリンクス』が第三臨海一のパーティだ」

「ありがとうございます。あ、先輩『ハイヒール』要りますか」

「え?」


 後醍醐先輩がきょどった。


「え、あ、ト、トロールから出たんだよな、あ、その、良いのか、おまえらは?」

「まだ僧侶いませんしね、良かったらどうぞ」

「わりいなああああっ、俺らも欲しくてトロール狩ってるんだけどよ、相手はつええし、なかなか出なくてなあっ」


 俺は収納袋から【上治癒ハイヒール】の聖典を出して後醍醐先輩に渡した。


「わりい、ありがとう、嬉しいぜ。バーターだな、お前らは何が欲しい?」

「レア楽譜スコアか、武技スキルの片手剣かバックラー、射撃スキルがでたらください」

「コモン物はあんまり要らねえようだな」

「『Dリンクス』だと、普通の物は出ますからね」


 東海林が寄ってきてそう言った。


「なにか良いの出たら渡すぜ、ありがとうな」


 後醍醐先輩は良い笑顔でそう言った。


 俺は自分の席に座る。

 うん、ドロップ運は良いパーティなんで、助かっている。

 みのりが吉田の席に座り、東海林とマリちゃんが椅子を移動させて近くにすわった。


「今日の狩りで、くつしたくんに会えるんですね~~、楽しみですっ」

「チアキが乗り回しているからね」

「良いなあ、ケロベロス、俺らも狙おうかな」


 後醍醐先輩がつぶやいた


「あ、なんだか馬鹿みたいに強いですよ、ネームドレアでも酷い実力でミノタウロスより強いらしいから、逃げるのが定石らしいです」

「そ、そんなに強いのか、やめとこう」


 まあ、しばらく二十三階は混むだろうから、当たらないと思うけどね。



「そうだ、東海林、藍田さんって何組? 【鎮魂ターンアンデット】が出たからあげるよ」

「うわ、新宮、気前が良すぎるぞ」

「【鎮魂ターンアンデット】も出たのか、そっちも良いなあ」

「オバケ階だと良く出るみたいですよ」

「二十五階かあ、トロールオーガ階を抜けて、犬っころ階を抜けた後だな、けっこう先だな」

「僧侶の後醍醐先輩が居るから稼ぎ階になると思いますよ」

「オルトロスが強敵だ、ケロベロスも出るしな」


 『Dリンクス』は割と楽に抜けたんだが、敏捷性が高い犬魔物の多い階は結構大変なんだよね。


「まあ、地道に伸ばしていかねえとな、死んだら元も子もねえし」

「うちも、レア呪文を貰いましたけど、頼りすぎると、他のメンバーの腕が上がらないし、地道に行かないと駄目ですね」


「前座前座~~♪ みのりさんとマリアさんの前座で歌える事になったけど~~♪ なんとなく屈辱~~♪」


 チヨリ先輩が歌いながらやってきた。


「チヨリ先輩は来週のライブに出るんですか?」

「そうよっ、他のアイドルグループの子も出るみたい。今や飛ぶ鳥を落とす勢いのリーディングプロモーションなのよ~~」


 派手なライブイベントになりそうだなあ。


「高橋社長張り切ってますよねえ」

「みのりさんもマリアさんに特訓されて仕上がって来たんですって、社長が褒めていたわ」

「そんなあ、えっへっへへ」


 みのりが顔をほころばせた。

 上手くやってるみたいだね、何よりだ。


「おーう、ホームルーム始めるぞ~~、後醍醐と北村は帰れ~~」

「へーい」

「はーい」


 宮川先生が来て、ホームルームが始まった。

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