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第零章 03話『空っぽの心』

 左腕に感じた猛烈な痛みで目が覚める。何が、一体……どうしたんだ、ウチの体。


 今日は確か、家族とピクニックに行く予定で、その途中までドライブしてて、それから、それから……確か、目の前に大型のトラックが突っ込んできて──



「……! 英雄!! 亜瑠美!!」



 事態の深刻さを理解したウチはとっさに助手席と後部座席を確認する。でもおかしいんだ。綺麗なはずだった蒸気自動車は変な方に折れ曲がり、助手席は吹き飛んで無くなってて、英雄はいない。そして、後部座席は──


「あ、亜瑠美……亜瑠美!!」




 トラックの残骸に押しつぶされ、無くなっていた。残骸の下から、かわいらしい手が見えていて。




「亜瑠美ぃ!!!」


 席を立とうとするが、ウチの左腕が押しつぶされた車体にめり込んでおり、身動きが取れない。腕の痛みはこれが原因か。原型をとどめないほど潰されているみたいだが、無駄に肉だけ繋がって、ウチが動くのを妨害している。


 こんなに、こんなにウチの腕がぐちゃぐちゃになってる。腕が、ウチの腕が。この、圧力を、全身に浴びたら。後ろにいる、亜瑠美は、腕以外が、ガレキに挟まって……



「ああああ!!!」



 ウチは身じろぎしながら、何とか腕を引きちぎろうと身もだえる。稼働魔力も使っているが、筋が付いた肉は中々引き裂けない。



「切れろ、切れろよ!! 今ウチが動かないでどうする!! 千切れろよおおお!!」



 目の前の情景が信じられなくて、無事だと確かめたくて、ウチは必死に身じろぎをする。そんな折、頭の中で何かがはじける感覚があった。と共に、筋力も魔力もすさまじい力を発揮し、一瞬で腕が引きちぎれる。後で気が付いた事だが、これが火事場のバカぢから。筋力と魔力のリミッター解除の瞬間だった。



「がああああ!」



 凄まじい激痛が襲うが、痛覚を遮断する魔術を使う時間も惜しい。ウチは急いで後部座席に駆け寄る。でも



「嘘、嘘だ……」




 そこには、つぶれてぐしゃぐしゃになった、大好きな、娘がいた。




「亜瑠美ぃ……」


 瓦礫から突き出されている手を握る。もう、少し冷たい。あんなに暖かかった、可愛い亜瑠美の手は、もう、二度と動かない。



「あああ、あああああ!!!!」


 抱きしめようとして、亜瑠美をこんな狭いところから出してあげようとして、ウチは亜瑠美の手を引いた。そしたらその手は腕もろとも、簡単に千切れた。千切れてしまった。亜瑠美の大切な体が。千切れてしまった。


「うあ、あぁぁぁ」


 ウチは言葉にならない音を発して、その場に倒れこむ。亜瑠美の手からは血が滴っている。生暖かく、どろりとした血液が。

 亜瑠美の血で、ウチの服が赤く彩られていく。でも全然汚いなんて思わなくて。むしろその血液は綺麗で、キラキラしてて、愛おしくて。大好きで大好きで大好きで。


 腕を抱え込み、その場でうずくまる。頭が混乱している。これは夢ではないのかと、さっきからずっとこの光景を否定したい気持ちが抑えられない。そうだよ。夢だよこれは。だってさっきまでウチはあんなに幸せで、今日は待ちに待ったピクニックの日で、ウチらはこれから綺麗な丘でいっしょにサンドイチを食べる予定で。あんなに一生懸命、おいしくなるように作ったお弁当があるんだ。それを皆で食べるんだ。だから……


「あ──」


 足元には、そのお弁当が、サンドイッチ達が、ぐちゃぐちゃになって転がっていた。これではもう、おいしく食べられない。折角、頑張って作ったのにな。亜瑠美に、英雄に、喜んでもらおうと思って作ったのにな。



「英雄……」


 そうだ、英雄……。亜瑠美は、ダメだった。認めたくないけど、ダメだった。でも英雄は解らない。助手席は吹き飛んでいて、最愛の夫の姿はそこにはなかった。どこかにいて、生きてるかもしれない。探さなきゃ。大好きな英雄を、探さなきゃ。



『詩絵美……ちゃん……』


「英雄!!」



 思念が飛んでくる。どこかに、どこかに英雄がいる。生きてる!! どこだ、どこにいるんだ!!


