目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

蝶舞山揺 伍 その9

 解るが、考えるだけでイライラ感満載。


 ――どこが結界にちょっかい出してきてるんだろう、、、


 そう、結界。

 そこにあの安倍まゆらが、ここんとこ頻繁ひんぱんに出入りしている。

 ここ最近で赤マル急上昇中のEG使い、ハピハピのせいだ。


 彼の、恐ろしい能力。

 世界を一変いっぺんさせるかも知れない能力、、、。


 ミカドがこれに対応すべく、めいを下したのは周知の事実。

 波働が確実な情報として持っているのは、ここまで。


 ミカドから、しも御門へくだっためい

 そのめい御門家のドコが請負うけおい、ダレに依頼したのか、、、?


 波働の予想では、最終的に受けたのが安倍まゆら。

 、、、と、思っている。


 御門家と言えば、この業界で知らない者が居ないお家柄。

 素人シロートには有名なんだけど、業界では術屋の四大名家には絶対に入れない。

 は、千年以上経っても変わらないみたいだ。


 まぁ何処どこからの依頼だろうと、下請けは無下むげに断れない。

 情報では御門家としか解らなかったので、どの御門家か解らない。


 ――水か、火か、風か、土か、、、


 本命は、土御門。

 安倍まゆらの姓がホントは土御門なんだから、そこからまゆらのもとに仕事が回って来たと考えても不思議は無い。


 これが、波働が勘違いした最大の理由。


 結界の状況。

 ミカドの動き。

 土御門と、まゆらの関係。


 加えて、ミカドのめいは御門家が請け負ったのに、本庁は独自に四術宗家を使ってをしようとしている。

 の手伝いを、波働に振って来た。


 事柄が意味深に重なる。

 これはもう、絶対にある。

 そう思っても仕方がない。


 だから波働にしては珍しく、裏取りせずに思い込んでしまった。

 まゆらの動きも、実際そう思わせるものだったから、、、。


 「他には、、、?」


 大下係長は、珍しく波働に食い下がった。

 少しでも、あのの情報が欲しい。

 助けになる情報が、欲しい。


 「残念ながら、確実な情報として話せるのはそれくらいです」


 波働、ウィンク。

 楓、ドびっくり!


 「忘れないで下さいね。EGユーチューバー、“ハピハピ”です」

 ――なんでウチにうたん?


 それだけ言うと、波働は自分のデスクから幾つかの書類と差し込んでいたUSBメモリを引き抜き、振り向きもしないで部屋を出た。

 徒波と呼ばれた男も、影のように後に続く。

 閉じた扉を睨みながら、大下は楓を呼ぶ。


 「小早川くん、、、」

 「ハイハイ。ルネに連絡取ったらえんかな?」


 楓は、情報分析にかけては一流だ。

 もちろん今、大下係長の気持ちを察した。


 「頼む。それで、、、」

 「みなまで言いなさんな。ルネには残業って言うとくし」


 そう言いながら、楓は自分のデスクに座り直す。


 「取り敢えず結界に向かわせて、映像のを確保やね」

 「あぁ、、、」

 「ほんでウチは、イケスカン課長の言うたハピハピの情報やね」

 「そうだ。宮崎佳穂が、EG使い達のオモチャにされる前にな」


 言いながら、脳裏にはあの少女、安倍まゆらの姿を大下は浮かべていた。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?