そんな自分がこんな二人に、命令なんて出来る
――お願いはするが、、、
PCの前でフリーズしていた後ろから、無駄にイケボが響いた。
「あ、ヤバそうですねぇ」
振り返った。
このデンタイが設立される前、警備局警備運用部の警備第三課で特別処置班に所属していた
大下と楓が観ていたモニターを、後ろから覗き込んでいる。
――やった! こいつだ!
大下は彼に、希望の光を見ていた。
――こんなややこしいの、彼に任せれば、、、
名案とばかりに、手もみして声を掛けた。
「波働君、彼女の、、、」
「すみません。無理です」
言い終わる前に、絶望に落とされた。
「え、、、?」
大下係長、本日二度目のフリーズ。
まったく気にすることもなく、波働はモニターを覗き込んだ姿勢から上半身を起こして自分の席に着くと、PCをスリープから立ち上げていた。
それでも自分に視線を向けて来る大下係長に、冷たいイケボ。
「ご存知の通り、速水颯太の事件で急遽作られたこの情報通信局、情報技術解析対策課及び、警備局警備運用部警備第三課特別処置班、合同特別特殊電波対応係、言ってみると、やっぱり長いですね」
そう言って係長、楓を見た。
楓、ムカつく!
「通称、このデンタイに廻されてはいますが、元々私はそんなカテゴリーが出来る前から“そっち系”の犯罪を扱っています」
聞かされていた。
この波働という男、世間にEG使いが知れ渡る、いや、EG使いが現れるもっと前から、表には出ない裏の、妖怪なのか幽霊なのか何なのか自分には分からない世界の事件を扱っていたらしい。
この若さで変に落ち着いてる姿と、話しながらキーボードをカチャカチャ叩いてるのを見ると、そういったものに対して何度も修羅場をくぐってきたのだろうとついつい納得してしまう。
さらに、嫌みなほど丁寧な言葉で正論を畳みかけられてしまうと、、、。
「いや、そうだけど、、、」
としか答えられない。
楓、さらにムカつく!
個人的な役職では波働の方が上だが、、、キャリア組だし。
でもこのデンタイになると、大下係長の方が立場が上になるという
なんと命令しにくい事か、、、。
――あ、命令はした事無いか
それを
「立場上あなたの下に付いていますが、
「そうなんだけど!」
大下係長の口調に合わせて、楓のムカつきもヒートアップ。