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第220話 藍田さんに【鎮魂】の聖典をあげる

 さて、今日も今日とて放課後迷宮探検である。

 いつもの先生の付き添いなんだけどね。

 みのりと鏡子ねえさんはアイドル修業に出かけた。

 しかし、隔日で休みのはずなのだが、なぜ俺は毎日迷宮に居るのだろう。

 まあ、楽しいから良いけど。


 今日の面子は、『Dリンクス』から、泥舟に、チアキに、マリちゃん、あとくつした。

 『臨海第三ティーチャーズ』から、宮川先生、竹宮先生、望月先生。

 『オーバーザレインボー』から、東海林、藍田さん、樹里ちゃん、高田くんだ。

 意外に大所帯だな。

 地獄門前で集合して、地下三階まで降りて来た。

 リボンちゃんたちがどこからともなくふよふよと現れる。


「やあ、君がくつしたくんかあ、今日はよろしくね~」


 望月先生がにこやかに挨拶をした。


「バウバウ」

「やーん、くつしたくん可愛いっ」

「か、噛まないかな?」

「でっかいワンコっすね」

「ああ、大型犬は可愛いお」


 くつしたがなんだかもみくちゃにされて死んだ魚みたいな目になっていた。

 俺は収納袋から、泥舟とチアキに鉄砲を出して渡した、マリちゃんにはムカデ鞭だな。


『今日は先生の介護狩りか』

『あ、高田がいる、藍田ちゃんと樹里ちゃんも、レアだ。キスミーは仲間はずれか』

「くつした見ようって誘ったけど、犬には興味が無いって断られたお」

「最近ランニングとかして真面目よね、霧積くん」

「鏡子ねえさんにぶちのめされたお陰っす~」


 霧積も頑張ってるのか、何よりだね。


「宮川先生、今日は五階を廻ってみましょう」

「そうだね楽しみだ」

「麻痺したら、【麻痺解除ディスパラライズ】をしますよ~」

「これは麻痺液銃を誤射しても大丈夫ですね、竹宮先生」

「もう、誤射しないでくださいよ、望月先生」

「ですが、出来る事が増えると安心ですね」


 先生方はなごやかに笑い合っている。


「藍田さん、これをあげるよ」

「え、わっ、【鎮魂ターンアンデット】じゃないですか、良いんですか」

「東海林が【ドラゴンブレス】の魔法を覚えたから、オバケ階まですぐでしょ」

「ありがとうございます、新宮くん」

「オバケ階、腕がなるお」

「二十階越えたらD級っすねえ、高校生パーティにして上出来っす」


『現時点の高校生パーティで全国一番は何階突破だっけか?』

『大阪の『たこ焼き一番』が三十五階でトップだな』

『たこ焼きかあ、レア武器二本でブイブイ言わせてる所だね』

『リンクスも虹超も、すぐ追い越すさあ』


 『たこ焼き一番』か、一度会ってみたいなあ。

 でもDチューバーは全国大会とかは無いからね。

 早く攻略をするのを競う所でも無いしな。


 さっそく藍田さんは聖典を開いて【鎮魂ターンアンデット】を覚えた。

 いつ見ても、キラキラ光る粒子が体に吸い込まれるのは綺麗だな。


「早くオバケ地帯に行くっすよ」

「アンデットを昇天させたいわ」

「マミーに掛けるんだお」


 さて、出発だ。

 皆でどんどん狩りをしながら五階を目指す。


 望月先生の麻痺液水鉄砲でゴブリンや角兎をどんどん麻痺させて、宮川先生と竹宮先生がどついて、マリちゃんがムカデ鞭でひっぱたくという、戦略はあまり関係無い狩りだね。

 くつしたが退屈そうだ。


「チアキと泥舟で六階に行くか?」

「そうだね、行くかい、チアキちゃん」

「行こう、くつしたもそっちのほうが楽しいよねっ」

「わおんっ」


 泥舟もチアキもレベルが高くなってるから、魔物は問題ないのだが、半グレだよなあ。


「半グレ出たらどうする?」

「殺す!」


 また鏡子ねえさんの悪影響受けてるなあ。


「まずは説得するよ、それで駄目なら……、くつしたに火を吐いてもらう」

「【気配消し】の稽古だから、見つからないのが本式」

「スニーキング狩りっすか、あーしも行っていいっすか、チアキ師匠」

「よし、三人で【気配消し】の修行をしよう」


 あ、そうか、泥舟も銃士ガンナーだから【気配消し】が生えやすいんだな。


「くつしたも気配消しだ」

「わおん?」


 魔物はスキル生えるのかな?


「先生方も五階に慣れたら六階だから、先行して状況を見てきてくれ」

「解ったよ、愚連隊の大きいのが幾つかつぶれたから昔とちょっと違うだろうね」

「そういう事」

「じゃ、行ってくる、またな、タカシ兄ちゃん」


 シュタッと手を上げて、チアキはくつしたに乗って去って行く。

 泥舟と樹里ちゃんがそれを追いかけて行った。


「ああ、くつしたちゃんが行ってしまう」


 マリちゃんが悲しそうな声を出した。


「さあ、我々は狩りをしよう」

「そうですね」


 先生方も動きはじめた。


「うわあ、ムカデだ~~」

「ひゃあ、ど、どうすれば」


 マリちゃんが据わった目でムカデ鞭でセンチネルセンチピードを打った。

 お、毒が入ったな。

 というか、毒持ちなのに毒が入るのか。

 望月先生が麻痺液水鉄砲を打った。

 センチネルセンチピードは麻痺をして痙攣している。

 宮川先生が頭を剣でかち割った。


「はあはあ、ムカデはコワイねえ」

「麻痺液が効きますねえ」

「十六階で麻痺液付けにしたら安全にオーブを触れないかしら」


 うーん、天井の分と、壁の分のセンチネルセンチピードが床に落ちて痙攣してるのか、結構積もって歩きにくいんじゃないかな。

 死んでは無いから再ポップはしないだろうが。


「そんな時は東海林くんの【ドラゴンファイヤー】だねっ」

「ああ、部屋の温度はそう簡単に下がりませんから、お勧めはしませんよ」

「駄目かあ」


 【ファイヤーストーム】とかで焼き尽くすのはそれが問題なんだよね。

 かといって【氷の嵐】で凍えさせると再ポップするし。

 十六階、ムカデの間は難しいな。


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