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稚知謀大 弐 その4

 正直、モノアイから連絡が来た時から作戦は丸投げしている。

 ある意味、堂々とした性格の佳穂だった。


 「まずは、オレがる日本橋までおいで」

 「日本橋?」

 「そや、そこまで来たら、妹を助けるのに必要なモンを渡すわ」

 「へぇ~、、、」


 いまひとつ理解できないが、従うしかできない。


 「どれくらい?」

 「そやな、あんたの足やったら、1時間半もあれば着くかな」

 「1時間半っ!」

 「なんやねん」

 「このか弱い美少女を1時間半も歩かすの?」


 物怖ものおじしない佳穂のツッコミに、モノアイは親しみを覚え始めた。


 「我慢しぃ。ここまで来れたら、絶対に悪いようにはせん!」


 たのもしい一言ひとことだった。

 朝から警察に行っても盥回たらいまわしにされて結局相手にされず、一人で結界に来て自撮りを始めた不安でいっぱいだったあの時の心境とは全然違う。


 助けてくれる人が居る。

 モノアイ。

 稲ちゃん。


 特に稲ちゃんは、結界内で普通の人としゃべれたって事で佳穂を想像以上に安心させてくれていた。

 落ち着いたら、甘えた冗談も言えるようになる。


 「車無いの?」

 「さっき言うたやろ、メモってへんかったんか?」

 「解った。歩くわ、、、」


 ――1時間半、、、か、、、


 そこは変わらない事実。

 佳穂は、溜息ためいきをついて歩き始めた。


 「1時間半あったら、色んな話しも出来るしな」


 佳穂の声から何を感じたか、モノアイが優しく気遣きづかう話し方になっていた。


 「そやな。そゆことにしとくわ」


 二人して、小さく笑っていた。

 歩き出してスグ、佳穂は聞かずにはいれない質問をモノアイにしていた。


 「それより何でガラケーなん?」

 「あぁ、教えたるわ。それな、さっきエレクトリック・ゴーストがちょっかい出すって話ししたやろ」

 「うん。したな」

 「スマホも当然狙われるねん」

 「聞いた聞いた。半導体やろ? メモったで」


 モノアイ、笑う。


 「それがな、エレクトリック・ゴーストも、好き嫌いがあるのに気付いてん」

 「スキキライ?」

 「スマホはめっちゃ狙われるけど、ガラケーは狙われへんねん」

 「どゆこと?」


 これはなかなか興味深い。


 「理由は分からんけどな、エレクトリック・ゴーストってスマホが使う4Gとか5Gが、めっちゃ好きやねん」

 「最新やもんなw」

 「でも何でか、昔のCDMA1は、全っ然ちょっかい出して来よらへんねん」

 「へ~、、、」

 「しゃーからな、EG使いでなくてもCDMA1を使えば、結界内で普通に通信が出来るっちゅう訳や!」

 「あんたやるな~」

 「もっとめてや」


 そんな二人の会話は、曽根崎新地の交差点を梅田新道交差点方面へ曲がったところで交わされた。


 日本橋へは、まだ遠い。




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