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恋人と言えない寂しさと家族の暖かさ

終業後、スマホを開くと

『〘蒼介さん、すみませんが先に帰っていてください〙』

というLINEがきていた。


一緒に暮らし始めて三ヶ月。


『〘わかった〙』


その間にこんな日は何度かあった。


何時の世もやはり、大人・子供関係なく

告白は昼休みか放課後又は終業後と

相場は決まっている。


つまりはそういうことだ……


何故、待たずに帰るかというと、

一つ目は俺が見たくないから。二つ目は

多佳良た《たから》が見られたくないと言ったから。


いくら秘密の関係でも、お互いを好きなら

告白されている所を見るのも見られるのも嫌だろう。


『〘愛しています♡♡


因みに今日のお相手は経理課のさざなみさんです〙』


毎回、相手を懇切丁寧に教えてくれる。


さざなみさんは社内の一美人だ。


自分に自信を持っている人だ。


『〘なるべく早く帰りますから皆で夕飯食べましょうね〙』


頭では俺を愛してくれていることを

わかっているが心は慣れない。


『〘わかった。待ってるから

早く帰ってこいよ。俺も愛してる♡♡〙』


送信されたのを確認してスマホを閉じた。


『ただいま』


家に着いて多佳良たからが遅くなる件を伝え

洗面所に向かった。


着ていた服を全て洗濯機の中に入れ

手洗いうがいをしてから自室に行き

部屋着に着替えてからリビングに戻った。


「また、告白?」


キッチンでコーヒーを淹れるためお湯を沸かそうと

鍋に水を汲んでいたら遙壱よういちが訊いてきた。


『そうだよ、今日は経理課のさざなみさん。


社内一の美人って言われている人だ』


ついつい、ため息を吐いたら遙緋はるひ

{幸せが逃げるわよ}と言った。


多佳たか君はあなた一筋なんだから大丈夫よ」


妻に励まされる(?)のも可笑しな話だが

俺は信じて待つしかない。


『そうだな』


一時間後、玄関が開く音がした。


『ただいま帰りました』


やっと、帰ってきた。


「お帰り、夕飯食べよう」


着替えて戻ってきた多佳良たから

遙壱よういちが促す。


『そうだね、お腹すいた』


二人は以外にも趣味が合うらしくすぐに仲良くなった。


「今日の相手は社内一の美人だって父さんが言ってたけど

多佳良たから的にはどうなんだ?」


その質問に俺は内心、ドキッとした。


『それは愚問だね。


俺は蒼介さん一筋だから誰から告白されても断るさ。


例え大金を積まれても』


「よかったね父さん」


息子にまで励まされ(?)た。


『蒼介さん、愛してますよ♡♡』


椅子に座ってる俺の前に跪き左手を掴むと手の甲にキスをした。


「やるわね、多佳たか君♬.*゚」


こういうシチュエーションは女性には興奮材料なんだな。


それが、自分の旦那とその恋人でも。

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