 ウチは慌てて周囲を捜索する。英雄はすぐに見つかった。そう遠くない場所に倒れていた。



 ───上半身、だけで。



「英雄!!」


 ウチは慌てて駆け寄る。斜めに千切られた体には右腕しかついておらず、全身は血と泥に覆われていた。でも、大丈夫。大丈夫だ。英雄は警察官。特に現場の刑事だ。魔力のコントロール術は優れているし、自分で止血もしてる。

 このまま病院に連れて行けば助かる。大丈夫だ。ウチは自分に言い聞かせながら、英雄を楽な姿勢にしてあげる。とっくにネットを通じて救急隊員には連絡した。


「大丈夫だからな。今、救急隊に連絡した。しばらくしたら助けが来るから!!」


 ウチは片方しかない英雄の手を必死に握る。英雄の血と、ウチの血と、亜瑠美の血……それらと泥が混ざり合いドロドロになったお互いの手を。その手には温かみがあって、英雄がまだ生きている証を証明してくれる。

 傷は心臓まで到達していそうだ。でも英雄なら、魔力で血液をコントロールできる。現に腕にはしっかりとした力が帰ってくる。亜瑠美とは違った。亜瑠美とは……



『亜瑠美、ちゃんは?』


 英雄が最愛の娘の安否を聞いてくる。今はとにかく安心させないと。ウチは必死に表情に出さない様に気を付け、嘘をつく。


「大丈夫だ。気を失ってるけど、無事だよ。今は自分の治療に専念して。ウチもサポートするから。さっきから何か魔力がやたら強く出せるから、応急処置も出来るよ」



 亜瑠美が無事だと伝えた際に、心の中の何かが壊れるような痛みを味わう。でもウチの痛みなんか知った事か。ウチはこれ以上大好きな人を失いたくない。絶対に、英雄を失いたくない。


『詩絵美ちゃん、ごめん……救急隊来るまで間に合わないや……そろそろ魔力使うのも疲れて来ちゃって』


「大丈夫! 今のウチは何か魔力が凄いんだ。英雄の治療を補佐出来る」


 ウチは英雄の体をスキャンし、血流を促す。心臓が動いてなくても、英雄自身が魔力を使えなくても、これで何とかなるはずだ。


『ダメだよ、詩絵美ちゃん。それはリミッター解除だ。使いすぎると君の命が』


「ウチの命より、英雄の方が大事なんだよ!!」



 ウチは叫んでいた。魂から来る叫びだった。そう。ウチなんかより大事なのだ。ウチ自身が、もう失いたくないのだ。亜瑠美はもういない。その上英雄もいない今後の人生なんて、考えたくないのだ。だから、頼むよ、神様……いるなら、英雄を助けて。父さん、母さん、ナトくん、力を貸して……。お願いだよ。



『大丈夫。大丈夫なんだ詩絵美ちゃん。そんなに悲しまなくても……。バニ様に、連絡して。楽園への、脳仕掛けの楽園への、アクセス権を……。ボクはもう、正確なイメージを渡す魔力も残って無いから……バニ様から、もらって……』


「楽園?? なんのことか分かんないけど、余計な魔力使わなくていいから! ウチに任せて……っ!」


 そう言ったそばから、激しい頭痛に襲われる。一瞬集中力が切れて、英雄の血流が止まってしまう。


『……』


 英雄の顔が蒼白になっていく。まずい、ダメだ、集中して英雄の延命を。救急隊が来るまで持ちこたえれば、助かるんだ。


『しえ、み、ちゃん……もう、いいから……救急隊は、すぐには来ない……間に、合わない、よ』


「良くない! 良い訳ないだろ!!」



 そう言って強く手を握るウチを、英雄は思いっきり突き飛ばした。──え?



