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恋のマッチアップ番外編 膠着状態12

「エッチな俺は嫌?」


「俺は男だ、そんな対象じゃないだろ」


 俺が喚くと、加賀屋は顔の前にある両手を力ずくで外した。まっすぐ注がれるまなざしに、うっと言葉を飲む。


「そんなの関係ない。だって笹良だから」


「でも……」


「笹良の全部を、俺のものにしたい」


「うぁ、そんな、の」


「このまま強引にしようと思えば、スムーズにコトを進められる。だけどそれをしたくない俺の気持ち、わかってくれよ」


「加賀屋……」


「俺のこと、気になってるんだろ?」


「ぅ、うん」


 加賀屋に導かれるように、すんなりと答えてしまった。それは嘘偽りのない気持ちだったので、あっさり告げることができたのだが――。


「気になる俺に触れられるの、嫌か?」


「嫌……じゃなく、恥ずかしくて」


「俺も恥ずかしいよ。だけど笹良だから、全部見せられるんだ」


「加賀屋も?」


 恐るおそる訊ねたら、加賀屋は満面の笑みを浮かべた。


「大好きな笹良に、俺のすべてをあげることができる。もらってくれないか?」


 徐々に掠れる加賀屋の声を聞いただけで、なぜだかさっきよりも躰が熱くなった。触れられるだけじゃなく、見られることでも羞恥心を煽られていたのに、今はそれすらいいやと思えるようになった。


 俺は喉を潤すべく、ごくんと飲み込んでから、意気込んでセリフを告げる。


「加賀屋になら、あげてもいい、よ……」


 そう口にした瞬間に、加賀屋の両腕が痛みを感じるくらいに俺の体を強く抱きしめた。


「笹良を大事にしたいから、いきなりはしない。だから安心してくれ」


 耳元で囁かれる声に、黙ったまま首を縦に振った。


「笹良、好きだよ」


 甘い吐息と一緒にくちづけられたせいで、返事が宙に舞う。


(――俺もだって言いたかったのに、加賀屋のヤツはまったく)


 抱かれる悦びに躰を震わせながら、加賀屋に身をまかせたのだった。

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