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第27話 ☆物語をきみに

夜のとばりが降りようとしていた。

ぼくは、タイプライターを運んできて、紙を用意した。

心地よい水音がしんと静まった世界に響く。

チェリーピンクは落ち着きがなく、ぴょこぴょここっちに向かって泳ぐ。

フグの仲間は、餌くれダンスを踊るそうだが、アカムシか何かあげたほうがいいのだろうか?

「わたしぃ、泳いでるの」

アフレコしてくすくす笑う。かわいいなぁ。

タッタカタッタカ、チーン♪

今日はどこまで話を書こうか?

自分へのメッセージでもあり、誰かへのお手紙でもある。

そうだな、たまには、お隣さん宛てに話を書いても良いかもしれない。

それがひいては、まだ見ぬ読者宛てになることだろう。


きみは、今眠りの中にいる。

ぼくは、きみが明日の朝目覚めるまでに夜を集めて物語を書こう。

ぼくはこの前、階段を登り降りして、朝日を見に行った。

新しい朝は、ぼくに希望を与え、この惑星が回っていることを証明した。

生きているただそれだけじゃなく、勇気がみなぎるメロディ。それはぼくの心音だった。

この命がゼロアワーに向かって進んでいるとしても、生きた証を遺したい。

だからぼくは小説を書く。そして、きみの中でも生きているんだ。一字一句読み落とさないで。ぼくという存在を記した手紙。

ぼくは小説の中では二次元だけど、きみが読んで咀嚼して、三次元に起こすことができる。

きみの中で次元を超えてぼくは生きる。

今死んで今生まれる。

刹那の積み重ねみたいだね。

ぼくのこと、忘れないで。忘れてもまた思い出して。

生きていこう。


ぼくの書く小説は、機械では真似できない何かでできている。


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