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第9話 いざ、買い物だ!

暫く乗っていなかったからちょっと心配したけど軽トラックは問題なくて。

無事一番近くにある国道沿いのドラッグストアに到着した。


まあ仕事でいつも軽トラとか軽ワゴン運転しているから慣れたもんだけどね。

……後で燃料入れなくちゃな。


今時の若い子は結構オートマ免許だけど俺一応マニュアルだし。


「あっ、手持ちが……6千円……多分足りないよな。隣のコンビニで下ろすか」


流石にこの近辺までくればお店は並んでいる。

俺は歩いて隣のコンビニに行った。


「あれ、まことじゃん。おはよー」


コンビニに入ろうとしたら2個上の職場の先輩、沙紀さんが俺に声をかけてきた。

田舎にはいないタイプのちょっとおしゃれ系のお姉さんで、美人でノリのいい先輩だけど…俺確かすげー嫌われていたはずなのに?


「おはようございます。沙紀先輩、お昼ですか?」

「うん。今日正樹と遊ぶ約束だったのにさ、ドタキャンされたんだよ。酷くない?」


正樹というのはうちの村の役場の人だ。

数年東京に行っていて、帰ってきたちょっとやんちゃな先輩だ。


俺とは全く馬が合わない人で、消防団とか一緒だけど全然話したことないけどね。


「あー、そーなんですね。じゃあ俺用事あるんで、失礼しますね」


さっさと買い物したいので、当たり障りない事を言って躱そうとしたら、何故か腕をつかまれた。


「っ!?……えっ?どうしたんですか?」


なぜか俺を上から下までじろじろ見る沙紀先輩。

そしてにやりと爬虫類みたいな笑みを浮かべる。


「ひうっ、な、なんでしょうか?」


やべー。

美人だからなおさらこえー。


「ねえまこと。暇でしょ?」

「えっ、いや、ちょっと用事があるんで、今お金下ろそうとしてるんだけど…」

「ねえ、ドライブ行こうよ。車でしょ?」


あーこの人暇で、俺を巻き込もうって魂胆だな。

ふっふ、でも無駄だね。

なんせ俺今日は軽トラックだもんね。


流石に引くでしょ。


「あー、すみません。俺今日軽トラなんすよね。だから後日で……」


そして目を光らせる沙紀先輩。

だから怖いって。


「わかった。じゃあ来週ね。私車出すよ。ショッピングモールにさ、新しいお店出来たんだよね。一緒に行こ―ね。約束したよ。じゃあね」


そしてにこやかに去っていく沙紀先輩。

意味が分からない。


「えっ?なんで?新手の嫌がらせかな……俺嫌われていたはずだけどな……」

『ねえ』

「ひうっ」

『恥ずかしいから声出さないで。ほら、人見ているよ?』


あっ、ほんとだ。

農家のおじさんが俺をガン見している。


そそくさと中に入りドリンクコーナーを見るふりをしてみた。


えっと、なんでしょう?


『今あなた女の子だよ?忘れているでしょ』


……あっ。


『言葉遣い気を付けてよね。まるっきりおっさんみたいだったよ?』


おっさんて。

あーそっか。

だから沙紀先輩……でも変だな。


そんなに接点ないんだけど……


『はあ。あのね、あなた今スッゴク可愛いの』


…はあ。


『女性から見ても魅力的なの』


……確かにすごい美人だよね。

ここ田舎だからニーナさん日本人っぽく無いから余計目立つしな。


『あう♡……だ、だから、ナンパに気をつけなさいよ!』

「はあっ?ナンパ!?」


いきなり声を出した俺に店にいる客が一斉に視線を向けてきた。


ひいっ、……うわー、こわっ!?


『もう、バカ』


ううう、恥ずかしい。

さっさとお金下ろして出よう。


コミュ障ではないけどこんなに注目されるの慣れてないんだよね。


……そうか

そうだよな。


ニーナさんめっちゃ美人だもんな。

気をつけよ。



※※※※※



何とかお金を下ろし、ドラッグストアに来た俺は化粧品コーナーでフリーズしていた。


あの、ニーナさん。


『ん?なあに』


何を買えばいいのか全く分からないのですが……


『んーそうね。とりあえず毎日使う化粧水と乳液かな。ああ、日焼け止め成分の入っているやつね。それから一応リップと…ファンデーションとかも必要かな…ああ、このパレットもね』


俺は言われるまま買い物カゴに商品を入れていく。

こんなに小さい瓶なのに、1個3000円?


うわー凄いな。


『ねえ、向こうのコーナーに行ってくれる?』


あ、はい……えっ、せ、生理用品!?

俺は思わず顔を赤らめてしまう。

すれ違うお兄さんが俺をガン見してくる。


『も、もう、こっちまで恥ずかしいよ?普通にしてよね。普通なんだから……ふう、まあしょうがないか。じゃあ今から言う物買い物カゴに入れてね』


う、うっす。


『最初はこのおり物シートね。羽が長い方が良いかな。それからロングタイプの夜用』


うう、なんかイケナイことしている気がする。


『それからそのタンポンと、一応痛み止めもあった方が良いかな』


はい。了解であります。


『うーん、後は……コットンと、柔らかい箱ティッシュね。高い奴がいいわよ』


俺は機械のように買い物カゴへ投入していく。


『ねえ、体温計とか家にある?』


あー、ないかも。


『じゃあそれも』


うっす。


なんだかんだ買い物カゴに入れて、いよいよお会計。

そのときまた知り合いに声をかけられた。


「あれ、まこと先輩?こんにちは」


俺の2個下の香織ちゃんだ。

同じ職場、うちの金融部門の人気のある娘なんだよね。


うーむ。

この子も確か俺を嫌っていたはずだが……


恐るべし美人効果!


「こ、こんにちは香織ちゃん。買い物?」

「ええ、ちょっと切らしちゃって。……今夜も必要なんですよね♡」


買い物カゴにちょこんと入っているのは……あーソウデスカ。

大和やまとよ、諦めろ。

この子もう誰かの物らしいぞ。


因みに大和って言うのは、俺の後輩で農家の指導っていう仕事をやっている真面目な男だ。

香織ちゃん大好き男なんだよね。


「先輩は……いっぱいですね」

「う、うん。ちょうど色々切れちゃってね。はは、は」


はー、いろいろ気を付けないと。

俺も大和と同じ仕事だから意外と顔広いからなあ。


結局お会計は3万2425円でした。

香織ちゃんがクーポンくれたんだよね。


おかげで3000円くらい安くなったし。

今度ジュースくらい買ってやるか。


よし、次はオシャレな鞄を買うぞ!!


俺は意気揚々と、ここから約20キロ離れている一番近いショッピングモールへと向かうのであった。

途中で我が職場の別部門でもあるガソリンスタンドで燃料も入れたしばっちりだ。


今日の軽トラックは一味違うぜ!!


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