ヒット、アンド、アウェイ。
今の状況を説明するのならそれが適当に思えた。
「ぜんっ、ぜん……削れないね……」
「弱音はあとですよ、削り切れなきゃ死ぬだけなんですから」
はあ、はあ、と息を切らしながら剣を地面に突き刺す。休息はこの10秒にも満たない時間しかない。
「行けるか⁉次のじゅっ」
瞬間、敵のターゲットが前線にいる私たちから後方支援に勤めていた昶くんに切り替わる。巨大斧を投擲され、そのまま壁に叩きつけられる昶くん。
「昶ッ⁉」
「臣くん、目の前!」
臣くんの眼前に敵の拳が迫る。それを臣くんは私の声でなんとか気づき、光の剣で威力を相殺して、距離を取る。同時に、私も後方に飛んだ。
—————Vuraaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!
目の前の巨人種が叫べば、それだけで私たちの体には酷い圧力がかかって、立っているのがやっとだった。そして、敵の声が止めば、敵の体が緑色に発光する。これはなんかしらのスキル発動に付随する発光だと言うのはいくらか前の授業で習った。そうして、用心しながら相手を注視していると———眼前から消える敵。
「なっ……」
咄嗟に敵を探すように首を捻った瞬間だった。そこには敵に拳を叩きつけられる臣くんの姿があった。
「臣くん!」
そして、もう一回拳が振るわれようとするのを跳躍して、なんとか光の剣を盾に弾く。すると、敵はなにを感じたのかにたり、と笑えば何度も何度も拳を打ち付けようとしてくる。私はなんとかそれをはじき返しながら臣くんの様子を確認する。
(ま、まだHPはある……だけど、気を失ってる……!)
生きてはいるけど、加勢は望めない。必死に拳を打ち返しながら、考える。
(どうしよう、どうしたら、私、1人で……?昶くんは?)
だけど、光の剣も耐久値がある。それは、強めの一撃を貰った瞬間だった。
「あっ……」
剣が粉々に砕け散る。その砕け散った光の粒子を呆然と見つめる、刹那、横殴りの拳が強く私を打ち付けた。
吹き飛ばされて、壁に打ち付けられる。
「がっ、あ……」
血を口から吹き出しながら、目の前を見つめる。目の前では敵が今、まさに、臣くんに拳を打ち付けようとしている瞬間だった。
すべての動きがスローモーションに感じる。私はその全てが鈍足となった世界で手を伸ばすことしかできない。昶くんも、臣くんも失ってしまうのか、私たちは此処で死ぬのか、絶望に胸が満たされていく。
(死にたくない、死なせたくない、こんなところで、私はッ———‼)
「死にたくないッ!」
そう宣言した瞬間だった。私の体の内側から暖かく、だけど鋭い光があふれ出す。
臣くんに拳を打ち付けようとしていた敵はその光に酩酊し、ふらふらと動きを止める。
「私はッ、臣くんの呪いを解くんだ!」