シンジュウたちが一歩踏み出すごとに、大地が揺れた。両方のシンジュウ。巨大で異形の姿をした怪物たちは、黒い霧に包まれ、敵意に満ちたエネルギーが揺らめいていた。燃えるような目は、アレックスから決して離れなかった。
「お前、正気かよ!?」 まだ意識のある学生の一人が叫んだ。 「逃げろ!!」
だがアレックスは動かない。
彼は両腕を広げる。まるでシンジュウたちに「かかってこい」と言わんばかりに。
「さあ…なぜ俺たちがお前らを恐れるべきか、見せてみろよ。」
まるでその言葉が合図であるかのように、二体のシンジュウが同時に咆哮を上げ、彼に襲いかかった。一体は左から、もう一体は右から。その爪は呪われたエネルギーで光っていた。
一瞬で、アレックスにぶつかった――ように見えた。
だが、目に見えない衝撃が彼らの動きを止めた。
アレックスを包む紅のオーラが、静かな爆発のように弾けた。圧力の球が広がり、両方の怪物を数メートルも吹き飛ばした。土、岩、そして木々までもが巻き込まれていった。
アレックスは一歩も動かず、静かに息を吐いた。
「遅すぎる。」
一体目のシンジュウが技を使おうとした。口を開き、黒い炎のブレスを放とうとする――
だが、撃つ前に、アレックスはすでにその目の前にいた。
彼の目は真紅に染まり、紅蓮の力を纏った拳がシンジュウの顔面を貫いた。その一撃で粉砕された。
大地全体が震えるような衝撃波が走った。
怪物は崩れ落ち、のたうち回りながら、その身体は急速に崩壊していった。
二体目のシンジュウは怒りの咆哮を上げ、闇の触手を無数に放った。それらはアレックスを包み込み、まるで死の蜘蛛の巣のように彼を飲み込んだ。
学生たちは叫んだ。アレックスが闇に消えたのを見て。
「アレックス!!」 内気な少女が悲鳴を上げた。
だがその時――
闇の中から紅い光が爆発した。
その中から、紅の旋風のようにアレックスが現れた。彼の一歩一歩が、怪物の体を破壊していく。殴っているのではない。分解しているのだ。
クラス3のシンジュウは膝をつき、最後の呻き声を漏らし、完全に崩壊した。そこに残されたのは、宙に浮かぶ一つの黒いピラミッドだけ。
アレックスはそれを片手で掴み、まるで珍しい石でも拾ったかのように眺めた。
「チッ…もっと手ごたえあると思ったんだけどな。」
沈黙。
負傷した学生たちも、半意識の教官も、内気な少女さえも――何も言えず、ただ彼を見つめていた。
レイジは地面で震えながら、歯を食いしばっていた。
アレックスは皆の方を向き、そのオーラをゆっくりと消していく。
「何だよ。ピラミッドなしで戦える奴、初めて見たのか?」
そう言い残し、彼はまるで何事もなかったかのように戦場を後にした。
少女は言葉を失ったまま、その後を追う。
だが、彼女の頭の中では同じ言葉が繰り返されていた。
彼はいったい…何者なの…?