バスに乗ってリーディングプロモーションの支社に戻ってきたね。
山下さんから警備計画書のプリントアウトを各自貰って解散だ。
「お昼どこか行くか、ヒデオ」
「いこういこう」
ムラサキさんとミカリさんが昼食にさそってきたね。
同じ護衛仲間だからアイドルと一緒の時のように高いお店とかじゃなくて街中華とかだからいいんだけどね。
「天下一品に行こうぜ」
「ああ、あの濃い京風ラーメンですか」
「そうそう、時々無性に食べたくなるんだよな」
構わないけどね。
「俺も一緒に行っていいですか」
「おお、良いぜ三郎太」
「よかった」
三郎太くんははにかんで笑った。
四人でリーディングプロモーションの支社を出て、天竜の横の天下一品に入る。
こってりラーメンとチャーハンのセットを頼んだ。
ここのラーメンはどろっとしていて独特の味わいなんだよね。
たまに食べたくなる、というムラサキさんの気持ちは解る。
さっぱりしたあっさりラーメンもあるんだけど、まあ、天下一品に来たらこってりラーメンでしょう。
「みなさんは午後は?」
「特に用事は無いなあ、暇だったら『モグ』見せろよ、ヒデオ」
「そうそう、凄く可愛かった、『モグ』くん」
「いいですけどね」
今、『モグ』は森の奥の土中で休んでいるな。
こちらの接続に気が付いて、ちょっと喜んでいるな。
(あとで行くからね)
《キュキューイ》
喜んでる喜んでる。
ラーメンとチャーハンがやってきた。
他の人のお料理も揃ったな。
うんうん、うまうま。
ずるずる。
「だけど、角兎とか、無制限にテイムできるのか?」
「うーん、たぶん、あと三匹くらいかなあ、有限みたいな感じだよ」
「私も挑戦してみようかな、従魔とか良いよね」
「私もネズミとか目立たない奴が欲しいなあ、偵察に便利そうだ」
「俺はネコチャンとか欲しいですよっ」
三郎太くんは顔に似合わず可愛い物好きっぽいね。
天下一品での昼食を終えて俺達は店の外に出た。
「じゃあ、迷宮行くかー」
「そうそう」
俺達は四人で陸橋を渡り、駅前の商業施設にある地獄門をくぐった。
今日は休日なので、わりと混んでいるね。
護衛さん達も俺も、ちゃんとした装備はしていない。
わりと私服だな。
ムラサキさんがナイフを挿しているぐらいか。
すたすたと二階に下りて、さらに階段を使い三階の草原に下りる。
どこからか、カメラを持ったピクシーさんたちがふよふよやってきた。
無愛想ちゃんも来たね。
『ヒデオはアイドル狩りじゃないな』
『装備が甘いな、またテイム実験か?』
「いえ、今日は護衛仲間が『モグ』を見たいと言ってきたので」
『『『『おお』』』』
常連リスナーさんたちが声を掛けてきた。
休日だから結構アクセスがあるね。
草原の地面がモコモコ動いて『モグ』が顔を出した。
『キュキューイ』
『『『『『モグ』キター!!』』』』
「うわ、ちっちぇえ、可愛い!」
「おー、よちよちよち」
ミカリさんが猫撫で声を出したが『モグ』はまっすぐ俺の元に来た。
よーしよーし、寂しかったかい。
俺は『モグ』を抱き上げてなでなでした。
土の良い匂いがするね。
「わあ、抱かせて抱かせて」
「あたいもあたいも」
「はいはい、優しく抱いてくださいね」
俺は『モグ』をミカリさんに渡した。
「うっはー、カワイイでしゅねえ、君~~」
「うわ、可愛くてあったけえなあ」
わりと女性陣に『モグ』は大好評だなあ。
「ヒデオ、テイムってどうやるの?」
「うーん、こう虹の橋を心と心の間に架けるといいますか」
「よくわからねえなあ」
なんというか、日頃言葉にしない感じの心の一部を使うので表現が難しいね。
三郎太くんも『モグ』を見つめてうっとりしていた。
「ネームドのモグラ獣良いですねえ、可愛い」
「わたしも欲しい、次はいつ頃でるんだろう?」
「ネームドの発生は一日一回ぐらいか?」
「そういう噂ですけどね」
そうなんだ、俺は迷宮の事をちっとも知らないからなあ。
急いで勉強はしてるのだけど、なかなかおぼつかないよ。
「おい、お前、それ、ネームドの魔獣だなっ!! 俺によこせ」
「「「「……」」」」
ガラの悪そうな配信冒険者が声を掛けてきた。
半グレ、っぽいかな。
ミカリさんが『モグ』を抱いたまま立ち上がった。
「もういっぺん、言ってみろ」
「な、なんだ、このデカ女っ!」
「おい、やめろ、リーディングプロモーションのプロ護衛だ」
「ネ、ネームドの魔獣は俺にも倒す権利が……」
俺はミカリさんの前にでた。
「やめましょうよ、こんなつまらない喧嘩」
「なんだとーっ!! てめえっ、寝癖オヤジのくせにっ!!」
「おいっ!! ごめんなさいっ! こいつもの知らずなんですっ、ヒデオさんっ!」
隣の『
剣士くんはバランスを崩して倒れた。
「ゴリラだけは、透明ゴリラだけは勘弁してください」
「ひ、ひいいっ、透明ゴリラのヒデオ!!」
「うん、いいよいいよ、人には間違いがあるからね、冒険頑張ってね」
「は、はいっ、失礼しますっ!」
配信冒険者パーティーは逃げるように下り階段の有る方へと逃げていった。
「勝手に出しゃばってごめんなさいね」
「いいいい、ヒデオさんは正しい」
「喧嘩する価値もねえ奴らだしな」
「ヒデオさんはやさしいなあ」
三郎太くん、キラキラした目で見るのはやめてよ。
『ウホウホ』
『ウホウホ』
『キュイキュイ』
従魔さんたちにも結構好評のようだった。