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第8話 ドラッグストアに行こう

「ふあ―――良く寝た。……お腹空いたな」


俺は目が覚めてのっそりと起きて洗面所へ向かった。

体質的に口臭が気になるので朝いちは必ず歯磨きするのが俺のルーティーンだ。


そして洗面所で鏡を見て固まってしまう。

めっちゃ美人がいた。


……そっか。

やっぱりこれ現実だわ。


とりあえず歯磨きしよ。


なんだか可愛らしい歯ブラシになっているけど考えたらダメな気がしてそのまま使う。

見たことないような高そうな歯磨き粉だけど……


まあいいや。


……この子歯もめっちゃきれいなんだが。

うわー、白っ!


ん?なんだこれ?

舌磨き?


へー、ほんと女の子って大変だね。

マウスウオッシュもある。


あーそっか。

歯と舌磨いたらマウスウオッシュして、顔洗って、そして化粧水だね。

さらに乳液っと。


うん。

いま「はあー」ってしたら、凄くいい匂いがした。


きっと努力の賜物なんだろうね。

舌もピンクできれいだったし。

もしかしたら俺は、ろくに努力しないで体質のせいにしていたのかもな。

戻れたら頑張ることだらけだね。


女の子ってすごいわ。


ああ、でも、朝シャワーするなら、歯と舌と顔やって、化粧水に乳液、さらに髪の毛まで整えてって……


やばい。

マジで2時間くらいかかるかも。


そして必要な子は化粧も?


うわーマジで男も頑張った方が良いな。

戻れたらおれも頑張ってみよ。


一応やるべきことはやって俺は台所へと来た。

ご飯食べないとね。


よく考えたら昨日朝しか食べてなかった。


「うーん。お米あるからチンして……納豆?……うーん。この子多分食べないよね?海外の人はだめらしいもんね。なんか朝はトーストにサラダ、100%ジュースみたいなイメージだもんな」


でもまあ、いっか。

今主導権は俺だもんな。


冷蔵庫から一昨日買っておいた「お徳用ウインナー」を取り出してフライパンで炒める。

ついでに職場でもらった今年初物のレタスをちぎって……これでいいや。


……そう言えば俺昨日からタバコ吸ってない。

禁煙できるかも!


あー、タバコ吸って特に気にしていなかったんだよな。

そりゃ口、臭かろう。



※※※※※



ご飯食べて食器洗って洗濯物干して、準備OK。

買い物行こう。


その前に服か。

俺は恐る恐るクローゼットを開けてみた。


「あーそっか。こうなっているんだね」


そこには女の子が着るようなひらひらした服がかなりの量ハンガーにかけてあった。

この子の好みなのか、淡い系が多い。

海外の流行りなのかな?


一番右にある服を取り出してみた。


「うーん。普通のシャツっぽいな。……ああ、これがブラウスとかいう奴か。じゃあ上はこれで、下は………スカートはちょっと抵抗あるな……おっ、このズボンカッコいいね。これにしよ」


後靴下と、羽織るのはこのカジュアルなジャケットでいいかな。

うわっ、可愛い。


やっぱ美人は何着ても似合うね。

この子スタイルお化けだもんな。


よしっ、行くかな。


『ねえ、ちょっと待って。日焼け止め塗らないとだめだよ?』

「あ、おはようニーナさん」

『!?う、うん、おはよう』

「はい、日焼け止めだね?顔とか塗る感じで良いのかな?」

『あー、顔は乳液が成分入りだから、一番は腕と手、後着るものによるけど足も結構きちゃうから気を付けて。あと首とかだね』

「うん、ありがとう。ぬってみるね」

『うん。よろしく』

「まかせて」


今日はニーナさん機嫌良いみたいだ。

なんか嬉しいかも。


言われた通り日焼け止めを塗ってから俺は財布を後ろのポケットに突っ込んで軽トラックのカギを持ち玄関へと向かった。


『ちょいちょい、ねえ、まこと、かばんは?』

「ん?かばん?……何に使うの?」


えっ?なんかすごく呆れられた気がするけど……


『はあ、あのね、化粧直したり、日焼け止めとか、後ハンカチ、ティッシュ、携帯とかいろいろあるでしょ?女の子はポケットとかに財布入れる子少ないからね?』


おう、そうなんだ。

うーむ。

リュックとかじゃダメなのか?


『ダサいでしょうが』


うん。

あれ?

俺今しゃべってないけど……


『あーごめん。君が考えていること分かるんだよね。だから人前ではしゃべらなくていいよ。変な人だと思われちゃうでしょ』


「え……じゃ、じゃあ、俺が思っていること全部ニーナさん分かっちゃうの?」

『まあね。……君すごくいいよ。変なこと考えてないし。気に入った』


おう、まさかの高評価だ。

良かった。

嫌われているかと思った。


「じゃあさ、とりあえず今可愛らしいカバン無いから今日買うかな」

『……ねえ、お金とか大丈夫なの?社会人でしょ。その、農業関係だよね』

「うん。さっき見たらさ、意外と貯金あったんだよね。多分タバコ吸わない人だったみたいになっていてさ。意外とタバコ高いから。その分貯金多かったみたいなんだ」


うん、これはガチ。

タバコ俺吸っていたの1箱580円もするんだよね。


19歳から吸っていたから4年として……やばっ、80万円くらい違っちゃう計算だな。

ん?

80万……ローン払いきれてるじゃんか。


あー何かショックだわー


もし男に戻ってもタバコやめておこう。

なんか気付いたら吸えないわー。


『ねえ、あとちょっと気になっていたんだけどさ』

「うん?」

『まこと、一人なの?こんなおっきい家なのに』

「あー、うん。去年ばーちゃん死んでさ、俺一人なんだよね。高校生の時事故で両親亡くなってるからさ、天涯孤独ってわけ」

『……ごめんなさい』

「えっ?良いよ、全然気にしてないから。……だからさ、ちょっと嬉しいんだよね」

『えっ?』

「あー、ニーナさんは気持ち悪いかもだけど、俺今のこの状況がね。最近一人だったからさ」

『……』


あ、黙っちゃった。

うーん、俺デリカシーないから言い方悪かったのかな?


「じゃあ買い物行くね。カバン無いから代わりに高校の時から使っていたからちょっとぼろいけど、お気に入りの肩がけ鞄があるから、今日はそれで」


俺は自分の部屋に戻ってクローゼットを開けた。

さっき服選ぶときに有ったのは確認していたんだよね。


最初にこれ使ったのって……告白した日だったな。

昨日話をしたせいか何だか少し切ない気分だ。


「しっかりしろよ誠。……もう昔の話だぞ」


俺は自分に活を入れ、家から出かけた。

バイク大破しちゃったからな。

修理出さないと。


俺はばあちゃんが使っていた軽トラックに乗って、一番近いドラッグストアめざし携帯の音楽を流しながら、ちょっとしたドライブを楽しんだ。


凄い田舎だからさ。

一番近いドラッグストアまで家から15キロくらい距離があるんだよな。


こっちで就職した後、高校の時の友達遊び来て吃驚してたもんな。

一番近いコンビニだって12キロも離れてるし。


さあ、多分俺、吃驚するだろうけど、必要なもの買いますかね。


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