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3-1 街へ

 シアに案内されて、ルナは湿った森を抜けて歩いていた。


 木々の背が低くなり、視界が開ける。

 遠くに見える灰色の石壁、それは異世界の街を囲む城壁のようだった。


「わぁ……あれが街ですかにゃ!?」


 ルナは目を輝かせ、コメント欄にも興奮が走る。


にゃん民: な、なーろっぱの街だ!

にゃん民: ついに異世界っぽい都市来たぞ!!

にゃん民: この壁の感じ、本格的すぎる…VRでここまで再現可能か?


「みにゃさん、見てくださいですにゃ!

 ちゃんとした街がある……嬉しいですにゃ!」


 シアは微笑みを浮かべ、足を早める。


「ここが『バズリディア』という街です。

 冒険者が集まるギルドもあるし、宿屋や商店も揃ってますよ」


「バズリディア……覚えましたにゃ!」


 ルナは胸が高鳴る。

 異世界の街、ここで必要な情報や物資を手に入れられるはずだ。


 城壁の近くには、大きな木製の門があり、その前に二人の門番が立っていた。

 門番は槍を持ち、鋭い眼差しで通行人を見つめている。


「えっと……この人は私の知り合いで……」


 シアはルナを指しながら門番に説明する。

 門番たちは怪訝な顔をしてルナを上から下まで眺めた。


「その者、見かけない顔だが……身分証はあるのか?」


「す、すみませんですにゃ、身分証は持っていませんにゃ」


 ルナが頭を下げると、にゃん民がコメントでざわつく。


にゃん民: 身分証とかあるんだ

にゃん民: やっぱファンタジーRPGの定番設定

にゃん民: これで追い返されたらどうするんだ?


「この方は私の恩人なんです!

 襲われていたところを助けてもらって……

 私が保証しますので、入れてくださいませんか?」


 シアが一生懸命に訴えると、門番は互いに顔を見合わせ、少し考え込む。


「シア……確か街の薬屋さんの子だったな。お前が保証するならいいだろう」


 門番は仕方なさそうに槍を横へずらし、門を開く。


「ありがとうですにゃ!

 みにゃさん、これで街に入れましたにゃ!」


にゃん民: おお、通った

にゃん民: シアちゃんナイス交渉

にゃん民: マジでRPGの入り口イベントみたいだなw


 門をくぐると、石畳の道が続き、両脇には木造の家々。

 行き交う人々は多種多様な服装を纏い、荷車を押した商人や剣を携えた冒険者らしき人々も見える。


「わぁ……本当に異世界ですにゃ……!」


 感動するルナに、シアは笑いかける。


「身分証がないと、この街では何かと不便です。

 まずはギルドへ行って、冒険者登録をするといいかもしれません」


「ギルド……冒険者登録……

 みにゃさん、聞きましたかにゃ?

 冒険者といえばRPG定番イベントですにゃ!」


にゃん民: ギルドキター!

にゃん民: 本格的に冒険者として活躍なるか

にゃん民: 街中もリアル…どこまで再現してるんだ


「ありがとうございます、シアさん。

 では、ギルドへ行ってみますにゃ!

 みにゃさん、これからギルド初体験ですよ!」


 ルナはワクワクしながら、シアと共に石畳の道を進む。

 異世界の街が、いま目の前に広がっている。



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