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八重山昔話「犬が見つけた井戸」

 むかしむかし、竹富島たけとみじまに新志花重成(アラシハナカサナリ)という人がいました。

 ある年、日照りが続き、田畑はカラカラにかわいてしまいました。

 竹富島は小さな島で、雨がふらないとすぐに水が足りなくなってしまうのです。


「ああどうしよう、これでは作物がれてしまう」

「米や野菜がとれなかったら、食べる物がなくなってしまう」


 村人達は困っています。

 重成はそれを見てたいへん心を痛めていました。


(どうしたらみんなを助けられるだろうか?)


 重成は愛犬を連れて畑を見まわりながら考えていました。

 しばらく歩いてふと気付くと、いっしょにいたはずの犬がいません。


(どこへいったんだ?)


 重成は愛犬を探しました。 

 そして、しばらく歩いていると、犬がヒョッコリ現れました。


「あれ? どうしたんだお前、シッポがぬれているじゃないか」


 草むらから出てきた犬を見ると、シッポがどろ水でぬれています。

 犬は重成の前まで来ると、クルリと回れ右をしてシッポをふりながら、今出てきた草むらの方を向いています。

 そうしてまるで導くように、草むらに向かって歩き出しました。


「ついてこいと言うのかい?」


 重成が犬の後を追って草むらに入って行って見ると、地面がじっとりとぬれている場所がありました。

 そのあたりの草だけが、青々としています。


(どうしてここだけ土がぬれているんだろう?)


 不思議に思った重成は、持っていたつえで、地面をってみました。

 すると、そこから水がき出してくるではありませんか。


「おお! 湧き水だ!」


 重成は急いで村に帰り、みんなに湧き水を見つけたことを話しました。

 村人は大喜びで、みんなでそこに井戸を掘りました。

 その井戸の水で、村人も、畑も、ようやく生きかえる事ができたのです。

 今でも、竹富島には仲筋井戸(ナージカー)と名付けられた井戸が残されています。

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