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第50話 いざ旅へ

 旅支度のためオクト君と寮に戻った私を、ランベールさんが出迎えてくれた。


「お早いおかえりですね。オクタヴィアン卿とイグナート卿?」


「ああ、これからちょっと任務で遠出なんですよ! な、イグナート!」


 そう言ってオクト君は私の背中を軽く押すと、挨拶をして私達は部屋へと戻って行った。


 ****


 そういえば、ランベールさんからアウストラリス山の事を初めて教えてもらったんだよね。……あの懐かしむような感じは、なんだったんだろう?


「どした? 早く準備しちまおうぜ?」


「あ、うん!」


 必要最低限の荷物だけまとめると、私達は部屋を出た。……ここにしばらく戻って来られないのだと思うとちょっと寂しいな……。


 ****


 本部の入口前に集合だったため、オクト君と向かうと既にリュドヴィックさんとブリアック卿がいた。


「遅くなりましたー!」


 オクト君が元気に言うと、リュドヴィックさんがこちらを見る。


「いや、そんな事はない。気にするな」


 それだけ言うと、リュドヴィックさんが先に馬車へ乗り込む。私達も続いて乗り込み、ブリアック卿の合図で馬達が走り出した。


 ****


 今回はアイナラミを経由せず、真っ直ぐアスケラを目指すんだとか。


 まぁ、私としてはちょっと行きにくかったから、助かるかな……。あんな騒動起こしたわけだし。


 そんな事を考えながら馬車に揺られる。途中で馬達を休ませながら進むと、あっという間に辺りは暗くなってしまった。


「よし、今夜はここで野営だな」


 リュドヴィックさんの指示で私達はさっさと準備を始める。さすがに慣れたからか、設営はすぐに終わり、食事の支度をする。


 今夜はパンに干し肉だ。正直物足りないけど、長期的に考えると仕方ないか……。


 お祈りを終え、みんな静かに食べ出す。ていうか、静かすぎない? えっ?


 困惑しながらも干し肉を口に含み、噛みちぎる。独特の風味が口の中に広がる。なに肉だか聞いたけど、忘れちゃったな……。まぁ、悪くない味だから……。


 ****


 今回も、御者役であるブリアック卿には休んでもらい、私、オクト君、リュドヴィックさんで見張りだ。


 早速、焚き火の前に座り、見張りを始める。寝る前に二人から声をかけられた。


「なんかあったらすぐに起こせよー!」


「イグナート、抜かるなよ?」


 ……私、そんなに頼りないですかね……?


 気を取り直して、私は焚き火を見つめる。


 ……火を見ると……心がザワつくな……。私の『ギフト』が焔系だからかな?


 そんなことを考えながら、私は静かに交代の時を待つのだった。

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