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第6話 「へえ~、好きな子に秘密作っちゃうんだ~」


「はあ~……助けたのにお説教されたあ……」


 正確には昶くんを助けたのに、普通属性科の訓練の邪魔をしたとしてお説教された。でもさー、討伐しなかったら昶くんのあと絶対被害が出てたと思うんだよなあ。むう。

 肩を落としながら、頬を膨らませる。というか、普通属性科の先生たちなんか私に当たり強くない?なんかすっごくネチネチ怒られたし。そんなこんなで肩を落としながら、とぼとぼと歩く。


「大体大けがする人が出るのを防いだことを褒めて欲しい」

「分かる~あいつ等揚げ足取りの天才だよね」

「ほんとだよ!っていうか、昶くんもこの学園の生徒なのに……」

「そうそう、稀少属性だからってあいつ等うちの生徒じゃないみたいな扱いするのないよね~」

「ほんと……え?」


 私はばっ、と横を見ればそこにはギザ歯を笑いながらチラ見せする女の子が居た。


「~~~~~~っ、だ、誰⁉」

「ウケる。此処まで気づかないんだ。天ヶ瀬サン天然?瑠衣ちゃんって呼んでいい?」

「て、展開が早い!え、ほんとに誰……誰ですか?」

「あ、敬語とかいいよ。ウチタメだから。初めましてではないんだな~これが」

「え、会ったことあるの?」


 まさかの驚きの情報に私が一歩引けば一歩近づいてくる女生徒。


「うん、さっき天ヶ瀬サンに治療してもらった」

「ほぼ初対面~~~~~~~!」


 今日はいろんな人をヒールしすぎて、一人一人の顔は覚えてない。え、なんだろう。私のヒールへの苦情かな。


「え、な、なに……?私のヒールへの苦情とか……?」


 女の子だもんね。痴態晒すのは恥ずかしかったよね!すると、女生徒は私の問いに楽しそうに笑って言うのだ。


「ははは、違う違う。んとね、ずばり」


 ごくり。


「稀少属性の友達ってなんかヤバい楽しそうだから友達になりに来た!」


 そうピースをしながら弾けんばかりの笑顔を向けてくる女生徒。ま、眩しい、行動力の化身過ぎる。


「稀少属性でも普通の人とあまり変わらないと思うけど……?」

「え、じゃあ、私が天ヶ瀬サンと友達になりたいから、は?」


 ゴリ押してくるな~。でも、うん、友達になりたいと言われて悪い気はしなくて。


「いい、よ……?えーと……」

「あ、ウチは逆瀬さかせ 八代やしろ。八代って呼んで~ウチも瑠衣のこと瑠衣って呼ぶし」


 自由だあ……。凄く、自由だ。


「八代……ちゃんはさっきヒールしたってことは2年?」

「そ。すんごい真剣にヒールしてくれてて、あ、いい子なんだな~って超思ったんだよね~」


 そう素直に褒められるとちょっと嬉しくなってしまう。そんなの嬉しくなってしまう。


「いい子かは分からないけど、褒めてくれるのは嬉しいな」

「この歳になると褒められることなんて減るからね~受け取っとけ~」


 そう2人並んで廊下を歩いていく。


「で、でも、友達か……友達ってなにするんだろ……」

「え、瑠衣友達いなかったクチ?」

「居なくはなかったけど、友達になろ!うん!で友達になるのは幼稚園以来っていうか」

「あ~、確かに。なんとなくクラスで一緒に居るのが友達、になってくるわな~」


 そう言うと八代が私の前に躍り出る。そして、自分の携帯を取り出して私に見せるのだった。


「とりま、連絡先の交換じゃね?」

「そだね」




 と、八代とは連絡先を交換して今日はお別れになった。この学園に来て初めての女友達、ついむふふ、なんて声が漏れてしまうものである。

 そうして、下駄箱まで行けば、下駄箱を背に携帯を弄る昶くんを見つける。


「昶くん」

「……で、どこで話す?」


 なるほど、ちゃんと約束を守ってくれるらしい。それなら下駄箱で待ってるなんてしなくても、私の携帯に催促を入れればよかったのに。いや、催促が入ってたらきっと女の子の友達なんてできなかったんだけどぉ……。


「場所の指定は特にないんだけど……できれば、臣くんに絶対に聞かれないところがいいかな」

「じゃあ、校舎内は却下だな。……そういえば、天ヶ瀬はポイント支給あったのか?」


 ポイント。それはこの学園内で使える通貨だ。主にダンジョン内での依頼を攻略したり、モンスターの素材を換金したりで支給される。ちなみに相場は大体円と一緒。異なるのはこの学園内でなんでも買える、という点。ちなみに私はと言えば。


「うん、なんか稀少属性ボーナスもつけてくれたから実はそれなりに……だから、いきなり10万ポイントとか目が飛び出るような金額じゃなきゃ払えるよ」

「そ。じゃあ、学園の外れにある小さいカフェ行くか」

「え、なんか昶くんがチョイスするには意外過ぎるチョイス……」

「顔が広いもんでね」


 その言葉に、臣くんの言葉が脳内をチラつく。確かに、好きな人がフラフラ色んなところに行くのは不安になるよなあ。


「じゃあ、行くか」


 そうして、私と昶くんはそれぞれ靴を履き替えて目的地のカフェまで行くことになった。




「ほ、ほえええ……」


 昶くんが連れてきてくれたのは所謂古民家カフェだった。この古民家が果たして偽装古民家なのか本当に古民家なのは置いておいて。一言で言えばかなり落ち着く、というかおばあちゃんの家に来たような気持になるぐらいだった。すると、店員さんらしき女性がいそいそと出てきた。


「あら、あーくんじゃない。隣は彼女?」

「辞めてくれ。この馬鹿女が彼女だなんて……ちょっと臣に聞かれたくない話をするから連れてきただけだよ」

「へえ~、好きな子に秘密作っちゃうんだ~」

「……そりゃあるだろ、言えないことの一つや二つ」


 そんな会話をする昶くんと店員さんらしき女性。え、ていうか、今なんかさらっと。


「え、え……?」

「なに?」

「え、え……」


 今なんかさらっと臣くんのことが好きとかいうとんでも情報出てきませんでした?え、き、聞き間違い?


「まあ、とりあえず適当に座っちゃって。あーくんは珈琲で、えーと……」

「る、瑠衣です。天ヶ瀬瑠衣です」

「オーケー、瑠衣ちゃんは珈琲?」

「ミルクとガムシロップをお願いします」

「あいよ」


 そう店員さんが引っ込んでいけば、昶くんはいつもの足取りのように店内を歩いて、店内の一番日当たりのいい席に腰かけるのだった。私もその席の対面に腰かける。


「話は珈琲来てからで」

「う、うん」


 昶くんは私のことなんて気にも留めずに携帯をぽちぽちと弄ってる。私もそれに習って携帯を取り出せば。


 ~~~~~♪

 ~~~~~♪


 私と昶くんの携帯が同時に震える。私は突然のことに驚きながら、通知を確認すれば。


「あ、アンフラグだ」

「俺も」


 アンフラグ。この学園のアプリだ、主に課題の提出、学園からの依頼、ポイントのやり取りなど結構幅広いことができるアプリ。私はいまだに全ての機能を使いこなせてる気がしないんだけどね。

 そうして、アンフラグの通知をタップすればアプリが立ち上がる。そして、画面に表示されたのは———。



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