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なまぐさシスターですが、相談承ります!
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廿楽亜久
異世界ファンタジーダークファンタジー
2025年04月23日
公開日
9,688字
連載中
飲み会で酒を散々飲まされたと思ったら、次に目を覚ましたら、オークションで売り飛ばされそうになっていた。 目の前には、ディスプレイ頭のスーツ姿をした悪魔。 悪魔曰く、私は急性アルコール中毒で死に、異世界に転生したのだという。 あまりの急展開に理解できないことも多かったが、ひとまず上司へ復讐するために、悪魔と契約するのだった。

01

 頭が割れそうな痛みと吐き気。


「今回の収穫は、ひとり?」

「最近は失敗ばかりだったしな。ひとりでも、成功したならいいだろ」


 ひどく耳鳴りのような頭痛の中、誰かの声がするが、全く理解できない。


 むしろ、頭痛がひどくなる気がするから、黙ってほしい。

 考えることすら億劫だ。


 重く伸し掛かってくる瞼に、抵抗する気力はなく、そのまま瞼を閉じた。



「――――」



「――――」



「―― ヘイ」


 誰かの声に意識が浮上してくる。


「ヘイ。お目覚めの時間だぜ? 嬢ちゃん」


 小刻みに揺れる床と誰かの声。

 自分に呼びかけられているような気がして、瞼を開けば、だるさは残るが、割れるような頭痛は無かった。


 これなら起き上がれそうだと、体を起こし、顔を上げれば、目の前には檻。

 それから、こちらを見下ろす青白く光るスーツの、何か。


「…………」


 そいつの頭部は、薄型のディスプレイのようで、少なくとも人間とは思えないのに、体は人の形をしていた。

 着ぐるみだとしても、頭部のディスプレイの厚みは、頭が入るほどではない。

 ”人間”と称するには自信がないが、他に何かと問われると、全くわからなかった。


「グッドモーニング。良い朝だな」

「……はい?」


 檻の向こうにいるそれも理解できないが、状況も全く理解できない。


「挨拶だ。それもわからないのか?」

「え、あぁ、はい。おはようございます」


 檻は、どうやら私を捕らえるための物で、鍵は向こう側についている。

 目の前のそれにつけた方がいいと思うのだが、状況的には、目の前のそれが私を捕らえているということだろうか。


「状況が飲み込めてないみたいだな」


 飲み込める要素がないと思う。


 ただ、目の前の画面に映された顔文字ような顔のおかげで、辛うじてディスプレイスーツの表情は理解ができた。

 今は、”呆れ”。


「端的に言えば、お前は『生まれ変わって早々、売られそうになってる』」


 嘲笑と共に語られた言葉は、簡単には理解することはできなかった。


「どういうこと?」

「言葉通りの意味だ。お前は生まれ変わって、絶賛、オークション会場に移動中。オメデトウゴザイマァス!」


 どうしよう。何も情報が増えない。

 あと普通に、目の前のこいつに腹が立つ。


 辛うじて理解できたのは、私が一度死んで、生まれ変わった事。

 そして、生まれ変わって、早々オークションに売られるために檻に入れられていること。

 それから、赤ん坊というほどではないが、自分の体は記憶にあるよりも、ずっと幼い。


「えーっと……」


 整理するにも、整理するほどの情報がないということしかわからない。


 そもそも、目の前のディスプレイスーツは何なのだろうか。

 この際、人間かどうかは置いといて、立場としては、人身売買の関係者だろうか。


「貴方は、誰? 私を売ろうとしてる人?」


 質問を口にしてみれば、脳が少し整理できたのか、フラッシュバックのように思い出される先程の記憶。


 頭痛がひどかった時だ。

 こことは別の場所で、眠る前に誰かの声を聞いた。

 もしかして、その声の主だろうか。


「違う。あんなバカ共と一緒にするんじゃない」

「状況が飲み込めてないって、そっちが言ったんでしょ」

「…………」


 少し画面がカラフルに光ると、すぐに映像の乱れは元に戻り、こちらを先程と同じ嘲笑で見下ろす。


「なるほど。確かに言ったな」


 随分残念な頭ですね。


 とは言わずに、続きを促す。


「…………まぁ、細かいことはどうでもいいだろ」

「細かくないんだけど」


 状況もわからない。

 話している相手もわからないでは、理解しようにも理解できない。


「…………ちょっとイタズラし過ぎた悪魔だ」


 画面に映される、こちらを苛立たせようとしてくるウインクしている顔に、少しイラっとしてしまった。

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