というわけで、また迷宮の三階にやってきました。
虹の橋をたどって『モグ』を探すと、意外と近い所にいて大急ぎでやってきた。
「きゅきゅーっ!」
「「ぎゃああ、かわいいっ!!」」
「おお、これはなかなかだな、ヒデオ」
カスミちゃんとユカリちゃんは一撃で落ちた。
ケインさんへの感触もなかなかだね。
「テイムしたいテイムしたい、この子テイムしても良いですか」
「二重テイムとかどうなるんだろうか」
「どうなるんでしょうねえ」
ユカリちゃんが『モグ』を抱きかかえて放さんぞ、という勢いであるよ。
カスミちゃんも目を細めて、『モグ』をナデナデしているね。
ふよふよとそれぞれのカメラピクシーさんたちがやってきた。
無愛想ちゃん、こんにちは。
相変わらずムスッとしているね。
『ヒデオ、アイドル狩り、かと思ったら違うな、『モグ』のお披露目かあ』
『『モグ』は可愛いからな』
『せやせや』
リスナーさんたちもやってきたな。
「ユカリちゃん、脳の中に虹の橋を思い浮かべるんだ」
「え、えーとえーと」
『今日もヒデオのふんわりテイム教室だ』
『虹の橋ってなんやねんな』
ユカリちゃんの脳の中で、虹の橋が構築されていきそうだけど、最後の方で組み上がらない感じだなあ。
「む、むずかしいです」
「もうちょっとなんだけどなあ」
「私は私は」
「カスミちゃんはあまり才能無いみたいだよ」
「えーー」
「頭の中に、虹の橋? なんだろう……」
お、ケインさんができかけている。
意外な才能かもっ。
が、どうも最後で崩れて脳の外には出ない感じだなあ。
不思議だなあ。
「とりあえず、俺が『
「うーん『モグ』くん、私の家の子になりなさいよー」
「きゅーきゅー」
ちょっと嫌がっているねえ。
とりあえず、『モグ』を連れて厳岩師匠の居る所まで移動する。
今日もブルーシートに腰掛けて霧積君の素振りを見ているね。
「おはようございます、師匠」
「おお、来たなあ、ケイン。おおっ、カスミちゃんにユカリちゃん、こんにちは」
「こんにちは~、厳岩師匠~」
「おお、剣術の先生かな?」
「そうだよ、あの『Dリンクス』のタカシくんのお師匠さまでもあるんだ」
「「おおっ!」」
「ははは、タカシは人気者じゃな」
厳岩師匠がお茶を出してくれたので、カスミちゃん、ユカリちゃんと一緒に座って、お茶を飲みながらケインさんの修行を見る。
だんだんと、剣の振り方が上手くなってきているね。
「あー、ケインさんも真面目にやってるなあ、焦ってしまうなあ」
「焦っちゃだめだよ、カスミちゃん」
「そうだねえ」
そう言いながら二人はお茶をすすった。
元は同じ事務所に居たからか、仲が良いっぽいね。
『モグ』は、地面の中に潜ってあちこちから顔を出していた。
「可愛いいのう、ヒデオさんのペットかい?」
「従魔ですけどね、実験でテイムしたら出来ました」
「そうかそうか、魔獣の仲間とかは良いのう」
厳岩師匠は『モグ』を抱きかかえて、目を細めて言った。
のんびりした雰囲気が広がるね。
「迷宮の三階は良いわね」
「カスミちゃんは、十階越えてるんだっけ」
「越えてるわよー、ムカデ部屋も越えたし、二十階フロアボス前ぐらいまでね」
「私もオバケ階に行けるように、二十階は越えたいですね」
「二十階攻略の時は私も連れて行ってもらおうかなあ」
「そうですね、編成が合えば、山下さんに相談してみますよ」
「ありがとう、助かるわ」
霧積君が素振りの手を止めた。
「アイドルの人も、階数上げ無いといけないんですか」
「そうよー、で、パーティー組む相手とか探せなくて大変なのよ」
「アイドルさんと戦えるなら、すぐ集まりそうですけど」
「いやあ、やりたい人は一杯いるんだけど、ちゃんとした人はなかなかね」
「ファンは豹変するからコワイんですよー」
「そういう物ですか」
霧積くんはなんだか侍って感じで渋い戦士さんだね。
真面目な求道家っぽい感じがする。
ケインさんと霧積くんで組み稽古が始まった。
お互いに型を打ち合って技を覚える物っぽいね。
気合い一閃で相手に当たるすれすれで止める。
なかなか見応えがあるね。
霧積くんはなかなか技が綺麗だな。
「霧積くんはどこかパーティーに入ってるの?」
「入ってます『オーバーザレインボー』ですよ」
「「「おお」」」
「ゲッター高田くんの居る」
「池の水を全部抜く魔法を使う」
「なかなか有名パーティだなあ、惜しいなあ」
「高田君と一緒に護衛に来てよっ」
高田くんって誰?
「アイドルさんの護衛ですか、ちょっとリーダーの東海林と相談してみますよ」
「今、『オーバーザレインボー』はどこよ?」
「来週のライブの後の日曜日に、二十階予定ですよ」
「「おおっ!!」」
「ふむ、『オーバーザレインボー』と、アイドル組と、ヒデオで組んでもいいかもなあ」
「ライブの次の日かあ、『サザンフルーツ』は無理かなあ」
「あー、それはあるかもね」
それでも有力なパーティーが二十階を攻略するなら相乗りしても良いかもしれないな。