目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

八重山昔話「星砂と星の子どもたち」

 むかしむかし、八重山の島々ができて間もないころのこと。

 星の女神様が、星の子を産むことになりました。


「星の子を産むために、どこか清らかな場所はありませんか?」

「どれ、私が探してやろう」


 星の女神様は、天の神様に相談しました。

 いいところはないものかと、天の神様はあちこち探しました。

 すると、ちょうど今の竹富島の沖に、とても美しい場所を見つけたのです。

 そこは、青い海に幻のようにあらわれる、のちに浜島とよばれる島でした。


「あの小さな島の沖の、サンゴと白砂の美しいところで産むとよいだろう」

「ありがとうございます。そこで産むことにします」


 天の神様は、星の女神に教えました。

 星の女神はさっそくその海に行き、星の赤ちゃんを産みました。


 ところが、それを知った海の神様はおこりました。


だれだ、ワシにことわりもなく、こんな所に子どもをたくさん産み落としたのは。せっかくのワシのお気に入りの美しい場所がだいなしではないか」


 怒った海の神様は海蛇うみへびを呼び、こう命じたのです。


「ここに産み落とされているものを、全部飲みんでしまえ。ひとつも残すな」


 海蛇は海の神様に命じられた通りに、星の子どもを全部飲み込んでしまいました。

 飲み込んだ後には、白い星の子どもの小さな骨だけが、白い砂にまじって残されました。


「かわいそうに。おまえたちのたましいを天にむかえ入れてやろう」


 それをあわれに思った天の神様は、星の子どもたちの魂を天へ迎えることにしました。

 天の神様は、星の子どもたちの魂を天に送るように、人間たちに言いつけました。


「砂に混じった小さな星の形をしたものを香炉こうろに入れ、お正月の朝にお香をたいて、星の子どもたちを天へ送りなさい」


 星の子どもたちの骨は、小さな星の形をしています。

 人々は天の神様の言いつけに従い、星の砂を香炉に入れて、お正月にお香をたきました。

 それが習慣となって、今でもずっと続けられているそうです。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?