母さんには
結婚記念日を忘れてたと謝られたと答えておいた。
それなら仕方ないと苦笑していた。
はぁ~ 着いたばかりなのにこのまま
「
家の中に入ったらどうだ、風邪ひくぞ」
これは、帰るわけにはいかないな。
『そうだな、今日は少し冷えるし中に入ろう』
母さんを促して家の中に入り、リビングに鞄を置いてから
洗面所に向かった。
手洗い・うがいを済ませてリビングに戻ると
父さんがコーヒーを淹れてくれた。
『ありがとう』
俺ん家は母さんより父さんのほうが料理上手だ。
小さい頃から料理は覚えておけば苦労しないと教えられ
一人暮らしを始めた時に実感した。
コンビニや外食するよりも遥かに食費が安いし、
当然ながら自分好みの味付けができる。
「夕飯、食べて行く?」
母さんの質問に俺は首を横に振った。
『いや、今日は恋人が
作ってくれるって言ってくれたから八時には帰るよ』
大翔が何を作ってくれるのか楽しみだ。
「そうか、お前の今の<彼氏>は料理ができるのか」
父さんのいきなりの爆弾発言に、
俺は危うくコーヒーを噴くところだった。
『な、なんで……』
恋人ができたと報告はしていたが実家に
連れて来たことは一度もない。
母さんも父さんの言葉に驚いている。
「勘だ勘。
なんとなく<彼氏>なんだろうと思ってたんだ。
それに、その年になっても浮いた話が
一切出てこないから“結婚する気がない”か
“恋人がいても結婚できない”かのどっちかだと思ってな」
まさか、父さんにバレてたとは思ってなかった……
『それで、“同性”しか好きになれない俺のこと、
どう思ってんの?』
母さんは明らかに動揺してるからわかりやすが
父さんは顔色を変えないからわからない。
「なんとも思ってねぇよ、未成年じゃねぇんだし
お前の人生なんだから好きに生きればいい。
そもそも、性癖なんてもんは親がどうこう言うことでもねぇしな」
驚いた、てっきり反対されるか勘当されるかと思った。
「あのな、未成年の内は親の責任だが成人すれば
責任は自分自身で背負わなきゃならないんだ。
性癖も同じだ、お前が同性と付き合おうが異性と付き合おうが
なんなら、一生独身だろうがお前の自由だということだ」
確かにそうだが普通の親は母さんみたいな反応が普通だ。
『いつか<彼氏>、連れてくるよ……』
大翔が卒業したら連れて来よう。
「わかった、楽しみにしてる。
そういや、お前、どっちなんだ?」
これは“夜の営み”について
『ちょっ、父さん!?
……〘抱かれる〙方だよ』
大翔はいつも丁寧に抱いてくれる。