無言のまま、氷の
にっこり笑う。
「あんた、
――あぁ、、、やっぱりその事か、、、
心の中でそう思ったが、それよりも正直に答える方が優先だ。
恥も外聞も無く、住職は激しく首を縦に振った。
「ももも、持ってません」
ユキオンナは大袈裟に肩を
「ほら。
「ん?」
リーゼントの男は意味が解らなかったが、次の言葉で理解した。
「答えられたら、刺されへんやん?」
横のオトコマエな女は、『?』な顔をしたが、リーゼントの男は
「おユキ、、、。そんなんやってたら、
「そうかぁ?」
「質問、俺するわ」
「え~~~。まぁ
ユキオンナはその場を下がり、後ろのオトコマエな女の横に立ち直した。
「住職、もう痛いのんはいらんやろ」
激しく頷く。
「今から聞く事、全部即答な。即答せぇへんかったら、質問すんのん、また後ろの
住職の眼が、必死で訴えていた。
何でも聞いてくれと、、、。
即答だ。
即答で答える自信が、マンパンにある。
「犬神は、誰が持ってる?」
リーゼントの男の質問。
住職は急いで答えた。
「こ、
「それ、
「あらへん。犬神は女系に
う~んと悩むリーゼントの男。
ちょっと無言でいると、後ろから美少女が来ようとしたのに気付いて、リーゼントの男は慌てて質問を
「ほんだら、何でコレあんの?」
住職が縛られている屋根の下、そこに
「こ、これは
「な~る、、、」
納得する男の後ろから、あの美少女が近付いてきた。
住職の眼が、必死に眼の前の男に
「あたし、めっちゃ欲しいねん。どうやったら
リーゼントの男が、『早く答えや』と目線で住職に伝える。
「い、犬神は女系遺伝の形態で受け継がれる術式やから、、、そこに
美少女が、さらに顔を近づけて来た。
異常にカワイイ、、、。
「そんでも、、、欲しいねん」
「奪えはせえへんけど、
「それそれ。そういうのん聞きたいねん」
住職は一度、大きく唾を飲み込む。
「犬神に憑かれた
「
男は改めて笠塔婆を見上げて、頷いた。
「ふ~~ん、で?」
ユキオンナはそんな事より、答えが知りたい。
「い、犬神本体に、
ほ~~~~。と住職の前に居る二人は顔を見合わせた。
ニヤ付くユキオンナ。
リーゼントの男は、さらに疑問が湧いた。
「それだけで、犬神の力が
「そ、そうや」
「でも住職さんさぁ、さっき能力は女系遺伝って言うたやん?」
「それは授かった能力を“子”だけで繋げるための条件や。本体に噛まれた者は男女関係無く、能力は貰える」
ほほ~~~~。と再度顔を見合わせる。
「ほんだらこれが最後の質問や」
うんうんと頷く住職。
「その、犬神本体は、
「和歌山、、、高野山、、、」
答えた瞬間、空気が冷たく感じた。
住職の思い違いではなく、身体の体温が確実に下がっている。
足先の感覚が、もう無い。
痺れてるのか、痛いのか解らない。
視線を落とすと、信じられ無い事が自分の身体に起こっているのに気付く。
ハッキリと、氷が足先から自分の身体を覆っていくのが見える。
覆われた冷たさで一瞬痛く感じるが、スグに何も感じなくなり感覚が消えていく。
住職は、じわじわと氷に覆われる自分の身体を、ただ、見下ろしていた。
膝を越え、腰を過ぎ、さらに腹から胸へと、氷が上がって来る。
何も出来ない。
「あ、、、が、、、が、、あぁぁぁ、ああ」
内臓が冷たくなるのが、感覚的に伝わって来た。
その冷たさが、もう喉にまで上がってきている。
眼を見開いた。
開いたが、視界は白く薄れていく。
遠ざかる意識の中で最後に、心の無い天使の声が聞こえた。
カワイイ天使の声、、、。
「はい、お疲れさん」
ユキオンナが言い終わる前に、住職の身体は見事に凍っていた。
「アカンやん!」
リーゼントの男が、怒って声を荒げる。
それをまったく呑気に、ユキオンナが聞き返す。
「何やのん?」
「場所を、、、」
「高野山って言うたやん」
「高野山て、山やんけ! 広すぎるわ!!」
と言って肩を落とした男に、ユキオンナは凍った住職の頭をポンポン叩きながら笑った。
「えぇヒマつぶしや。なぁ、そう思わんか?」
後ろのオトコマエな女に言った。
にっこり微笑んだ。
そのやり取りに、男はさらに肩を落とす。
「ほれ!」
ユキオンナは無造作に何かを投げた。
条件反射で、思わず受け取る。
受け取って、リーゼントの男が見た。
車のカギ、、、。
「俺運転かい!?」
カギを握ったまま『しまった!』と顔を
「ほな行こか」
天使のような美少女は、そう言うと楽しそうに歩き出していた。