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オタクを拗らせて人間関係が崩壊した俺がいつのまにか男の少ない世の中に転生?していた
オタクを拗らせて人間関係が崩壊した俺がいつのまにか男の少ない世の中に転生?していた
ショウシ
現代ファンタジー都市ファンタジー
2025年04月19日
公開日
12.5万字
連載中
昭和生まれの中年、安藤 隆一は若い時から二次元に入れ込んでいたが、自分の周りに理解者が現れることなく人生を歩んでいた。 いつものように、ただゲームをしつつ寝落ちしただけなのに、起きたら知らない病院の中で入院していて今の現状を知ることになる。 男女比が狂った別世界の中で、安藤 隆一は神埼 守として生きることになったのだが……

第1話 眠り

俺はゲームが好きだ。アニメも好きだし、フィギュアも好きだし、漫画も好きだし、ラノベも好きだし、プラモデルも好きだ。

つまるところ、二次元と呼ばれるコンテンツの全てが大好きだったんだ。このオタク趣味が俺の生きがいだったと言い切ってもいい。

学生の頃にドハマリして、それを社会人になっても続けて、家族や親戚に止められてもどうしても辞めることができなった。

そんな俺でもモテたいとか、頑張って体を鍛えて見返そうとか、清潔感とはなんぞや?みたいに勉強だってしたこともあった。

それでも世間の女性は理解や共感ができない趣味を持っている男に厳しいのが現実だ。


「え~~~それってオタク趣味ってヤツぅ? 私は分からないかな~興味ないし~」


「うっわ、キモっ………」


「素材はいいのに、君って残念だよね」


帰ってくるのはあざけりの言葉だったり、人を見下すような態度。

それでもめげずに俺も頑張ってた時期はあった、共感してくれなんて贅沢は言わない、ただ俺はそういう人間なんだって理解だけしてくれれば良かったんだ。

趣味と平行して、自分磨きだって頑張っていた時期もある。

でも、俺の元にはついにそういう人は現れなかった。

一時的に理解したフリをする人はいても、少し話せば合わせようとするだけのメッキなんてすぐに剥がれ落ちていく。

でも、俺はそれで構わないとも思っていた、それで十分だったのに……。


「いや、そんな話はいいからさ、今度はここに行こうよ」


俺の過去に一人だけいたお付き合いさせてもらっていた彼女は、きっと俺の外見に惚れていたんだろうな、今こうして振り返ると俺自身が好まれていたんじゃなくて、俺を自慢できるアクセサリー程度の認識だったんだろうな。


「みてみてー! 私の彼氏なんだ、イケメンでしょ! しかも、あの大手企業に勤めててさ―――――」


隣で俺の腕を取って友達に紹介されているときは、正直うっとうしさすら覚えたくらいだ。

を理解してしまってからは、悲しさやら、虚しさやらで胸がいっぱいになった。


「そんな気持ち悪い人形なんて捨てちゃえばいいじゃない。それにさー、いつもゲームばっかやってないでいい加減大人になろうよ」


その言葉がきっかけで、俺は吹っ切れたんだと思う、そして同時に諦めた。

俺がテレビゲームを好きなように、彼女達はリアル恋愛ゲームが好きなんだ。

より良い男を捕まえて相手に自慢するゲーム。対戦相手は同性。トロフィーとして優越感を得られるだけのしょうもないゲーム。

そのゲームに勝ち続ける為には、女性ウケの悪いオタク趣味というのがマイナスだったんだろう。

そう考えたら急に気持ちが萎えてしまった。向こうが俺の趣味を理解しようともせずに気持ち悪いと言うのと同じく、俺も向こうを理解できない謎の生物程度にしか考えられなくなっていた。


こうなってしまってから、世間では中年と呼ばれる年齢になっても異性と呼ばれる存在には一定以上の魅力を感じなくなってしまった。

俺は変わらず二次元が好きだし、新作のゲームだって常にチェックしている。

それを邪魔するなら、もう彼女も結婚相手も自分の子供だって必要ない。それを強がってるだけとか誰かに言われたが、本当にそんな気持ちは微塵も無くて、当然そういう欲求はあるけど単純に男女の付き合いというものの興味が失せていた。

そんなものよりもネットで知り合った誰かとオンラインでゲームしているほうが遥かに楽しいし、ラノベを読んでる時間を有意義にも感じる。

誰にも縛られずに気が向いたら好きなだけ好きなことをして、誰に咎められることもなくコレクションを増やせることが贅沢とすら思っていた。


そんな事ばかりしていたら、いつの間にか家族すら俺を見放していた。

実家に住んでいる妹はとっくに結婚して、子供も産んでいるという話だけは聞いたけど、俺はその子にすら会わせてもらえなかった。

なんでも俺の趣味が子供に悪影響だからという馬鹿げた理由らしい。

病気とは訳が違うし、別に妹の子にまで俺の趣味を布教しようなんて微塵も考えてなかったのに、妹可愛がりな両親は、妹の意見だけを取り入れて俺を遠ざけることを選択した。

お祝いの言葉は気持ち悪いと一蹴したくせに、ぬけぬけとお祝いという御祝儀だけ要求してきたので、俺は実家にもう壊れて動かない家庭用ゲーム機を送ってやった。

妹は怒り狂ったように抗議の電話を寄越してきたが、俺はもう何も感じなかった。

家族でもなく、妹でもなく、異性とはこういうものなんだと理解していたし、今更である。

なぜ俺がなんかを送ったのか、きっと向こうは死ぬまで理解しようとしないだろうし、もはや理解してくれなんて求めてない。

ただこれが、家族への、そして妹への最後の意思表明のつもりだ。

自己満足といえばその通りだろう、不親切だと言うのであれば、まぁまぁその通りだ。


俺の手元に残っていた最後の……まだ子供のときに妹と一緒に遊んでいた思い出の品は、きっと妹の手で処分されることだろう。


もうそれでいいんだ。

世間体も、家族も切り離して、俺は一人でこの社会を生き続けられるだけ生き続けて、仕事をしながら趣味を生きがいに生活していく、それでもう満足なんだ。


俺が欲しかったものは、するりとこの手から全部落っこちた。


それでも、俺がしたい事はまだまだ残っている。


混同しがちな人もいるけど、はイコールじゃない。



イコールじゃないから、独り身のまま年齢を重ね続けた俺には、寂しさや虚しさが染みるのだろう。


思い返せば高校や大学のときにいた友人も、結婚したり、仕事が忙しかったりと……ひとり、またひとりと疎遠になっていった。

友人だと思っていた人たちは、どんどんと次のステージに進んでいっていたというのに。

俺は前にも進まず、人間関係を広げることもなく、その場で楽しいと思うことを繰り返していただけだ。


まぁ、何十年も手前勝手にここまで生きてきたんだ、自分の周りに誰も居なくなるのは仕方がないのかもしれない。



オタク趣味を拗らせたといえば、きっとそうなのだ。

欲しかったものは全て無くなってしまったけど、したかったことは出来ている。

今もこうして仕事終わりに誰からも憚られる事無くゲームが出来ているのだから、俺は満足している。



でも、足りないとも考えてしまう。



あぁ、もっと遊びたい……。




もっと、誰かと………もっと近くで………語り合って………親しい人たちと一緒に、色々と楽しみたかったなぁ。




どうしてだろう、寝不足って訳でもないはずなのに…………今日は………いつも以上に、眠い………。






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