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東京九龍魔境都市
東京九龍魔境都市
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現代ファンタジー都市ファンタジー
2025年04月14日
公開日
3.7万字
連載中
腐臭を際立たせていた。浮浪者の老人は、ゴミ山の上で泥酔して眠るサラリーマンの財布を盗み取り、束の間の幸運に酔いしれる。だが、その財布の中に潜んでいたのは、九龍の呪物――梵字の黒巾着だった。 黒い靄に絡め取られた老人の肉体は、快楽の果てに無惨に溶け落ち、命は呪物に喰われた。老人を罠に嵌めたのは、他ならぬサラリーマン自身。九龍の掟を知らぬ者には死あるのみ――男はそう言い残し、巾着を懐に帰路へつく。 だが、街角には一人の少女が立ち尽くしていた。濡れそぼった制服姿、曇天を見上げるその瞳は、失われたものを探し続ける旅人のようだった。サラリーマンは知らぬふりで通り過ぎようとするが、背後から降りかかる女の声に足を止める。 絶世の美女――マリグナント・イェラ・スエーガー。九龍最強の魔人・掃除屋の助手であり、男はその名を耳にした瞬間、死を恐れて逃げ出した。 残された少女に歩み寄るマリグナント。少女は仇討ちのため「掃除屋」を探していた。冷たい夜の街に交わされた短い言葉の応酬。その末に、少女はマリグナントに導かれ、魔人たちが支配する異界――九龍へと足を踏み入れるのだった。 ※趣味全開で書いた小説です。

 キリキリと、指を絡めて糸手繰り


 キシリキシリと鳴り響くは、骨が軋む琴線歌


 手繰る指をくるりと回し、肉が弾けて血が滴り


 ばぁと開けば手足が飛んで、首落ちた


 逢魔が来たりて魔人は笑う。人の死肉を貪り喰らい、糸の魔人は血溜まりにて踊り狂う。

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