ルナは木の上からスライムをじっと見下ろし、深呼吸した。
「アナリティクス、発動ですにゃ!」
薄い光がルナの瞳に差し込み、視界の片隅に新たなウィンドウが浮かび上がる。
そこにはスライムの情報が並んでいた。
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種族: スライム(小型)
レベル: 2
攻撃力: 50
防御力: 50
スキル: 酸性ボディ
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「攻撃力50、防御力50……意外と強そうですにゃ。しかも『酸性ボディ』って書いてありますにゃ……」
にゃん民: 攻撃防御50!?けっこうあるな
にゃん民: 酸性ボディって直接殴ったらまた溶かされるんじゃ?
にゃん民: 手を出したらヤバいかも
「みにゃさん、確かにさっき手袋が溶けたのはこのスキルのせいかもしれないですにゃ……」
ルナは先ほど溶けたグローブの感触を思い出し、少し身震いする。
直接触るのは危険な相手らしい。
にゃん民: ルナちゃん、あなた確か猫神様の神使という設定だったよね?
にゃん民: 企業時代から追ってる古参だけど、戦闘系の技もあったはずだよ
にゃん民: 戦闘技があるなら、直接触れずに倒せるかも
「猫神様の神使……そうでしたにゃ! そういえば私、神の使いとして『ネコ発勁』という技があるんです!」
ルナは思い出したように拳を握る。
異世界でも設定が活きるとは思わなかったが、状況的にはありがたい。
「ネコ発勁なら、拳に気を込めて攻撃できる気がしますにゃ。触れずに衝撃を与えられるかも!」
にゃん民: それなら酸に触れずに倒せるんじゃない?
にゃん民: 試してみよう!
にゃん民: がんばれルナちゃん!
「はい、みにゃさん!やってみますにゃ!」
ルナはスライムの前で仁王立ちし、正拳突きの構えをとる。
何が起こるのか、ブルりと震えるスライム
まだ慣れない体だが、自然と力が湧いてくる感じがする。
「……ネコ発勁、いきますにゃ!」
彼女が拳を突き出すと、柔らかな光がその拳から迸った。
地面を蹴って一瞬で接近し、スライムの体にズバッと振動を叩き込む。
スライムはぷるぷると揺れ、その中央部にあった小さなコアが砕け散った。
「やった……倒せましたにゃ!」
スライムはとろけるように消え、地面には小さな魔石がころんと転がる。
「魔石(小)を入手しましたにゃ!」
にゃん民: おおおおおお!
にゃん民: すごい!スライム倒した!
にゃん民: 魔石ゲットおめ!
突然、ルナのステータスウィンドウが淡く光り、そこに「レベル」の項目が増えている。
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名前: 猫神ルナ
レベル: 1 → 2
登録者数: 15,000
同接: 103
Vスキル: 配信(Active)
アナリティクス
攻撃力: 12 (+103)
防御力: 10 (+103)
素早さ: 10 (+103)
スキル: ネコ発勁(はっけい)
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「レベルが上がった……! これ、どんどん成長できるんですにゃ!」
にゃん民: レベル上げとかRPGじゃん!
にゃん民: 強くなれるなら、この世界でもやってけるな!
にゃん民: ルナちゃんおめでとう!
「ありがとうございます、みにゃさん! …これもみんなが見てくれてるおかげですにゃ!」
ルナは魔石を手に取り、微笑む。
異世界は戸惑いばかりだが、にゃん民たちとなら、なんとかやっていけそうな気がした。