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第21話 父と娘 下

「もう終わりだな」


父さんは徐々に手に力を入れていく。嫌だ、終わりたくない…セラと出会ってからここまで来たんだ。目の前には会いたかった父さんがいる。


手と足は動く。あとは気持ちだけだ!動け、動け、私の身体。


「…だ」

「ん?」

「まだ終わらない!」

「!?」


私はお父さんの腕を力強く掴み、少しずつ頭を離した。


「どういうことだ?セラの意識は飛ばしたはず。まさかアオ……」

「……はは、やっと呼んでくれたね。お父さん!」

「なっ!?」


私は腕に魔力を全集中し、力強く投げ飛ばした。


「……はぁ、はぁ。お父さんがどんな理由で行方不明になったのかは知らない。でも、お父さんを思って慕っていた……私のセラを傷つけることは許さない!」


私は魔力を練る姿勢になり、魔力を練り始めた。


なんだろう、この感覚。湧き水のように魔力が溢れてくる。


「はぁぁぁ!」


魔力が波のように現れ、私を包み込んだ。


「この魔力量、まさかお前、覚醒したのか……」

「行くよ、父さん」


私は素早く間合いを詰め、下から拳を突き上げようとした。


「はぁぁ!」

「っつ…早い…!?」


父さんは素早く防御の術を展開したが、それは私の狙い目だ。どんなに防御が強くても、強い攻撃を与え続ければ、防御に使う魔力を削ることができる。


父さんに攻撃の隙を与えない、もっと、もっと早く!攻撃を与え続けて、やっと防御の術にヒビが入り始めた。


「これで決める!」

「させるかぁ!」


父さんは手刀で私の拳を叩き落そうと振り下ろした。


ドゴォン!と凄まじい音が鳴り響き、辺りに土煙が広がった。そして、その場に倒れていたのはアオで、立っていたのはリヴィアタンだった。


「はぁ……はぁ……お前たちがこの短期間でここまで強くなるとはな。だが、この戦いは俺が……」


リヴィアタンは勝利を確信し言いかけたその時、アオの姿が急に消えた。


「なっ!?」


リヴィアタンの足元の地面が割れ、下からアオが現れた。


「はぁぁぁぁ!」


リヴィアタンは防御の術を展開するが、アオの拳はリヴィアタンの防御術を突き破った。そして、その拳はリヴィアタンの顎に直撃した。


私の拳を直撃を食らった父さんは、身体を動かすことも出来ず、そのまま後ろへ倒れた。


「はぁ……はぁ…」

「くっ、あの状況で姿化かしすがたばを使うとはな」

「父さんと戦うって知らされたとき、セラや皆にバレないように作戦を練ったんだよ。父さんの資料を全て読んで、何万通りの作戦を考えた」

「……そうか。審判」


父さんは満足そうな表情をし、審判に話しかけた。


「俺はもう動けない。ギブアップだ」

「……勝者、セラ・クロッソ・シーラカンス!」


トリトーンの掛け声により、会場は大きな歓声に包まれた。


父さが医療班に運ばれようとしたとき、私に声を掛けてきた。


「アオ、後で医務室に来い。そこで、話すことがある」

「……分かった」

「お前の中で眠っている、セラも一緒にな」


父さんがそう言うと、そのまま医務室に運ばれていった。

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