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戻四季--れいしき 氷の世界で夏を探す
戻四季--れいしき 氷の世界で夏を探す
博登あかと
現代ファンタジー現代ダンジョン
2025年04月17日
公開日
1.7万字
連載中
【(金曜-19時頃)・(月曜-10時頃)の週2話更新!】 第二次世界大戦が開始扱いとなった、1939年の翌年の1940年11月に始まったと言われる 異常自体が日本で発生する。-永冬-それは日本が急激に弱体した原因でもあり 世界中で今もなお研究がなされている。 その現象は文字通り、永遠と冬が訪れたかのようにずーっと雪が降り続ける現象 週に何度かは止まるし、12月や1月よりも、7月8月の方が比較的気温は高くなるがたかが知れている 一年を通して雪は止まず翌年も、またその次の年も雪が降り続けた。 舞台はそこから100年以上が過ぎた 2045年7月 今、この日本で暮らしている人々はこの生活に馴染んでいた。 生まれた時には晩年、冬だったのだから。 愛知県に住む高校2年生の  主人公 高田 霧音 とその仲間たちはある出来事に巻き込まれていく…… ネオ書きコン1への参加のために執筆開始しました。 気に入って頂けたら、いいねやブックマーク、応援チケットを押してくれると物凄く嬉しいです! たまに連続投稿します!

第1話 なんでダンジョンなんかに

 「……はぁ……はぁ……ゴホッ! 」


——私は、資料でしか見たことのない木々や花の間を駆け抜けている。

 赤く綺麗な花を咲かす木、辺りに広がる色んな色の花々、その間を埋めるように生える草……?どれも緑色だけど微妙にそれぞれ形が違うから別の種類なのかな、綺麗。特に黄色い花が細かく生えている場所がところどころある。

 私はその黄色い花を知っている。この目で見るのは初めてだけど、それの名前は“菜の花”。こんなところじゃなかったらずーっと眺めていたい。


 「残念なのは、こんな綺麗な一面に氷が咲いていることだけど! 」


そう、その綺麗な景色も完璧ではない。ところどころに氷柱つららが下から上に向かって突き出ている。

 場所によっては、畳ほどの大きさの氷の塊が、花々をまるごと閉じ込めたように存在していた。


 「……はぁ……はぁ、なんなのよ、ここ! 」


 こんなに植物が立派に育っている空間なのに、おかしな点が多すぎる。そもそも今の日本で植物がこんなに育っていることが異常。この場所がこんなに広いことも異常、こんなに高い天井……いや洞窟ってことが異常。日もさしていないのに明るいことが異常。他にもたくさんの違和感があるけど……もうわかんない。


 「さっき天貝あまがいくんがダンジョン……って言ってたけど、ダンジョンてなに!? 」


 私は見ないようにしていた後ろを見るために、足を止めずに振り返った。 

 そこにはがいた。走っているおかげか“それ”と距離は離れているが確実にこちらに向かってきている事だけはわかる。——がそれはピタッととまった


 「はぁ…はぁ……と……止まった!? 」


思わず足を止め、それを観察した。……その氷は全く動いていないが、顔と思わしき部分はこちらを見ている。


 「……はぁ……はぁ……あの様子だと、追いかけるのは諦めたみたいね」


 全力で“”から逃げていた私は、“”の様子からは大丈夫そうなのを感じ取り、辺りで氷の存在しないエリアに倒れるように寝転がった。


——良い匂い……。


 今、立たされている絶望的な状況にも関わらず、香る花々の匂いが優しく鼻を通り抜ける。

 それは脳内に巡る様々な考え、これから何が起こるかわからない状況、友とはぐれてしまったことからの孤独感、総称して言ってしまえば不安なこの気持ちを少しだけマシにしてくれた。


 私は決して吹き抜けることはなさそうな、岩なのか山の中なのかわからない天井を見上げ、深く、しかしゆっくりと落ち着きのある深呼吸をする。


 「ふーーーーー……まずは状況整理をしよう。まず一番最初に考えることは」


 もう一度、さっき追いかけてきていた人型の氷がいた方へと顔を向ける。--やはり、それ以上は動けないのか、宙に浮いているので、この言い方はおかしいが、立ち止まっていた。


 「怖すぎる。……いや、逆に良かったかも。あそこにいない方が怖いし、視界に入って動けないアピールされてる方が安心できる」


 その事実に安堵あんどし、ゆっくりと目を閉じた。


 「次に考えることは……みんなはどこにいるんだろう。……まさか、私だけ取り残されてて、みんなはここから出れたってことは? 」


 一気に孤独感が増したが、そんな状況は嫌なので、“”にそんなことはあり得ないと頭と心で自分に言い聞かせる。


 「ないない、みんなが私を置いて出ていくことなんて、するはずが無い。……そもそも、この空間自体がおかしいけど、はぐれた一番の元凶は……」


 私は上体だけ起こし、かろうじて氷も草木も生えていない、土だけの場所に右手を優しくそちらに向け、頭の中で氷が生えてくるのをイメージする。



--スゥーーー



その土だけの場所にかすかな音が発生したのち



--バンッ!


激しい音が響く。そこには人の背丈ほどの、縦に伸びる長方形状の氷が出現する。


 「この力が原因……咲も何か出そうとか言ってたから、この変な力というか、能力?はみんなも出来るようになっちゃったのかな? 」


 自分のてのひらを見つめた。見た目はいつもと変わらない普通の手だ。


 「壮大な“夢”とかじゃ無いかなーー……イテテッ……普段こんなに走って無いから足を変な感じに挫いちゃってる……はぁ、夢じゃないかー」


 再び私は寝転んだ。次ははぐれた友達たちと、なんとか合流する方法を考えないといけない。


 「みんなと反対方向に逃げ出しちゃったから、もしかしてあの“”の後ろに向かわないとダメ?……いやいや、絶対無理」


 どうにか他の策を考えなければならないが、その状況によるストレスのせいなのか、それとも走り疲れによるものなのかはわからないが、頭がボーーっとしてくる。


 「どこか別の道で繋がってないかな……それにしても良い匂い……私の氷を使っ…て……そもそも、なんでこんなところ……に……」


 私は花々に囲まれながら、優しい匂いに包まれ、気を失った。




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