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蝶舞山揺 伍 その6

 波働は気にせず必要なデータを固め、移行のためにUSBメモリを差し込んだ。

 その動作中も、言葉を切ろうとしない。


 「で、何が優先かというと、現在本庁絡みで術屋の一派と、の道具屋筋の両方から、結界の処遇しょぐうについてせっ突かれてましてね」


 波働、コピる。


 「特に術屋からは監視役の人も、、、あ、彼がその監視役として来てくれている、、、来てくれている? どっちでも良いか。“波付なみつき”の徒波となみさんです」


 係長、ドびっくり!

 波働の他にもう一人居たなんて、、、!


 ――私より影が薄い


 勝手にそう思い、勝手にちょっと笑いそうになる。

 そんな大下係長の理解度はどうでもよく、言いたいことだけを言うザ・波働スタイル発動。


 ちょっと“出来ると自負する”輩に多いタイプ。

 その横で、徒波と紹介された男が頭を下げた。


 「どうも」


 慌てて恐縮し、大下も頭を下げる。


 「あぁ、、、こりゃどうも、、、」


 互いを見合う、中年二人。

 会話は、、、始まらない。

 中年二人は置いといて、波働は変わらず言いたいことズバッと言う。


 「そういう訳で、手が離せない状態なんですよ」


 作り笑顔で立ち上がると、波働は自分より立場が上の背が低い係長の肩をポンポンと叩く。

 何か言おうとした大下に、波働はさらに言葉を浴びせる。


 「ま、有難いことに係長にも前回活躍したチームがあるじゃないですか。すぐ人を殴っちゃうと、後先考えずにやたらと撃っちゃう帰国子女が」


 ――コラコラ。それはハッキリ言っちゃいけないやつだよ!


 偉いさん二人の孫と娘を毎日気を使いながらお世話をさせて頂いてる身としては、そのへんの言葉使いにはかなり気を使っているのだ。


 「おいおい慶壱けーいっちゃん、今のんちょっと聞き捨てならんな~」


 楓が席を立った。

 係長を退け、ずずい~と前に。


 「おっと、これは失礼。そこに有能でホワイトハッカーが居たとは気付きませんでした」

 「ほほ~、ええ度胸しとんのぉ、、、」


 ググっと顔を波働に近付けていく楓。

 間近で睨む。

 負けじと波働も、楓の視線を正面から受け止める。


 ――コイツ~~!! 顔がタイプだけに、余計ムカつく!


 「それより、『けーいっちゃん』て、、、センスの無い呼び方は、、、」

 「アホか! 関西人はみんな名前の最後に『いち』が付いたらそう呼ぶわ!」

 「みんなって、関西では何人以上を『みんな』って言うんですか?」

 「以外をみんなって呼びますぅ~~」


 楓と話してもらちが明かないと、肩をすくめる波働。

 それを見て、楓が秒でツッコんでいた。


 「欧米かっ!」


 波働、キョトン顔。




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