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異世界転移したニセ幼女は、大魔導師様(ライバル)を救う為に頑張ります!
異世界転移したニセ幼女は、大魔導師様(ライバル)を救う為に頑張ります!
デコスケ
異世界恋愛ロマファン
2025年04月14日
公開日
6,338字
連載中
──これは、愛する人を救うために、世界と時間を超える主人公の物語。 子供の頃から義母に虐待されていた私、平沢圭子は心身ともに疲れ果てていた。 そんなある時、私は謎の白い光に包まれ意識を失ってしまう。 そして目覚めた場所は、見知らぬ森の奥で。 どうやら異世界に転移したらしく、しかもその影響か私の身体は子どもになっていたのだ。 私は偶然、森で出会った冒険者のヤースコさんに拾われ、成り行きで森の奥に住む大魔導師の元へ行くこととなる。 そうして対面した大魔導師エドヴァルド様は、実年齢と合わない綺麗な顔をした若い男の人で──。 初対面なのに、何故か私との再会を喜ぶエドヴァルド様。 どうやらボケてきたのでは、と噂されている通り、幼くなった私を想い人の「カティ」と勘違いしているらしい。 異世界で行くあてのない私は、ヤースコさんの提案でエドヴァルド様のお世話係兼弟子として、屋敷に置いて貰うことに。 私を「カティ」として優しく扱うエドヴァルド様に戸惑いつつ、魔法を教えてもらいながら、楽しく充実した日々を過ごしていたある日、私の運命を大きく変えてしまう出来事が起こってしまい……? *週2回(月・木)18時に更新予定です* お付き合いいただけたら幸いです。 どうぞよろしくお願いします。

01 プロローグ


 ──私、平沢圭子は搾取子だった。


 搾取子とは、幼い頃から親に洗脳され金銭を搾取される子供の事を指す。


 幼い頃から親の言いなりで、当たり前のように家事を押し付けられ、自由な時間を奪われても文句一つ言えない──私はそんな子供だった。


 そして高校生になった今年から、私は家事全般に加え夜までアルバイトする事を余儀なくされている。


 給料のほとんどを取り上げられ、家事を強要されても大人しく従っているのは、せめて高校は卒業したいと思ったからだ。


 この家を出たくても世間体を気にする義母が許さないだろうし、未成年だと部屋を借りるのも難しい。だから高校を卒業した後は、どこか社員寮がある企業に就職して、自分の生活基盤を整えようと密かに思っている。


 ちなみに私の家は決して貧乏ではない。

 父は外資系の企業に勤めていて、年中海外を飛び回っている。だから年収はかなり多い方で、むしろお金持ちの部類に入ると思う。

 なのに私が搾取され続けるのは、父の再婚相手である義母が私の事を心底嫌っている事と、好きな事をするためのお金が欲しいからだ。


 私を産んだ母は、私が小さい頃に父と離婚している。

 父から離婚の理由は母が育児ノイローゼになったから、と聞いた。

 私が生まれて二年が過ぎた頃、母にその兆候が瀕著に現れる様になったそうだ。


 そして私が五歳になった頃、父が出張から帰ってみれば、家は荒れ放題の上、私は栄養失調で死にかけ、その影響で以前の記憶を失ったらしい。

 だからなのか、私は実の母のことをほとんど覚えていない。


 父はそんな風に病んでいく母を見ていることが出来ず、母のためにも離婚を決意したと言う。


 ──それから父は再婚し、私が七歳の頃に義理の母親が出来た。


 しかし義母は初めから私を毛嫌いしており、必要最低限の世話しかしてくれなかったけれど、父の前だけは良い母親を演じていた。だから父は私と義母は仲良くやっていると思い込んでいる。


 そして父は元々仕事人間だった事もあり、家庭の事は義母に任せて仕事に打ち込んでいて滅多に帰ってこない。


 実際は私が家のことを全てやっていると知れば、どんな顔をするだろう。


 ちなみに義母はそんな生活でも父の稼ぎが良ければ気にしないらしく、毎日自由気ままに生活している。


 朝早く起きて軽く掃除をした後は洗濯物を干し、朝食とお弁当を作って学校に向かう。学校が終わると急いで家に帰って洗濯物を取り込み、夕食を作った後はバイト先へ向かい、時間ギリギリまで働いて家に帰る。


 ──それが、私の日常なのだ。




* * * * * *




 まだ未成年の私は午後の十時までしか働くことが出来ないため、時間になればきっちりとタイムカードを通さなくてはならない。


「お疲れ様です、お先に失礼しますね」


 帰り支度を済ませた私は、バイト先の先輩達に挨拶をする。


「あら圭ちゃん、もう上がり? お疲れ様、気をつけてね」


「圭ちゃん帰り大丈夫? 人通りが多い道で帰るのよ?」


 先輩達はみんな親切で、とても私に良くしてくれる。

 そんな良い人達に囲まれているおかげで、私はバイトが全く苦にならずに済んでいる。


「ホントに圭ちゃん可愛いんだから、ナンパされても着いて行っちゃ駄目よ?」


「お母さんがイギリスの人だっけ? 圭ちゃんはお母さん似なのね、きっと」


 ──お母さん似と言われ、私はドキッとする。


 みんなが言うように、私の母はイギリス人で、母に良く似ていると父にも言われた事がある。五歳以前の記憶が無いので、産みの母の顔を覚えていないけれど、私は母譲りの明るい茶色の髪の毛と、光の加減で緑色に見える瞳をしているそうだ。


