「
私の声が聞こえたのか、少し離れた席にいる宮松くんがこちらを向いた。
そして、うげっと顔を歪める。
「あの子、こーづかちゃんの知り合い?」
「うん。
「へぇ~。うちの後輩がお世話になってま――」
「それ以上近付くな」
声を掛けながら歩み寄ろうとしたかなちゃんの言葉を遮って、宮松くんが静かに告げる。
驚いて立ち止まった私たちを宮松くんは睨みつけていた。
まるで、威嚇しているみたいだ。
「
一心にパフェを口へ運んでいた女の人が、視線をパフェから外さずに宮松くんをなだめる。
綺羅さんも食べるのが早かったけど、この人はそれ以上かもしれない。
「
「へっ!? そうなの?」
驚いて顔を上げた彼女と、初めて目が合った。
「初めまして。黎の嫁の愛理です」
「おい、まだ嫁じゃないだろ!」
「えー? あとは紙出すだけなんだから実質嫁みたいなものだって」
突然イチャつく姿を見せられて困惑してしまう。
宮松くん、伏木分室に来てた時はそんな素振りちっとも見せてなかったのに。
私たちが何も言えずにいる間に、愛理さんはパフェの器を持ち上げて底に残っていたシリアルをかき込んで消し去ってしまった。
「ごちそうさまでしたー。ってことで、
「あっ、あの……」
結城ちゃんじゃなくてかなちゃん。
私が訂正するよりも早く、二人は席を立ってしまう。
「毎回食べ過ぎなんだよ」
「いいじゃん。女の子の九割は甘いものでできてるんだから!」
「そのうち脳みそが砂糖菓子になるぞ。ぎゃは」
私たちは、仲睦まじく笑い合いながらパフェの容器を返却口へ運んでいく二人の後ろ姿を見送ることしかできなかった。
翌日、伏木分室に出勤した私は衝撃の事実を告げられた。
第五中学校での一件を受けて、宮松くんが今回の仕事を辞退した。
なのでもう
それだけではない。
彼の師匠である
「そんなっ……私たちだけじゃまだ解決できないこともたくさんあるのに」
「これからどうするっスか」
「どうって……。できることをやるしかないんじゃない?
ほら、宮松くんが言っていたんでしょう? この一連の怪奇現象には、裏で糸を引いている人間がいるに違いないって」
幸いにも、瀬田さんがくれた道具たちはそのまま使わせてもらえるらしい。
それらを上手く駆使してどうにか黒幕に辿り着かなくてはいけない。
不安に駆られる私たちに、
「今こそわたしたちの腕の見せどころでしょう? どこの誰だかわからないけど、伏木分室の底力を見せつけてやるのよ!」