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八重山昔話「御神崎のブナリツブルイシ」

 むかしむかし、石垣島いしがきじま名蔵なぐらというところに住んでいる姉弟がいました。

 姉はとても信心深くて働きものでしたが、弟はどうしようもないなまけものです。

 いっしょうけんめい働いている姉を見ても弟は知らん顔で、朝から酒を飲んでぶらぶらしていました。


「そんなに怠けてばかりではいけないよ。ご先祖様に感謝して、父さんと母さんが残してくれた土地を耕しなさい」

「そんな面倒めんどうくさいこと、してたまるか」


 どんなに姉が言い聞かせても、弟は聞きません。

 姉は弟がいつかまじめに働いてくれることをねがっていました。


 ある日の夕方。

 姉が畑から帰って来ると、弟は悪い友人を呼び集めて、みんなで酒盛りをしていました。

 仕事もせずに酒ばかり飲んでいる弟が、お金を持っているはずはありません。

 姉のお金を勝手に使って、弟たちは酒を買って飲んでいたのです。

 姉はもうがまんできないと思いました。


「働きもしないで酒を飲んでばかり、お前のような男は一族のはじだ!」


 怒った姉はおもわず大声で弟をしかりつけました。

 弟の悪友たちは、これはまずいと思ったかコソコソとげていきます。


「なんだと! オレを馬鹿にしたな!」


 すると、弟はみんなの前で怒鳴どなられたのが気に食わなくて怒鳴り返しました。

 それどころか、ナタを持ち出してきて、姉を切り殺してしまったのです。

 殺された姉は、もう弟を生かしてはおけないと思ったのでしょう。


 身体から切りはなされた姉の頭は飛び、なんと弟の首にみつきました。

 首に食らいつかれた弟は必死ではらおうとしましたが、姉のうらみの力はすさまじく、弟を噛み殺してしまいました。


 姉の頭は弟が死ぬと首からはなれて飛び去り、御願崎おがんざきへと向かいました。

 そこには、海の中につき出している岩がありました。

 姉の頭はその岩に噛みついて止まり、そのまま石になってしまったそうです。



 今でもその石は、御願崎にあります。

 それは台風でも落ちずに、ずっとそこにあるそうです。

 その辺りには、真夜中になると人の生首が転がってくるという怖い話も言い伝えられています。

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