『バニ様に、連絡を……楽園で待ってる』


 そう言って英雄は動かなくなる。何で……



 急いで駆け寄るも、もう英雄は助からない状態になっていた。何が、一体……脳仕掛けの楽園? バニ様??


 訳が解らない。頭が混乱する。さっきから頭痛が止まらない。あ、鼻血が──



 ウチの意識は、そこで途絶えた。



   * * *



 消毒液の匂いで目が覚めた。

 ウチの視界に入ってきたのは、真っ白で無機質な壁だった。これは天井か? ウチはいったい……


「!」


 思い出し、急いで体を起こす。と同時に、激しい頭痛と腕の痛みに見舞われる。


「安静にしてください!」


 白衣を着た青年に押さえつけられる。……ここは、病院か? 部屋全体が白で統一された、無機質な部屋が目に入る。近くにある窓からは緩やかな赤い日差しが差し込んでいる。夕方か。


「あなたは駆け付けた救急隊に救助されました。魔力をリミッター解除して酷使した影響で、脳に多大なダメージが出ています。内部出血等は治療しましたが、まだ今は安静に。傷はふさがってませんから。腕もしばらく傷むでしょうが、現在軽い魔力障害になってると思われます。脳が回復しきるまで恐らく魔力は使えませんが、薬によって痛みは和らげますのでご安心ください」


 医者であろう青年から、ウチの状態を聞く。そんな事、そんな事はどうだって良い。



「ウチの、家族は……」



 医者は下を向いてつらそうな顔をする。ああやっぱり、もう、家族は……



「あああ、ああああ……」



 ウチは横になったまま、涙を流す。医者が見ているのも気にせず。ただただ、涙が。


 空っぽ。空っぽだ。ウチの心は。大事なもの、ウチの心を占めていた大事なものが全部なくなってしまった。もう、何をよりどころに、生きれば……。


 こんなはずじゃなかった。今日は楽しいピクニックになるはずで。久しぶりに英雄とイチャイチャ出来るはずで、亜瑠美を存分にからかえるはずで、充実した、家族の時間になるはずで……。

 ナトくんを失って、両親を失って、沈んでいたウチに、最高の幸せが訪れたと。ウチはこのために生まれて来たのだ。この幸せを噛みしめるために。この幸せが終わるなんて考えてもいなくて。ずっとずっと、続くと思ってて。なのに、なのに……



「ですがご安心下さい。あなたの様な心に傷を負った方のための治療プログラムが、我が国にはあります。審査が必要なものなのですが、あなたのケースなら確実に許可は下ります。脳が回復し、魔力が使える様になる頃にはあなたの心は救われます」


 医者が妙な事を言う。救われる? ウチの心が?? 英雄も、亜瑠美もいないこの世界で?? 何を言ってるんだこの医者は。どんな治療プログラムだよ。


「ともかく、今は安静に。傷を治す事に集中して下さい。大丈夫です。あなたは救われます。それまでしっかりと生きて下さい」



   * * *



 それから1ヶ月程、ウチは病院で生活をした。ウチが絶対安静だったから、英雄と亜瑠美の葬儀には出られなかった。葬儀はあまり会った事の無いウチの親戚や、亜瑠美の友人によって行われたらしい。

 1ヶ月で脳のダメージもある程度回復し、左手の傷も塞がった。しかし、魔力は使えなかった。リミッター解除の一時的な後遺症らしい。今後通院して治療を受けていれば、恐らくは回復するらしいが、正確な事は言えないと。

