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八重山昔話「石になった花嫁」


 むかしむかし、川平村かびらむらに美しいむすめがいました。

 娘は、遠くはなれた平久保村ひらくぼむらへおよめに行くことになりました。


 その結婚けっこんは娘がのぞんだものではなく、親が決めたものでした。

 娘はどうしてもいきたくないと言いましたが、聞き入れてはもらえません。

 むかしの結婚は、ほとんどがそういうものでした。

 どんなにイヤだと言っても、親が決めたらそのとおりにするしかなかったのです。


 やがて、結婚の日がやってきました。

 花嫁はなよめとお供の人たちは、川平村から平久保村へ向かいます。


 伊原間いばるまの辺りを通ったときのこと。


「ちょっと用を足してくるわ」


 そう言うと花嫁は馬をおりて、森の中へと入っていきました。

 そのまま、いくらまってももどってきません。

 心配したお供の者たちがあたりを探しましたが、花嫁の姿はどこにもありません。

 森の中に、 花嫁がすわったような形の冷たい石がひっそりと立っているばかりでした。

 いなくなった花嫁は、見つからないままだったそうです。


 花嫁はどこへ行ってしまったのでしょうか。

 花嫁は結婚したくなくて、石になったのでしょうか。

 いつしか人びとはこの石のことをアイナマ(かわいい花嫁)石と呼ぶようになりました。

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