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恋のマッチアップ番外編 膠着状態11

「笹良も一緒に気持ちよくなろう?」


 小さく笑いながら腰に押し当てていたモノを、わざわざ移動して俺のに押しつける。


「やっ、やめっ」


「布地越しでもわかる。笹良のすげぇ熱くなってる」


「あっあっ、動かすな」


 上半身をキツく抱きしめられているので、これ以上は逃げられない。というか逃げようとした時点で加賀谷のモノに擦れてしまって、自ら感じることになってしまう。


「加賀谷、こんなふうに無理やりは嫌だ……」


 震える笹良の声に、加賀谷の動きがぴたりと止まった。


「笹良は俺のこと、嫌いじゃないんだろう?」


 顔に寄せられる加賀屋の顔。まっすぐ視線を注がれるせいで、逸らすことができない。


「き、嫌いじゃないけど……」


「けど?」


「気になる存在というか、なんというか――」


 口ごもる俺に、加賀屋は柔らかく微笑みかけた。


「笹良、どうしたら俺のことが好きに変わる?」


「無理に変えなくても、このままでいいんじゃないかと」


 他にもなにか言いわけめいたことを告げると、加賀谷はまっすぐな視線を俺に送りながら語りかけた。


「俺は笹良が好きだよ。だから笹良にも同じ気持ちをもってほしい」


「うっ!」


 唐突な告白に頬を赤らめつつ、視線を右往左往させるしかない。


「笹良、大好き」


 隙だらけの俺に、加賀屋はゆっくり顔を近づけてキスをする。今までされた中で、それは一番優しいキスだった。押しつけられる唇はとても軽く、それがなぜだか不安になる。


「か、がや……」


 喋れるくらいに余裕のありすぎるキスの最中、思わず話しかけると、加賀屋は少しだけ距離をあけた。だけどそれは近くて、俺の目に加賀屋の顔がぼやけて映る。


「笹良?」


「そんなキスじゃ嫌だ……」


 思わず口走った自分の言葉に驚きを隠せず、慌てて両手で顔を覆い隠した。


「どうした?」


「なんでもない! 間違っただけだから!」


「間違ったって、なにが?」


「やっ、えっとそのぅ」


 間髪入れずに問いかける加賀屋に、頭の中は混乱をきたした。愛の告白をされただけでも返事に困ったというのに、自らキスを強請ってしまったことについて、説明のしようがない。


「笹良は意外とエッチだからな、激しいのが好みなんだろう?」


「そんなことないっ! 絶対に!」


「そんなことあるって。体育館で抱き合ったときも――」


「終わったことをグチグチ言うなよ!」


 覆い隠した顔の熱が、てのひらにじわっと感じた。いろんなことが恥ずかしくて、どうにも手を外せない。


「言うに決まってるだろ。照れる笹良やエロい笹良も、俺の好みだし」


「やめろって!」


「ちなみに笹良が好きな俺って、どんなところ?」


 不意に問われた言葉に、頭を切り替えて真剣に考える。瞼の裏に浮かぶ加賀屋の姿を、淀みのない言の葉で告げる。


「……迷いなく相手陣地に向かって、ひとりで乗り込む勇敢なところだったり、どんな状況でもスリーを決めるところ」

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