 腕に関しては、今後の生活で不便だったら、好きなものをつけることが出来るそうだ。もちろんお金はかかるが。ただ、そんなことは正直、どうだって良い。


 ウチにはプログラムとやらの許可も下りたらしい。ただウチがまだ魔力を使えないので、詳細は告げられないそうだ。国家機密とやららしい。大層なプログラムだな。

 ウチの幸せが帰ってくる訳でもあるまい。別にそんなプログラムなんて、どうでもいい。


 バニ様には連絡を取ってみたいが、何せ魔力が使えない。英雄が言っていた脳仕掛けの楽園、バニ様に連絡を取れば大丈夫というのはどういう意味だろうか。


 そして、それよりも最も問題なのが……


「記憶が、消えてる」


 半年以上前の記憶が無い。どうやって英雄と出会ったのか、亜瑠美を育てたのか、全く覚えてない。バニ様に関しては、半年以上会って無いので顔も思い出せない。どこにいるのかも、思い出せない。脳のアドレスが解らないから、例え魔力障害が回復したとしても連絡の仕様がない。


 それに気が付いてからというもの、ウチは覚えてる限りの家族の記憶を日記に書き綴った。またいつ記憶が無くなるかもわからない。一度脳を壊してるんだ。何があっても不思議じゃない。

 何で普段から日記をつける習慣がなかったんだろう。出会いや結婚、出産、旅行。そういった行事は日記に残していたが、ただの記録で、その時に感情や詳細な情報は無かった。当然、毎日の記録なんてあるはずもなく……。

 毎日が大切だったのに、宝物だったのに。三人でのあの家での生活、半年しか思い出せないよ。14年もあったのに。半年しか……。


 この事実に気が付いた日は、一日中発狂していた。既に大切な家族を全員失ったのに、これ以上ウチから奪うのかと。奪うも何も、リミッター解除して魔力を使いすぎたのはウチなんだけど。でも、あの場で無茶しないなんて、無理だろう。


 医者が言うには、リミッター解除した上で慣れない魔力を酷使しすぎると、このようなケースになる事が多いらしい。死ななかっただけ良かったとの事だ。……家族のいないこの世に、生きててどうするというのだと、聞いてて思ったが。

 中には記憶を全て無くしたり、記憶のストックが制限付きになるケースもあるとか。1日も保てなくなる事もあるらしい。記憶障害の他にも、言語障害や集中量の減少、様々な脳に関する障害がおこると聞いた。そんな程度で家族が守れるなら、英雄が守れるなら、ウチはいくらでも使ったのに。ウチの脳は、その命を使い切る前に気絶してしまった。



「ナトくん……」



 ナトくんの事も、全部忘れてしまった。髪飾りを見てみても、本来の姿が思い出せない。でも、気持ちだけは、ナトくんが好きだという想いだけは残っていて。



 もう、生きてる意味が解らない。生きる気力が湧かない。空っぽだ。ウチの中身は。



 医者の言う精神治療のプログラムとやらも、どうでもいい。どうでも。二人のいない世界に、何の意味があるというんだ。

 そもそもそのプログラムも、思念魔力が使えないと受けられないらしい。ウチの魔力が回復する保証は無いんだから、結局頼りにならないじゃないか。魔力があったとしても、どうせ頼りにならないだろうけど。

 医者からは退院後、定期的に通院する様に言われていたが、ウチは行かなかった。



 そんな時間は無い。今の内に、覚えてる内に、やるべきことを。



 事故を起こしたのは運送会社のトラックだった。ドライバーは即死だったそうだが、その会社は今回の件以外にも似た様な事故を何度か起こしているらしい。

 相当ブラックな企業なのだろう。運転手は過労がたたり、よく事故を起こす。


 会社が言うには、単なるドライバーの不手際だったという事だ。社員の不手際の謝罪として多額のお金を渡されそうになったが、ウチは断った。


 あの会社に、罪を認めさせてやる。個人の事故でなあなあで済ませてたまるか。

 いや、正直ウチ個人では認めさせるなんて不可能だろう。でもせめて何か傷跡を、痛手を相手に付けてやらないと、気が済まない。二人の命を奪っておいて、今ものうのうと経営を続けてるなんて、許せない。


