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その後

 太陽の光を感じる。


 体が動かない。

 いや、体の感覚はない。


 しかし、感じる。


「ビュル、ここはどこだ」

「ケイ様。いえ、ケイ。約束を覚えていますか」


 視界は白い。

 真っ白で何も見えない。


「ああ、『様』など不要だ」

「ケイ、ありがとうございます」

「ここは…いや、聖女やギドはどうなったのだ」

「彼らは滅びました。ケイに逆らえば、そうなるに決まっているのに。あれから百五十年ほど経過しています」


「そう…か」

 俺は安堵した。しかし、俺は滅びていない…のか?


「ここは、森の中。丘の上の一本の木です」

 ぱっと視界が広がる。

 青い空。はっきりとした白い雲が数個。

 夏の景色に見える。

 眼下には、鬱蒼とした森が、濃い緑色をしている。


「俺は、お前に取り込まれたのか」

「わたくしたちは、元より一つ。戻ったのです」


 俺は…


「ビュル。頼みがある」

「なんでしょう」

「俺を消して…取り込んでくれないか」

「それは出来かねます。ですが…」

 ビュルは何かに逡巡している様子だ。


「お前が俺を支配しているのではないのか?もう、好きにしたらいい」

「わたくしは、ケイを支配しておりません。対等な関係です」

 対等…か。

 ならば、取り込めるはずだと思うが。


「統合できるのではないか」

「本当に…よろしいのですね?」

「ああ、お前には世話になった」

「ケイ…様。では、はじめます」


 俺の意識は、朦朧としてきたような気がする。

 どうなるのかは不明だが、終わらせたかったのは確かだ。

 自分が『薄まっていく』感覚がある


「ビュル、ありがとう」

「ケイ、共に世界を見守りましょう」



 俺は消えたのか


 一本の木として、そこにあるだけだ

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