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競馬小説ドリームメーカー
競馬小説ドリームメーカー
泉水遊馬
現実世界スポーツ
2025年04月22日
公開日
33.2万字
連載中
長編競馬小説!! 20年近く前に書いた処女作。 もはや作文レベル!! 小さな牧場に生まれた2頭のサラブレッド。 良血馬ファンタジスタ 傍流血統ドリームメーカー 血は巡る、夢とロマンをのせて…。 ライバルたちとの戦いの中で生産者、馬主、そして騎手の栄光と葛藤を描く。 未来的競馬アナザーワールド【ドリームメーカー】。 お楽しみください。 ※作品中のレース日程は執筆した2007年度のプログラムとなっております。 遥か昔に書いた処女作です。お見苦しい点もございますが、よろしくお願いいたします。

夢…再び-2



有馬記念の1週前。


僕は栗田とともに北海道の病院へと来ていた。

日本競馬界を支えてきた重鎮、社来グループ会長【吉野善吉】氏に挨拶をするためである。

飛田社長の紹介で、入院先の病院での会談となった。

だいぶ高齢であるようだが、今もベッドの上から現場に激を飛ばす現役のホースマンだ。

先週、社来グループのひとつであるサンダーR所有のスピードオブライトが朝日杯FSを勝った。


今だ日本のトップに君臨する社来グループ会長への挨拶に少し緊張をしていた。



「失礼します。」

僕と栗田は病室に入った。


そこにはベッドに横たわる一人の老人。


「やぁ…田辺さんかね?飛田の若社長から聞いているよ。」

吉野会長は穏やかな口調で僕らを招き入れてくれた。


「このままで失礼するよ。」

吉野会長は寝たままで話をする事を僕らに断った。


「この度、馬主になりました田辺です。よろしくお願いします。」

僕は頭を下げ挨拶をした。栗田もそれに合わせ頭を下げる。


「別にわしの所になんざ挨拶にくる必要ないんだがな。飛田の若社長なりの義理だろう。


まぁ、がんばって。

なかなか愉快な世界だぞ。」

吉野会長は笑って見せた。


栗田がちょっと興奮ぎみに口を開いた。

「吉野会長のご功績があったからこそ今の日本競馬の発展があったんです。本当に…お会いできて光栄です…!」

なるほど、ミーハー炸裂だな。


しかし栗田の言うように吉野会長の功績は大きい。

ノーザンテースト、トニービン、そしてサンデーサイレンスの輸入によって日本競馬は徐々に世界レベルへと実績を上げた。


常に日本競馬は【社来発】、すなわち【吉野善吉発】で発展をしてきたと言っても過言ではないのだ。


「ハハハ…まぁ挨拶はもういいからとりあえず座りなさい。」

僕らはベッドの横にある椅子に腰を下ろした。



「お体の方はいかがですか?」

僕は吉野会長に聞いた。

「ああ、だいぶ良くなったよ。別に入院するほどの事もなかっただが、息子に無理矢理連れてこられたよ。

まぁ来週には退院して家で正月を迎えれそうだ。」


吉野会長は今だに現場である牧場作業をされている。その作業中に暴れた繁殖牝馬に追突され腰を痛めたそうだ。

高齢のために大事をとって入院されている。


「田辺さん、キミはかなり有名人らしいな。わしはコンピュータの世界なんてのはまったくわからんが、うちの息子らはキミの事を知っていたよ。

あのベル・メッツと同業者なんだって?

華やかな世界なのだろうね。

今日はあいにく仕事で来られなかったが照文もあなたに会いたがっていたよ。

是非うちの牧場にも寄って馬を見てってください。」


吉野会長はまだまだお元気そうだ。


栗田が再び口を開く。

「来年デビューの社来さんの有力な仔馬はどの仔ですかね?」


栗田のこの言葉に吉野会長の眼光は鋭くなった。

「栗田さんだったかね?

よし…今日は特別に教えてやろう…!!」


さっきまでの穏やかな老人とはまったく別人の吉野会長は、すでにベッドから身をお越して全身を使って僕らに説明をしてくれている。


飛田社長曰く

【吉野会長は情熱の塊】。


まさに今だ情熱まっしぐらのホースマンの姿であった。




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