 ウチは退院と同時に弁護士に連絡を取り、英雄が残してくれた遺産を全て使い、裁判に臨んだ。




   * * *




 もう生きてても仕方がない。この裁判が終わったら、死のう。あの世があれば、家族にも会えるだろう。

 英雄は正義を愛していた。もちろん自分らの露出の隠蔽等、違法も繰り返していたが。でも人が悲しむのは嫌った。

 裁判相手の会社は、事故を起こしておいてその事実をもみ消そうとしている。過去にも被害に合ったのに裁判で負けた人が沢山いる。英雄の遺志を受け継ぎ、この裁判に勝って、会社に痛手を。


 裁判は長引いた。大企業相手では、スムーズに決着がつくことは無いらしい。

 でもウチは戦う。勝ったところで家族は戻らないが、奪われた恨みが強い。今はこれしか、ウチを生かす動機が無くて。英雄が愛した正義を。憎んだ悪を叩くために、ウチの様な取り残される人間を少しでも減らすために、裁判へ。


 この会社が少しでも、この裁判で運営体制を変えてくれれば……。いや、そんなのは建前かもしれない。ウチはただ単純に、憎かったんだ。

 しかし相手の運転手も既に死んでいる。ウチは、本当に何のために戦っているのか……。




   * * *




 裁判は1年続き、ウチの資金は底を尽きた。負けた。負けてしまった。

 結局運送会社は、自社の経営体制は正当だと言い続けた。罪は全て、あのドライバーの不手際だと。そのドライバーが起こした事故への謝罪の意思はあるのだと、まるでウチが聞き分けの悪い子供の様に見える立ち振る舞いをし、世間からもウチの裁判は注目されなかった。何一つ、傷跡は残せなかった。



「もう、生きててもしょうがないな」



 ウチはビルの上に立つ。憎きあの会社のビルの上に。

 筋肉のリミッターは解除されっぱなしなのか、異様にウチは力が強かった。その筋力を使い、夜にビルの壁をよじ登り、屋上まで来た。


 折角だから社長でも殺そうかと思ったけど、どれが社長でどこにいるかもわからない。社長一人が悪い訳でもなかろう。経営陣全体が腐っているのだ。殺したいならビルごと爆破でもしないといけない。でもそれを行うには、無実の社員も巻き込んでしまう。

 それに殺したところで、二人が帰ってくる訳でも無い。ウチの幸せが、帰ってくる訳でも……。


 だから。



「少しくらい、嫌がらせしてやるか」



 この会社に家族を殺された。そうでかでかと書いた木の板を持って、屋上から身投げしてやろう。少しはショッキングなニュースになるだろう。


「英雄、亜瑠美、ナトくん、父さん母さん、今、行くよ」


 会いたい人の名前を呼ぶ。両親やナトくんは思い出せないが、気持ちは消えてない。ウチは、皆の事が大好きだ。

 ここから落ちれば、皆に会えるだろうか。地上10階。マキナヴィスの技術を取り入れて作られたこのビルの屋上から見る地面は、夜の闇に包まれ、見えない。飛び降りたら死の闇の中へ落ちていくのだろうという実感が、ひしひしと伝わってくる。

 でも、普段なら足が竦む光景も、皆に会えるのならば救いの光景だ。ウチには眼前に広がる暗闇が、光に見えた。



 今、会いに、行くよ。



 ウチはいよいよ飛び降りようとした。そんな、矢先……




「詩絵美ちゃん!!!」




 後ろからものすごい勢いで抱き着かれる。

 いやいや、これ後チョットであなたも一緒に落ちてましたよ? ウチは助けに来てくれたであろう人物を見上げる。そこには──



「詩絵美ちゃん」


 ウサギの様な頭をした、変なグーバニアンが、抱きしめたウチを優しい瞳で見下ろしていた。

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