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蝶舞山揺 肆 その5

 だから、観えない(知らない)人に霊的な話しをしても伝わらないし、そもそも信じようとしない。


 興味を示す人も、それは自分の中で(無意識に)面白いから(フィクションとして)そう脳が反応しているに過ぎない。


 観える人には、

 そういう世界。


 余談として、霊能者が霊現象を起こす時、気合いを入れて「えいやっ!」ってやる人は、高い確率でニセモノだ。

 だって普通に観えてるし、普通に扱えるから。

(念のために言うと、集中するために経や呪を唱えたり、演出としてやる事は有る)


 気合いを入れてる理由に一番多いのは、『これから自分は嘘をつくぞ』と脳にストレスをいだかせないように、ウソをのスイッチの切り替え作業。


 脳の防衛本能。


 「こうすると霊が観えるようになるんだ」


 とか言って気合いを入れる人は自分でも気付いて無いが、


 一種の防御作用。


 悪人に成りたくない。

 良い人で居たい。

 あなたの役に立ってる私。

 私は嘘つきでは無い。


 感情で脳を傷つけない為の、防御本能。


 そんな理屈を理解している李楠は、EG使いなんて信用できないと思っている。

 自分で自分の事をEG使いだと言って、その暴力的背景に好き勝手やってるチンピラみたいなもんだと考えていた。


 EG使いと術師、“どちらが強いか論争”は後を絶たないが、そう言った理由も含め李楠は間違いなく術師に票を投じる。


 ――術師は、ホンモノ、、、


 一度見ただけの現場だったが、それほどまでに強烈なまでの鮮烈な情景だった。


 「駱嘉を連れて行けないのなら、、、」


 李楠の言葉。

 最後まで言わなくとも、さすがのボンクラ上司も理解したようだ。


 「良いだろう。二人を連れて行け」


 これが15時間前の出来事。

 そして今、周辺をひと通り確認しホテルの部屋に入ったところだ。

 決して実行はしないのだが、李楠がヒラメイタってのは、、、。


 ――最悪の場合、このまま日本にトンズラしちゃおうかな


 成果を上げないまま本国に帰っても、良くて降格。

 最悪、反逆罪。


 ――すぐ反逆罪使うし、、、


 またヒラメク。


 ――亡命?


 これは有りか?

 自分でいうものなんだが、とても優秀な人材だと自負じふしている。


 ――日本で、、、どこか、、、


 と思ったが、スグに否定。


 ――なんてね


 思いつくだけで行動に移さない。

 李楠、ちょっと気弱な一面が出ていた。




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