夜のとばりが降りようとしていた。
ぼくは、タイプライターを運んできて、紙を用意した。
心地よい水音がしんと静まった世界に響く。
チェリーピンクは落ち着きがなく、ぴょこぴょここっちに向かって泳ぐ。
フグの仲間は、餌くれダンスを踊るそうだが、アカムシか何かあげたほうがいいのだろうか?
「わたしぃ、泳いでるの」
アフレコしてくすくす笑う。かわいいなぁ。
タッタカタッタカ、チーン♪
今日はどこまで話を書こうか?
自分へのメッセージでもあり、誰かへのお手紙でもある。
そうだな、たまには、お隣さん宛てに話を書いても良いかもしれない。
それがひいては、まだ見ぬ読者宛てになることだろう。
きみは、今眠りの中にいる。
ぼくは、きみが明日の朝目覚めるまでに夜を集めて物語を書こう。
ぼくはこの前、階段を登り降りして、朝日を見に行った。
新しい朝は、ぼくに希望を与え、この惑星が回っていることを証明した。
生きているただそれだけじゃなく、勇気がみなぎるメロディ。それはぼくの心音だった。
この命がゼロアワーに向かって進んでいるとしても、生きた証を遺したい。
だからぼくは小説を書く。そして、きみの中でも生きているんだ。一字一句読み落とさないで。ぼくという存在を記した手紙。
ぼくは小説の中では二次元だけど、きみが読んで咀嚼して、三次元に起こすことができる。
きみの中で次元を超えてぼくは生きる。
今死んで今生まれる。
刹那の積み重ねみたいだね。
ぼくのこと、忘れないで。忘れてもまた思い出して。
生きていこう。
ぼくの書く小説は、機械では真似できない何かでできている。