 ちなみに私の名前は日本通の母が名付けてくれたらしい。

 今どきの名前じゃなく古風な名前だから、見た目に合っていないとよく言われるけれど、それでも私はこの名前を気に入っている。


 その母は今、外国で新しい家族と幸せに暮らしていると聞いた。

 心を病んでしまった母が、いつも笑顔でいてくれたら嬉しいな、と心から思う。


 バイトの先輩達に心配されつつ帰路に着く。

 私はアドバイス通りに大通りの明るい道を歩きながら、これからの事を考える。


(家に帰ったらお風呂に入って掃除して、洗濯機のタイマーを設定して……)


 まだまだやる事がいっぱいある事にため息を吐きながら夜空を見上げると、綺麗な満月が浮かんでいるのが見えた。


(確か今日はブルームーンなんだっけ……)


 ブルームーンは月が青く見える現象ではなく、1ヶ月に2回満月が見える現象だ。二・三年に一回起こる珍しい現象で、”ダブルムーン”とも言うらしい。


 吸い込まれそうなほど綺麗に輝く月を見上げていると、胸の奥深くから強い想いが湧き上がって来た。


 ──あの家じゃない、何処か別の、温かい場所へ帰りたい──……!


 何故かその想いはずっと前から、私の心に在り続けている。

 帰る場所なんて無いはずなのに、それでも私の心が──魂が、早く帰れと急き立てる。


 この想いは一体どこから湧いてくるのだろう……? いくら考えても、答えは見つからないままで。


 そんな事を考えていたからか、いつの間にかぼうっとしていたらしい私は真っ白な光に照らされて我に返る。


(え!? 何!? まさかトラック!?)


 うっかり赤信号を渡ってしまったのかと思ったけれど、真っ白な光はトラックの光では無かったらしく、更に強くなった光が私の身体を包み込む。


(えっ!? トラックの光じゃない? うわっ! 眩しい──!!)


 ──そうして、何が起こったのかわからないまま、私の意識は真っ白な光に飲み込まれたのだった。




* * * * * *




 真っ白い光に飲み込まれて、気絶したらしい私が目覚めたそこは、全く見知らぬ場所だった。


(……あれ!? どうしてこんな場所に……? まさか眠っている間に運ばれた?)


 何故か私が目覚めた場所は、森の中だったのだ。


(家の近くにこんな森なんて無いし、車でここまで運ばれたとか? でも私以外に人はいないし……)


 もし誘拐だとしたら森の中に放置なんてしないだろうし、誘拐犯が近くにいるはずだけれど、人の気配は全くしない。


 何かされていないかと自分の体を見た私は驚いた。


「えっ?! うそ……っ?! あれっ?! 声までっ?!」


 手が子どもの手のように小さくなっていて、思わず出た声も明らかに高い。


(まさか……! 私の身体、子どもになってる……?!)


 いつも着ているTシャツにジーパン、カーディガンがものすごく大きく、ブカブカになっている。しかもジーパンはめちゃくちゃ丈が余っているし、脱げたスニーカーが足元に転がっている。


(一体どうなっているの……!? 夜の歩道を歩いていたはずなのに、太陽が昇ってるし……。そんなに寝ちゃってたのかな……?)


 私はスマホで時間を確認しようと、持っていたカバンが落ちていないか周りを見渡したけれど、どうやら近くには落ちていないようだ。


 型落ちで安く買ったとはいえ、私にとっては超高価なスマホと、ほとんどお金は入っていないとは言え、財布を失くしてしまったのはとてもツラい。

 財布にはキャッシュカードや学生証が入っているのに……!


 私はカバンが失くなったショックでしばらく落ち込んでいたけれど、とりあえず今の状況を考えてみることにした。


 突然光に包まれて、気が付いたら森の中……そして子供の姿になった私。

 これってつまり……。


(……まさか、憧れの異世界転移──!?)


 私は導き出した一つの可能性に興奮する。

 学校の友だちから借りた小説の中に、異世界転生や転移ものがいくつかあり、家事の合間に読んでいた私はすっかりハマっていたのだ。

 きっとそれはある種の現実逃避だったのだ、と今ならわかる。


(異世界転移したのなら、私にも何かすごい能力があったりするのかな?)


 小説の中では主人公が自分のステータスを見たり、持っているスキルを試したりしていた。

 もしかして私にもチート能力があるかもしれないと思うと、試さずにはいられない。


 私はドキドキしながら、「ステータスオープン!」と張り切って言ってみた。

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