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蝶舞山揺 壱 その3

 その力で四ヵ月前、大阪環状線を使った巨大な結界を創ったEG使いが、速水颯太である。

 彼の創った結界は、彼が消えた今も存在し続けている。


 大阪駅ここへ来る前、女のがググった内容だ。

 その女のが、現実とは思えない光景をあたりにしている。

 眼の前で光る霊体を観ている自分と、それでもなお霊的存在を否定する自分が居た。

 ちょっと笑った。

 百聞ひゃくぶん一見いっけんかず。

 そのことわざが当てまる状況が自分に起こってるのに、全く信じない自分も居る。


 ――へんなの、、、


 自分の脳が、こんなにも意固地いこじだったとは知らなかった。

 けれど、、、

 ここは結界の中。

 だから、、、。

 そんな自分を、納得させた。


 観えているが、現実なんだと。

 これが、エレクトリック・ゴーストなんだと、、、。


 脳を納得させるため、霊体をガン見。

 汚い男の身体は、蜘蛛くもの形をしていた。

 大きさは、10センチにも満たない。

 それが、手の届く距離で動いている。


 ――これが現実


 フムフムと納得。

 ムリヤリに納得。


 どちらかというと、そんなに驚いていない自分に少し驚いている。

 結界やエレクトリック・ゴーストについてググったついでに、動画もちゃんとチェックしていたからかも知れない。


 今観てるものと同じような動画を、夢中になって何本も観てた。

 海外のモノもあったが、結界内の通天閣で撮られたモノが圧倒的に多かった。

 公然の秘密として出回ってるガイドブックには、日本の通天閣周辺が『安全にエレクトリック・ゴーストを観れる場所』として紹介されていて、世界的にも有名になってる。

 外国からの旅行者たちも、日本の通天閣を目当てに来る人が大多数いる。

 そんな情報を頭に詰め込んでいたので、ちょっと免疫が出来ていたのかも知れない。


 女のが視線を動かすと、当たり前のように宙には青白い光が幾つも踊っている。


 フラフラと、、、。

 ユラユラと、、、。


 動画で観たオーブのように、自由に、意思のあるように動き、集まり、離れてはまた集まり、青白い光は絶えず自在に形を変えながら少しずつ何かを表現しようとしては崩れるを繰り返していた。


 「きれい、、、」


 唇かられていた。

 素直な感想。

 大きく白い息を吐くとスマホを出し、女のは自撮りを始めた。




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