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八重山昔話「舟のはじまり」

 むかしむかし、竹富島に、兄はミドブチ、妹はアレパシという兄妹がいました。

 ある日、二人はプサシのはまに行って水遊びをしていると、半月形のものが海にかんでいるのを見つけました。


(これは、どうして水に浮くのだろう?)


 ミドブチはそれを手にとってながめていました。

 それから、ふと何かを思いついて林の中に入っていきます。


「にいにい、どうしたの?」


 不思議に思いながら、アレパシは待っていました。

 するとミドブチは1本の木を切り出して来ました。


「さっき半月形をしたものが水に浮いていたんだ。おなじ形のものを作ったら水に浮くのか、ためしてみるよ」


 ミドブチはその木を切ったりけずったりして、半月形のものを作りはじめました。


 最初にミドブチが作ったものに、妹のアレパシが「ウツムイ」と名前を付けました。

 初めて作ったものは舳先へさきのような部分が下がり、水の中につっこんでしまうのでうまく浮きませんでした。


 二つ目のものには「イスバレ」という名をつけました。

 今度はしずみませんが、すぐに浜辺に乗りあげてしまいます。


 三つ目に作ったものには「トビタイ」という名をつけました。

 これはすいすいと波にのって浮かびましたが、どんどん沖に出て行ってしまいます。

 とうとう黒島のアナドマルという浜まで行ってしまいました。

 その後、黒島の人たちがミドブチの作った「トビタイ」をまねて、人の乗れる大きなふねを作りました。


 八重山では、これが舟のはじまりだと言われています。

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